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家に帰る。
家には、2人だけだ。
でも、
テーブルに、3人分の皿やコップを持って行っていた。
いつもの癖だ。
『・・・』
本当に、いないんだな…
『っ…』
涙が、また溢れた。
思い出が多い分、悲しみも多い。
会わなければ、こんなに悲しむことはなかった。
でも、あんなに幸せにもなれなかっただろう。
2人がいたからこそ、あんなに幸せになれたんだ。
1人でも、欠けてはいけなかった。
皿の上には、焼き魚があった。
この魚にも、家族がいたのだろうか。
友達はいたのだろうか。
『ごめんね、これしかなかったの…』
『大丈夫。魚、好きだから…』
見るのも、食べるのも、好き。
でも、魚にも命はある。
豚も牛も鶏も、生き物だから命があるんだ。
『ごめんね、お魚さん…』
琥珀さんも、涙を流していた。
『茜ちゃん、料理…教えてあげられなくて……ごめん…なさい………』
茜さんの身体は、どこにあるのだろう。
茜さんの魂は、どこにあるのだろう。
『ううっ…』
手が震えている。
忘れられない。
茜さんの苦しむ声も、ナイフを刺した感覚も…
離れない…
食事どころではない。
涙が止まらない。
しばらく会話がないまま、ベッドで横になる。
眠れない。
眠るのが、怖い。
牢屋で、眠ったとはいえ、
忘れてしまう気がするから。
琥珀さんまでいなくなってしまう気がしたから。
琥珀さんは、僕の胸で泣いていた。
『僕が…』
その事実は、何があろうとも変わらない。
『甘ちゃんは、悪くない…茜ちゃんのために、茜ちゃんの願いのために、したことでしょう?』
そうだけど…
もっと、何かできたんじゃないだろうか。
助けられたんじゃないだろうか。
『琥珀さん。もし僕が間違った方に進んでも、一緒にいてくれる?』
『何を、するつもりなの?』
『もし、だよ。まだわからないけど、選択肢を選んではいられないこともあると思うから。』
琥珀さんは、どんな時でも一緒にいてくれるだろうか。
『ずっと一緒にはいたいと思ってるよ?でも、琥珀が間違えだと思ったら止める。甘ちゃんには、間違った選択肢を選んで欲しくないし、茜ちゃんもきっとそう願っているはずだから。だから、復讐なんてしないで、』
復讐、
僕は、復讐をしようとしてたんだろうか。
わからない。
わからないことが多すぎる…
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