この作品はいかがでしたか?
1
この作品はいかがでしたか?
1
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『銅.甘、銅.琥珀、君たちの無罪が証明された。こちらへ。』1人の警備員が、牢屋の扉を開けた。
無罪?
何があったのかはわからないけど、出られるようだ。
僕と琥珀さんは、牢屋を出る。
その後は、謝罪を受けて、
外に出た。
とはいえ、もう、薄暗くなってきていた。
長い間、眠っていたみたいだな。
『2人とも、無事出られたみたいだね。』
建物の影から、レインが姿を見せた。
『レインが、何かしたのか?』
あそこを出られたのは、レインが何かしたからだろうか。
『まぁ、少しだけね。とは言っても、僕の顔は剣士の数人に見られているから、リンネにお願いしたんだけどね。』
レインの隣に、リンネがいた。
『なぜ助けたんだ?』
『それは、仲間として助けるのは当たり前だと思うけど?』
仲間…
『仲間になった覚えはない。』
そう言った。
しかし、レインは笑った。
『君が剣士を辞めたあの時点で、僕たちの仲間になったも同然だと思うけどなぁ。』
『それは、茜の居場所を教えてもらうためだ。』
『給料はあげただろう?つまり、そういうことさ。』
!
給料。
あのお金は!
『そんなこと、聞いてないぞ!』
『安心して、君に人殺しはさせないから。今まで通り、誰かを守るために戦えばいい。』
『何が、目的だ、』
『君は、剣士たちから気に入られていたみたいだね。君の無罪を証明するのはかなり簡単だったよ。』
『誤魔化すな、答えろ。』
しかし、レインは答えなかった。
『悪いけど、それは言えないな。でも、いつか分かる時が来るさ。』
やはり、怪しい。
信じられない。
『はい、給料。』
『僕は、何もしてないけど?』
『いいのさ。君が、甘が仲間になっただけでそれなりの価値があるってこと。だから遠慮はいらないよ。』
価値…
何を言っているのかがわからない。
『いらないし、仲間になるつもりはないよ。』
『そういうわけにはいかないなぁ。命をかけてでも、君が必要なんだよ。』
『僕が、必要?』
『そう、君の力が、』
僕の力…
やっぱり、何もわからない。
『僕は、人を助けたいだけなのさ。それは、君も同じだろう?』
人を助けたい、だと?
『人をコロしておいて、嘘をつかないで。』
『前に、言っただろう?人を救うためには、犠牲も必要なんだよ、ってね。まぁ、人に限ったことではないけどね。』
犠牲、
『人を守りたいんだったら、コロしはしないはずだ。』
『それはね、僕の言う守りたい人っていうのは、善人のことだよ。善人だけ。』
善人だけ。
『悪人は助けるつもりはない。逆に、邪魔にしかならないんだ。だからコロす。』
『それは、人を守るとは違う気がする。あまりにも冷たいんじゃないか?』
『でも、悪人がいたら善人が苦しみシぬ。だから、仕方ないからコロす。そうしなければ、本当の平和なんてこないと思うよ?』
そうなのかもしれない。
でも、
『誰だって、人を傷つけることはあると思うし、間違えてしまうことはあると思う。元々、正しさを知らない人だっていると思うし、辛くてそうしてしまった人だっている。きっと色々あって、悪いことをしてしまったんだと思う。』
きっと、本当に悪い人もいるんだとは思う。
救われるべきではない人もいるだろう。
『僕だって、人を傷つけたことはあります。間違えたこともあります。人を…コロそうとしたことも、実際にコロしたこともあります。』
自分でも、許せない人はいる。
自分が許せないとも思う。
『でも本当は、助けて欲しかった。そんな時もあったんです。だから、そんな人たちを正すことも大切だと思います。だから、見捨てるつもりはありません。』
牢屋の中で、嫌になっていた。
人を守りたい、助けたいと思うことも、優しくしようと思うことも、
全てがどうでも良くなっていた。
『それこそ、新しい人も苦しんで、傷つける人が増えていくだけ。それに、そんな人々を正していくなんて、かなり効率が悪い。そうは思わないかい?いつまでも、終わらないよ。』
でも、
それでも、
『甘ちゃんは優しい子なんだから、悲しそうな顔はしないで欲しいな。』
『優しい子にはいいこと、きっと起こるよ。』
『茜ちゃんはきっと、甘ちゃんといられた時は幸せだったはずだよ。甘ちゃんがいてくれたから、幸せになれたはずだよ。』
『琥珀も、幸せだったよ?ずっと、甘ちゃんといる時は幸せだった。』
『これからも、一緒にいて欲しいな。』
牢屋の中で、琥珀さんは言ってくれた。
だから、
『君がそう思うのならそうすれば良い。でも、僕は違う。僕は、苦しみを知っているからこそ、あの人たちみたいに誰かを傷つけたくはない。損だと思われても、大事な人ができた。それだけでいい。後悔はない。』
これが、今の僕の答えだ。
『そうか、あの時とは変わらないか。でも、あの時より意思が強いみたいだね。君は、本当にお人好しみたい。実に、君らしい答えだ。』
それが、正しいかなんてわからない。
もしかしたら、レインの方が正しいかもしれない。
でも、否定されようとも僕の答えを信じたい。
実際、正しい答えはあるのだろうか。
ないかもしれない。
なら、
僕が正しい答えになろう。
できなくても、やろうという気持ちが本気であればいい。
できなくても、夢をみることくらいはしたい。
周りがなんと言おうとも、自分の気持ちを簡単に変えてはいけない。
自分が信じた方へいこう。
『残念だよ、君がその道を進むなんてね。でもいい、いつか分かる時が来るだろうから。それまで待っているよ。』
レインはそう言って、去って行った。
『銅様、剣士に戻られるのですか?』
リンネが訊いてきた。
『もう戻りはしないと思う。罪を背負ってでも、このナイフで自分なりにやってみるしかないな。』
まだ剣士に戻ってもいいのかがわからない。
戻る勇気もないしな。
『そうですか、申し訳ございませんでした。』
『え、』
リンネが、頭を下げた。
『レイン様の言ったことは怪しく聞こえたと思いますが、レイン様なりに悩んで考え、導き出された答えなんです。ですか、正しい答えは私にもわかりません。』
レインはレインなりに考えていたんだな。
レインの言ったことは、確かに正しいのかもしれないと思った。
だけど、やっぱり…
嫌だった。
『レインはもう行ったけど、いいのか?』
『私は、銅様に仕えるはずでした。ですか、残念ながらお断りされたもので…』
『え…』
仕える…
『その後はレイン様から、銅様を仲間に引き入れるよう誘導しろと指示があったのでここにいます。』
『あ、あぁ…』
そこまでするのか…
『私の名前は、星名.凛音[ホシナ.リンネ]と申します。精一杯頑張りますので、よろしくお願いいたします。』
『銅.甘です。よろしくお願い……え?』
頑張ります?
『星名.凛音です。』
『よ、よろしくって…』
『これから仕えさせていただきますので…』
『え?』
『見習いではありますが、レイン様の指示なので…』
『いや、そういうのは大丈夫だから…』
だから、様って言ってたのか…
『そういうわけにはいかないのです…』
『僕は、レインたちの仲間になるつもりはない。だから、戻ってくれ。』
凛音も、レインの仲間だ。
戦うことにも慣れているみたいだったし、何をしてくるかはわからない。
『今は銅様に仕えています。銅様の指示なら、聞かざるを得ません…』
『なら、レインのところに戻っていいよ。』
『承知いたしました…』
凛音…星名は、レインが行った方へ向けて走って行った。
悪いことをしてしまったかもしれない。
でも僕は、自分の道を歩くと決めたから。
僕は、剣士署を見た。
もう、戻るつもりはない。
これで、最後…
そこに、
『・・・』
奏さんがいた。
奏さんは、こちらを見ていた。
『ええと、何かな…』
『別に。』
それだけが返ってきた。
そして、去ろうとしている。
だが、止まった。
そして、こちらを見た。
『はやくーーーし、ね。』
何かが聞こえた。
『え?』
早く、シね?
こわ!
でも、長さ的に違う気がする。
なんて言ったんだろう。
わからない。
『さみしぃ…』
『え、今…』
でも、奏さんは最後まで聞かず、行ってしまった…
寂しい?
たしかに、寂しそうな顔をしていた。
やっぱり、瑠璃さん…なのかな。
だんだん、そんな気がしてきた。
でも、隠している。
なぜだ?
まだ、記憶が足りない。
早く、思い出さないと。