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僕が病室で眠っているときにそんなことが――
今後の展開が見えてきて、僕は戦慄した。
「でもお父さん、夏梅君にさっき恋人をやめたいと言われました」
「なっ!」
一瞬にして優しい両親の顔が今まで見たことないような般若顔になった。
「夏梅! 交際してくれないなら自殺すると言ったくせにどういうこと?」
「映山紅さんと別れて誰も監視してくれなくなるなら、学校はもう辞めてもらう。場合によっては期限を定めず病院に入院してもらうことになる」
「そんなのやだよ! いくら親だからってそんな横暴は許されないよ!」
「おれたちだって好きでそうしたいわけじゃない。でも死なれるよりはずっとマシだ。なあ母さん」
「うん。映山紅さんがそばにいてくれるならと私たちは夏梅をすぐに退院させたの。あなたが映山紅さんまで拒絶するというなら、病院に逆戻りさせるしかないの」
脅しではない。二人とも本気でそう言っている。僕が彼女と別れたら僕は退学して、場合によっては無期限で入院しなければいけないらしい。中からは決して出られない精神科閉鎖病棟に!
「れ、霊山寺さんと別れたいと言ったのは間違いでした……」
白旗を揚げた僕に彼女は女神のような微笑を浮かべてみせた。
「まだ少し精神的に不安定なところがありますが、私は夏梅君といっしょにいるのが好きなんです。これからも夏梅君がうっとうしく思うくらいつきまとってやるつもりです」
「お願いします……」
両親が涙を流して喜んでいる。教室にも家にも僕の味方はいない。本当に死にたくなってきたが、もちろんそんなことは口にしなかった――