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「あぢぃ~……」
嫌な考えを振り払うようにして無理矢理寝ようとしたのだが、しばらくして俺は暑すぎて寝られなくなり、キッチンに水を飲みに行った。
キッチンで水を飲んでいると、廊下の方が少しだけ騒がしいことに気づく。キッチンから出て、廊下を除くとなにやら大きなものが廊下に寝ている。…ベポか。
「何してんだ?」
「ベポが暑すぎてぶっ倒れてんだよ」
「あ~……もこもこだもんなぁ」
上半分でもつなぎ脱げばいいのに。それだけで大分変わるだろう。
「あち~……何だこの暑さ? 耐えられないよ」
床に寝転がり、舌をだらんと出しながらベポは言った。
「ああ……おれ潜水嫌いだ。狭いとこに何時間も……むさくるしい奴らと一緒なんて」
「「お前が一番むさくるしいわ!」」
「あはは…」
「もうダメ、おれ、こうなったら……道連れだ~!!」
と、ベポがペンギンとシャチをがばりと抱きしめてその熱がこもった毛皮を押し付けるようにもふもふし始めた。もふもふ好きの俺だが、さすがに今回はクソ暑そうなのでふっと逃げて遠慮した。
「頼む! ちょっとだけでいいから外の空気を!」
「わかった! わかったから汗を擦り付けるな!」
「浮上! いったん浮上するぞー!!」
潜水艦は浮上していく。
いの一番に外に出るベポ。俺たちはその後ろを歩いてついていく。
「スネェク!!?」
外からベポのそんな声が聞こえ、俺たちは駆け足で甲板に出ると、そこには髑髏を被った大蛇がいた。ボア・ハンコックのペットのサロメだ。
「なんだ?」
「なぜ蛇が?」
「ああ! しまった…」
ポーラータング号の隣にあったのは海軍の軍艦だった。海軍に後をつけられていたと瞬時に思った3人はわなわなと震えた。
「海軍じゃないな、あそこにいるの。七武海だ」
「え? ……あ、ほ、ほんとだ。王下七武海、海賊女帝ボア・ハンコック」
ハンコックがポーラータング号の甲板に降りてくる。
「安心するのじゃ。海兵たちは全員石にしてやった。で、ルフィの容体はどうなのじゃ? 酷いのか? 治るのであろうな?」
「よく俺たちの浮上してくる場所が分かったな。海軍がまだ追跡してきたのかと思って肝冷やしたよ」
「海底をサロメに尾行させたのじゃ」
「シャ~」
「な~る」
「勝手に話題を逸らすな、獣の分際で」
「…すいません」
「「打たれ弱!!」」
「ルフィの容体を早う申せと言っておるのじゃ」
「ルフィは死んでないぞ。ローは優秀だからな」
「無事なのじゃな」
「現状は一応な。…………でも、精神的ショックは計り知れない。たとえ体が元気でも、精神が死んでちゃ元も子もねぇんだ」
俺の言葉を聞き、ハンコックの顔が青ざめる。後ろの扉が開き、ローが出てくる。
「ジェディの言う通り、オペの範疇では現状、命は繋いでいる。精神的なのもそうだが、そもそもあり得ないほどのダメージを蓄積している。まだ生きられる保証はない」
ハンコックが僅かに視線を下げ、小さく息を吐く。
「それは当然だっキャブル。麦わらボーイは、インペルダウンではすでに立つことすらできない体になってたのよ!」
特徴的な語尾と声が俺たちの上空、つまり海軍の軍艦から聞こえる。見上げると、軍艦の上にはイワンコフとその他ニューカマーたちが。
イワンコフが甲板に降りてきた。ハンコックの時とは違い、船が揺れた。ってか、イワちゃんでけ~……。身長がでかい奴は今までにも何度も会ってた来たけど、イワちゃんは……なんつーの? 比率が違うんだよな。うん。
「よくもまああれだけ暴れまわったもんだっキャブル。それもこれも、全ては兄エースを救出したい一心! ……その兄が、自分を守るために目の前で死ぬなんて。神も仏もありゃしない。精神の1つや2つ崩壊して当然よ」
軍艦の方から、ニューカマーたちのルフィに対する声援が飛ぶ。
「なんという悲劇じゃ。できるものなら、わらわが身代わりになってあげたい……。可哀想なルフィ……」
手で顔を覆い、俺たちに背を向けて肩を震わせるハンコック。そんなハンコックを見ながら、シャチとペンギンはほのかに頬を桃色に染める。馬鹿どもめ。
「ああ、いいな~。海賊女帝にあんなに想ってもらえて…」
「うんうん」
確かにハンコックはすごく美人だが今この雰囲気で言うことではないだろ……。すごく美人だけども。
「ところでヴァナータ、麦わらボーイとは友達なの?」
「いや、助ける義理もねえ。親切が不安なら、何か理屈をつけようか?」
「いいわいいわ。直感が体を動かす時ってあるものよ」
「……俺が頼んだ、みたいなところはある」
「ヴァナータは?」
「ルフィの友人だ。俺はルフィのこと、弟みたいに思ってるから。助けたかったんだ」
「そうなのね」
本当ならば、もっと早く、エースも救いたかったけど……俺にそんな度胸はなかった。
俺たちがそんなことを話していると、船内の方から声が聞こえてくる。
「おい待てって、まだ動いちゃダメだ」
「手術したばかりで無理をするな、安静にしろって言われただろ?」
「傷口が開くぞ! どこに行く気なんだ?!」
下駄の音、荒い呼吸。それがジンベエであることに、俺たちはすぐに気づく。
振り返ると、包帯やガーゼでボロボロのジンベエがこちらに向かってきていた。
「……北の海、トラファルガー・ローじゃな」
ローがコクリと頷く。
「ヴァナータ、そんな体で動いて大丈夫なの?」
「大丈夫なわけないだろ…」
「…ありがとう。ハア……命を救われた」
「寝てろ、死ぬぞ」
「心が落ち着かん。無理じゃ。わしにとって今回失ったものはあまりにもでかすぎる。それ故、ルフィくんの心中はもはや計り知れん。あの場で気絶したことはせめてもの防衛本能じゃろう。命を取り留めても、彼が目覚めた時が、最も心配じゃ」
「……ルフィは、そんなに弱くない。確かに起きてすぐは錯乱すると思う。けど、ルフィはここで諦めて死を選ぶような男じゃない」
俺はそう言って、拳を強く握る。
「……狐面」
「はい」
「電伝虫はあるか?」
「ありますよ」
「九蛇の海賊船を呼べばこの潜水艦ごとカームベルトを渡れる。ルフィの生存が政府にバレたは必ず追手がかかる。わらわたちが女ヶ島で匿おう」
「ん?」
「なんと…!」
「わらわがまだ七武海であるなら安全に療養できる」
ハンコックは力強く言った。
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