第2章
撮影は、和やかな雰囲気の中で始まった。
内容は、YouTuberとアイドルが一緒にバラエティ企画を楽しむという定番もの。けれど、SnowManのメンバーの内心は穏やかじゃなかった。
「え、じゃぱぱくんって、ホントに天然なんだね」
収録の合間に深澤がさりげなく話しかけると、
「えっ!? あ、そうなんですか!? よく言われます〜」
と、じゃぱぱはあたふたと笑って答える。
(可愛すぎるだろ…)
深澤の心の中に謎の鐘が鳴った。
その一方、目黒蓮は静かに距離を詰めていた。
じゃぱぱが飲んでいた水のペットボトルがテーブルから落ちそうになった瞬間、すっと手を伸ばしてキャッチ。
「…落ちそうだったよ」
「うわ、ありがとうございます!すごい反応速度…!」
「反射神経、わりといい方だから」
じゃぱぱが笑うたびに、目黒の目は真っ直ぐに彼を追っていた。
(この人を、誰にも渡したくない)
「ねぇじゃぱぱさんって、年上だけどさ、呼び捨てでもいい?」
「え? 全然いいよ、じゃぱぱで!」
「じゃあ俺のこともラウでいいから」
(距離、詰めすぎやろ!!)
他のメンバーが心の中で叫んでいた。
阿部亮平は控室で、さりげなくじゃぱぱにゲーム理論の話を振る。
「じゃぱぱくんって心理戦うまそうだから、ナンプレとか好きそう」
「えっ、ナンプレって頭いい人がやるやつじゃないですか! 阿部くんすご…!」
(よし、好印象。地頭で攻める)
「じゃぱぱくん、俺とゲーム実況撮ってみる?」
佐久間が誘えば、
「えー! それ絶対楽しいじゃないですか!」
すかさず康二がかぶせてくる。
「俺、編集担当やるわ!じゃぱぱのかっこいいとこ、全部スローで編集したる!」
(もうこれ完全に落としにいってるやん…)
その夜。SnowManの控室で、9人が顔をそろえた。
空気は重く、全員の目が険しい。
「なあ…誰も譲る気ないよな?」
静かに言う岩本照に、全員がうなずく。
「じゃぱぱくんを好きになったのは…しゃーない。でも、グループとしての秩序は保とうや」
そうして生まれたのが、“じゃぱぱアピール三原則”だった。
バレずにアピールすること
他のメンバーを妨害しないこと
先にじゃぱぱに気持ちを悟られたら、その時点で脱落
そして9人の間で、静かに火花が散る。
「絶対、俺がいちばんに振り向かせてやる…」
それぞれの胸に、“本気の恋心”が芽生えていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!