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私、結婚します

38 - 第38話 タワマンと新田夫婦

2025年08月01日

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一通りの片付けと掃除を終えたのは日曜日の夕方だった。お礼に晩ご飯をご馳走するからと三木に言われ、アパートの近くの焼肉屋にみんなで来ていた。


「もう引っ越し業者には依頼してあるんですか?というか、ここから遠いんですか?」


せっかく友達になれたのに、離れてしまうのは寂しいと思って訊いてみた。


「もう手配済みです。すぐそこなので」


「えっ、三木さんのお給料でこの辺に住めるんですか?」


「ちょっと、日下さん、失礼なことを!すみません」


私が代わりに頭を下げた。


「あー、いいんですよ。えっと、日下さんでしたっけ?なんならこの後、引っ越し先を見てみますか?」


「えー、あまり興味ないから、私はいいや」


つくづく失礼なことを言う子だと思う。よく言えば、ハッキリしているということなんだろうけど。


「森下さんには見に来てほしいな、まだ私の学校の友達にも教えてないけど。これからもお父さんと仲良くしてほしいから」


歩美が誘ってくれた。


「もちろん!お邪魔させてもらうね。結城君はどうする?」


「俺も行きたかったけど、友達と約束があるんですよねー、どうしようかな?」


「じゃあ、私だけで行くわ、二人ともお疲れ様、ここで解散ね」


「ちょっと待って、チーフが三木さんと深い仲になるきっかけになりそうなんで、俺も行きます!」


「そんな、じゃあ、私も行きます、チーフと先輩がこれ以上仲良くなったらイヤなので」


結局、みんなで三木親子の新しい家を見に行くことになった。焼肉屋を出て、アパートを通り過ぎて表通りに出る。道路は渡らずに、歩道を道なりに歩いていく。


「ここです」


「ここだよ!」


三木親子が指差したのは、最初に三木を送ってきた時に見た、あのタワーマンションだった。


「え?」


「嘘でしょ?」


「……」


日下にいたっては、声も出ていない。


「行きますか?いつでも入れるので」


三木と歩美は、さっさと玄関を入っていく。


「一緒に入らないと、セキュリティで閉め出されちゃいますから」


慌てて3人もついていく。暗証番号とスマホでロックが解除できるらしい。


「マジですか」


三基あるエレベーターの、15階より上にしか行かないエレベーターに乗る。歩美が28階のボタンを押した。


「ここって、何階建て?」


「30階くらい?」


日下と結城が小声で話していた。


「31階で、最上階は一部屋しかないんだよ。うちはそのちょっと下」


歩美が説明してくれた。

この立地とその階だと、家賃が見当もつかない。

そう言えば訊いたことがなかったことを、三木に訊いてみた。


「三木さんのお仕事って?」


「まだ話していませんでしたね。いわゆる投資家です」


「「「ひやぁ!」」」


なんて騒いでる間に、部屋に到着した。




部屋からの眺めは、とても綺麗だった。

家具はまだほとんどなく、机にパソコンが何台かと、長椅子が一つあるだけだった。


「三木さんて、お金持ちだったんですね?なんかもう、俺は三木さんには勝てない気がしてきた」


結城が言う。


「もともと結婚当初から妻とわずかずつですが、投資をしてました。お互いに欲しいものもなかったし、共働きの間に財産のようなものを作りたくて」


「にしても、すごいですね。才能があったんですね」


「妻の閃きがよく当たったんです。そして、妻の病気が見つかってからは、できるだけ妻のそばにいたくて仕事を辞めてデイトレードをしてました。まぁ、運がよかったんです」


「で、この部屋を?」


「妻の夢でもありましたから。アパートの取り壊しの話が出てきたときに、“このマンションの高い部屋に住みたい”と。そうすれば空に行っても歩美と僕がよく見えそうだからと。結局、一度もここには来ることはありませんでしたが…」


一同、シンと静まり返る。


「あ、いや、まぁね、そんな話は置いといて。引っ越しても遊びにきてくださいね」


みんなであちこちの部屋を見て、窓からの景色も堪能した。

そしてまた、みんなで下へ帰る。

15階までをすっ飛ばすからか28階から1階まで、意外に早く着く。


「静かだね、エレベーター。すごいね」


そんな話をしながらエレベーターホールに降りた。


「あっ!」


「あれっ!」


エレベーターホールで、エレベーターを待っていたのは新田夫妻だった。


「こんばんは…、偶然ですね。こんなところでお会いするなんて」


一応、挨拶をする。


「私の両親がここに住んでいるから、なんだけど、そちらは?」


妻の麻美の実家が、ここだということか。


「私たちはお友達のところへ。お部屋を見せてもらってきたところです」


ふーん、と私たちを品定めするように見てくる麻美。


「あの、じゃ、僕たちは先に戻ってますね」


三木と歩美は出て行った。


「お友達?どんな方かしら?ここは簡単には住めないところよ」


「知ってますよ。お友達の部屋は眺めもよかったです。高い所っていいですね、家賃も階層も!」


日下が、自分たちが乗ってきたエレベーターを振り返った。そう、上層階専用のエレベーターだ。


「えっ、あ…っ!」


麻美は夫の健介と乗るつもりのエレベーターを、振り返る。14階までしか行かないエレベーターが到着を告げて、ドアが開いた。


「あなた、行くわよ!お父様が待ってるから」


「え、うん。じゃ…」


新田夫妻は、急いでエレベーターに乗って上がって行った。


「ね、見ました?新田さんの奥さんの顔。ちょっと優越感!でしたよ、私」


「うん、確かに。でもなぁ…それが俺のせいじゃなくて、三木さんのせいだもんなぁ…。そうだ、俺も株取引しようかな?そしたら三木さんみたいになれるかな?」


「なったらすぐに、私を奥さんにしてくださいね!」


日下がまた両手を胸で組んで、結城を見つめている。


「そんな簡単なことじゃないと思うから、やめときなさい。結城君は無茶しそうだし」


ぴた、と結城が歩みを止めた。私をじっと見る。


「え?なに?どうしたの?」


「初めてだ!初めてチーフが俺のことを心配してくれた…」


「は?」


「今まで何をしても、なんかスルーされてほっとかれたけど。今初めて、やめとけとか、無茶しそうだとか言ってくれた!初めて俺に関心を持ってくれましたね!やった!!」


何をそんなに喜んでいるのか、わからない。単に、常識的なことを言ったまでなんだけど。





















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