テラーノベル
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その夜。
塔の上には、焚き火のようなあたたかなランプが灯っていた。
白い塔のてっぺんに集まったのは、
シンム、エマ、ノーマン、レイ、ギルダ、ドン、フィル。
久しぶりに“家族だけ”で集まる静かな夜だった。
みんなそれぞれ、大人になっていた。
けれどこうして集まると、不思議と昔に戻れる。
ドン「うっわー、あの頃のシンム兄ちゃん、マジで泣き虫だったよな~」
ギルダ「違うでしょドン、ドンがすぐ泣くからシンムくんが慰めてたの」
レイ「……いや、ドンの分まで泣いてたのはエマだけどな」
エマ「ちょっとレイ! それ言わないの~!!」
シンム「ふふっ……でもねぇ、僕も泣いてたんだよ、みんなが寝たあと、ひとりでこっそり^^」
ノーマン「……知ってたよ、シンム兄さん。君はずっと、優しすぎたから」
シンムは少しだけ目を閉じて、ふうっと息をついた。
シンム「実は……あの時、“死ぬつもり”だったんだよ」
みんなが、ぴたりと静かになる。
シンム「でも……怖かった。僕、怖かったよ。
ひとりになるのも、君たちがいなくなるのも、全部、」
エマ「――でも、シンムお兄ちゃんは生きた」
エマはそっと、シンムの手を握った。
エマ「私たちに、こうやって“会いに来てくれた”。
それが……いちばんうれしいことなんだよ」
ノーマン「君が命を繋いでくれたから、僕たちは未来に進めた」
レイ「……言ってなかったけど、ずっと、心のどこかで思ってた。
“シンムは、きっと生きてる”って」
シンム「僕がね、塔をつくったのは、
君たちの世界みたいにしたかったからなんだよ」
シンム「“ありがとう”って言ってもらえる世界が、
どんなにあたたかいか、君たちが教えてくれたから」
フィル「……シンムお兄ちゃん、今でも“先生”なんだね」
シンム「んー……ちょっとだけね^^」
その夜は、いつまでも終わらなかった。
昔話に笑って、泣いて、抱き合って。
星空の下で、
かつて“希望”と“絶望”を共にした兄妹たちが、
――ひとときの、“ただの家族”に戻っていた。
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