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黒霧「死柄木弔!何を!!」
死柄木「あ?なんだ黒霧」
黒霧「今何時だと思っているのですか…!!?」
死柄木「寝起きに大声で叫ぶなよ…」
黒霧「朝の…7時ですよ…太陽とは真反対の生活リズムのあなたが!!」
死柄木「おい、黒霧…当たり前だろう、今日は…
雄英体育祭だぞ!!」
遡ること数日前
死柄木「雄英体育祭は例年通り実施だとぉ?」
緑谷「うん、僕もさすがに中止になると思ってたんだけど少し延期して、警備も例年の5倍にして実施するって」
黒霧「どういうことでしょうか、こんな時に雄英体育祭など非難がより一層強まるだけでは…」
緑谷「だからこそなんじゃないかな?雄英の体制の磐石さをアピールするつもりなんだよ」
死柄木「そんなことよりさぁ出久どうするんだ?」
緑谷「どうするって?」
死柄木「だーかーら、1位目指すんだろ?金の卵たちの鼻へし折ってくるんだろ?」
緑谷「いやだなぁ弔くん、そんな事しないよ。目立ちたくないもんね」
AFO「それは勿体ないね」
突然モニターの電源がつき、AFOが現れた。
緑谷「うわ!お父さん!」
死柄木「先生…!先生もそう思うだろ??」
AFO「僕も弔と同じ意見だよ、せっかく僕の娘はこんなにも強いのにそれを誇示するまたとないチャンスじゃないか!」
死柄木「そうだぞ出久」
強力な見方を得た死柄木はここぞとばかりに出久に詰め寄る。それに若干眉をひそめる出久。
緑谷「もう!弔くんもお父さんも!」
黒霧とドクターは心の中で思った。
黒霧『緑谷出久の活躍してる姿をみたいだけですね、この2人は』
ドクター『娘の活躍している姿をみたいだけじゃな、死柄木弔も最早出久のことを妹のように可愛がっているからのう…』
緑谷「んー分かったよ!でも!どうせやるなら完全なる1位取ってくるから!それでもいいの!?」
死柄木&AFOの説得に渋々出久は折れた
死柄木「ああ、楽しみにしてる」
ニヤリと死柄木は不敵な笑みをうかべる。
今から憎きヒーロー候補生が出久にボコボコにされるのを楽しみにしているようだ。
AFO「そうと決まれば今から全テレビ局に根回しして出久を多く映すようにしてくるよ、あと翌日の新聞は全部買い占めよう」
緑谷「ええ!?お父さんそこまでしなくても…」
出久の説得も聞かずAFOはモニターの電源を切ってどこかへ行ってしまった。死柄木も明日から起きる時間を変えようとか言って部屋に戻ってしまった。
緑谷「どうしてそうなるのぉ…」
雄英体育祭当日
麗日「あー緊張するよー!」
志村「ウン、ソウダネ」
麗日「どうしたの華ちゃん!ロボットみたいになってるよ!華ちゃんも緊張してるの!?」
志村「うっうん、まあね!」
父親が裏から手を回して体育祭を見守っているなんて口が裂けても言えないと思う出久であった。
飯田「お互いベストを尽くそう!」
麗日「飯田くんは相変わらずだねぇ」
轟「おい、志村」
志村「ん?何?」
すると突然轟が出久に喋りかけてきた。USJの時に一緒に居ただけで彼とは全く交流はなかったはず…
轟「客観的に見て俺とお前の実力は今のところほぼ互角だと思ってる。」
志村「はぁ…」
話が見えず曖昧な返事を返す
轟「お前オールマイトに目つけられてるよな、そこを詮索する気はないが…お前には勝つぞ」
轟の宣言に今までザワついていた控え室が静まり返りみんなが轟君と僕の方を振り返った。
上鳴「おいおい、なんだよクラスのトップが宣戦布告か!?」
………なるほどね
僕がオールマイトに目をつけられているのは本当だ。そうなるように僕が仕向けた。轟君の父親は万年No.2のエンデヴァー。事前に僕が調べた限り轟君は並々ならぬ恨みをエンデヴァーに抱いているようだし、僕を超えることは彼にとって意味のあることなのだろう。……だけど
志村「轟君の言いたいことは分かった。けど僕も負けられないんだ…僕も全力で獲りに行く!」
だってお父さんが全チャンネルの画面を同時表示で視聴してるうえに、今日の夕刊に明日の朝刊、夕方のニュース番組、夜の番組、明日の番組もスポーツ雑誌も全部予約したっていってるんだもん!!!実用と鑑賞用と保存用と予備用と布教用と弔くんの分まで取っておくなんて聞いてないよ!!というか布教って誰にするのさ!!
我ながら動機が不純だ…と思う出久であった。
最早ここまでくると本気で挑んでいるA組の面々に罪悪感すら抱くレベルである。
そうこうしているうちに入場の時間がやって来た。
プレゼントマイク「ハロォォォ!!エブリバリー!!今日は雄英体育祭だぜー!!盛り上がっていけぇぇ!」
ーーーーーーーーーー
死柄木「始まったぞ!黒霧もっと音量でかくしろ!」
黒霧「十分大きいですよ…」
ーーーーーーーーーー
プレゼントマイク「さあ!選手入場だ!!お前らが気になっているのはこれだろ!!?1年A組ーーーー!!」
観客の歓声が大きくなる。
麗日「うわぁ…いっぱい人がいるな…」
飯田「うむ!多くの人の前でパフォーマンスできるかどうかもヒーローとしての素質の一環だからな!」
プレゼントマイク「続いてB組、C組…」
全クラスが入場し終わって開会式が始まる
ミッドナイト「これから開会式を始めるわ!」
峰田「18禁ヒーローミッドナイトだ!」
上鳴「1年の開会式に居ていいのかよ…」
ミッドナイト「いい!それじゃあまずは選手宣誓!入試1位の志村華!」
麗日「そっか!華ちゃんが入試1位だったね!」
生徒「ヒーロー科のね…((ボソ」
出久が壇上にあがる
その様子をテレビの前で見守る黒霧と死柄木
死柄木「トップで入学ってそーいえばそんなこと言ってたな出久。」
黒霧「何を話すんでしょう」
志村「えー…宣誓!私が一番になります!!!!」
一同「!?!?!?!?」
えーーーーーーーー!?っという声が会場であがる。もちろん生徒からも…
飯田「志村くん!どうしたんだ!そのような発言をするとは!!」
麗日「華ちゃんすごーい…」
爆豪「…」
轟「…」
死柄木「はははは!!言うな!出久!いいぞ!そのままヒーロー候補生共を蹴散らせ!!」
黒霧「…誰に似たのやら…」
AFO「フフフ、それでこそ僕の娘だ」
そうして大ブーイング(一部からは歓声)が巻き起こった開会式は幕を閉じた。
続いて第1種目が始まる。
ミッドナイト「第1種目はこれよ!障害物競走!さあみんな!位置につきまくりなさい!!」
死柄木「あーおい!なんだこのテレビ!全然出久を映さねぇじゃねぇか!出久が居るのは左側だ!右側視点のカメラは要らねぇんだよ!!」
イラついた死柄木がテレビに掴みかかる
テレビにヒビが入り始めている。
黒霧「ああ…やめてください!死柄木弔!テレビを壊そうとしないで!!」
AFO「フフフ甘いよ弔…僕の所へワープしておいで」
突如モニターの電源が付き先生が現れた。
死柄木「あ?なんだって…おい、黒霧!ワープ!」
半分崩壊しかかったテレビを離して死柄木は黒霧を呼んだ。
黒霧「はっはい!!」
黒霧は新しいテレビの代金を計算する間もなく死柄木と共にAFOの所へワープした。
死柄木「なんだこれ」
いつもは何やらよく分からない数値が書いてあるモニターが全て雄英体育祭の中継映像になっていた。しかもAFOの真正面にある一番デカイモニターには出久が映し出されていた。
死柄木「このアングル!さっきから欲しかったやつだ!あのテレビ局、全く映さねぇんだよ!」
AFO「ふふふ…弔。これは今テレビで放映されている映像じゃないよ…テレビ局というのは会場の至る所にカメラを設置してどこのカメラの映像を流すのかを一部の人間が決めて切り替えながら放送しているんだ…」
ドクター「やれやれ、ワシはこの分野の専門家じゃないから準備が大変じゃったわい…出久ならこういうのは得意なんじゃろうけど協力してくれなさそうじゃしな」
AFO「ここに表示されている画面はあらゆるテレビ局が会場内のあらゆる場所に設置したカメラをハッキングして得たリアルタイム映像さ!ここを押せばたとえ今テレビで使われていないアングルのカメラでも好きに表示することができる!」
そういうとAFOは手元のボタンを押す。
すると部屋中のモニター画面が切り替わり様々なアングルの出久が映し出された。
死柄木「すっげぇ!先生!感謝するぜ!」
いくらなんでもやりすぎじゃないかと思った黒霧だったが言うだけ無駄なので心の内に止めておくことにした。
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第1種目結果:1位 志村華(2位と大差をつけてゴール)
麗日「凄いね!華ちゃん!私ももっと頑張らんと!」
志村「いや、それほどでもないよ。」
最初に轟君に氷結を展開されたのは予想外だったけど、あの大量のゼロポイントヴィランも綱渡りゾーンも地雷ゾーンも空さえ飛べれば簡単に攻略できる。筋力増強の個性を使えば常人離れした滞空時間でジャンプすることは余裕だし、後はオールマイトのニューハンプシャースマッシュの要領で推進力を生み出せば、空中高速移動技の完成だ。
【設定のおさらい!】
(緑谷出久の個性は個性模倣。緑谷自身が分析しその仕組みを理解した個性の個性因子を体の中に模倣できる。まさに個性分析の得意な彼女にしか扱えない個性である。しかし志村華として雄英に潜入する時は筋力増強という個性を模倣し、その個性を志村華の個性として偽造しているのだ!)
死柄木「よっしゃぁ!出久!そのままヒーロー共をぶっ潰せ!!」
AFO「雄英生も大したことないじゃないか」
ドクター「中々やるのう」
黒霧「少し心配していましたが、全くの杞憂でしたね」
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続く第2種目騎馬戦
第1種目1位の志村は1000万ポイントを手にする。
騎馬は麗日、常闇、発目と組む。
結果:1000万ポイントを1度も奪われることなく守りきり、1位通過。
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お昼休み
出久はスタジアムの端にいた。
志村「…それで話って何かな?轟くん」
そう轟に話があると呼ばれたからだ。
轟「…さっきの騎馬戦、お前の迫力に気圧され俺は左を使いそうになった…前から思ってたんだがお前オールマイトの隠し子かなんかか?」
志村「は?」
おっと行けない…素が出てしまった。
誰がオールマイトの子供だって?あんな個性でしか人を判断できないこの個性社会のガンと、この僕が?冗談では無い。それに僕の父親はあんな軽薄男ではなくAFOっていう素晴らしいヴィランなんだetc…
と言ってしまいたいところだが
志村「嫌だなぁ、そんな訳ないじゃないか、個性が似てるから気にかけてもらってるだけだよ、アハハ…」
我慢だ…我慢だ緑谷出久!!と心の中で必死に言い聞かせる。
轟「まぁ、いい…お前、俺の親父知っているよな万年No.2ヒーローのエンデヴァーだ。」
…とここから轟くんの長い長い身の上話が続いた。既に轟くんの身辺は調査済みの僕からすれば眠くなってしまうところだったがざっくりまとめると憎い父親を否定するために左は使わず右の力だけで優勝すると…うんうん………なるほど………は?ふざけるなよ?
なぁにが親父を完全否定するだ。まごうことなしにその力は君自身の力だというのに。無個性だと馬鹿にされ続けた僕からすれば自らそのような行動に走る君が愚かにみえて仕方がない。こいつは親父を否定するという目先の目標に気を取られていて何も見えてはいない。己の父親を超えるために父親から受け継いだその力を利用する程の覚悟すらも持っていないやつにかけてやる言葉も同情心もないな。
一刻も早くここを立ち去りたくて出久は口を開いた。
志村「話はそれで終わりかな…?君の覚悟も決意も僕に測りしれるものでは無いからね。でも僕だって背負ってる思いがあるから。君に勝つよ」
そういって轟の前から離れて歩き始めた
轟「…ああ」
スタジアムに戻る道中、出久は轟の発言のことを考えていた。これは捉え方によってはこれは好都合なのではないか…と。彼はこれからヴィラン連合の脅威に成りうる存在だった。しかしこのままいけば僕たちが手を下さなくても勝手に落ちぶれてくれるだろう。
そのまま父親への憎しみに囚われていればいい。父親諸共、僕たちが地獄の底へ突き落とすその時まで…
麗日「あ!華ちゃんいた!」
八百万「探ましたのよ!」
志村「みんな集まってどうしたの??というかその格好は何…??」
芦戸「なんかね!女子は応援合戦をするからチアに着替えなきゃいけないんだって!」
志村「それ誰から?」
耳郎「相澤先生からの言伝だって上鳴と峰田が」
それ絶対上鳴君と峰田君のついた嘘じゃんと出久は思った。
八百万「なので急遽衣装を創造し、みんな着替えましたのよ」
もうみんなの準備は整ってしまっているようなので今更これは嘘に違いないとは指摘はしずらい…となればとるべき行動は1つ。逃げる、これ一択だ。
志村「うーんでも僕、決勝トーナメントに向けて精神統一したいしあんまりやりたくないかな…」
蛙水「ケロ…でも相澤先生に怒られるわ…」
志村「えー…」
葉隠「でもさ!志村さんってお人形さんみたいにとーっても可愛い顔してるし絶対似合うと思うんだよなー!!」
芦戸「そうそう!前から思ってたけど志村の赤い目ってルビーみたいでとっても綺麗だよね!」
麗日「赤い髪の毛も炎みたいにゆらゆら光ってて素敵だよね!絶対チア服と合うよ!」
志村「えっえー…」
まっまずい…このままでは…
八百万「さ!時間がありませんわ!これ、志村さんの分の服ですわ!」
耳郎「更衣室はそこ曲がったところだから」
蛙水「待ってるわね」
ひえぇ…断れない流れ…どっどうしよう…お父さんも弔くんもテレビで見てるのに…
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昼休み明け
マイク「さあ!レクリエーションの時間だぜ!っておい!どーしたぁぁ!!!A組ぃぃ!!」
思った通りだ…これは上鳴君と峰田君による嘘で僕たち以外チア服を来てる雄英生なんて誰も居ない…完全に浮いている。
峰田「へへ…策略通りだぜ…」
上鳴「特に志村とかさ!めっちゃ可愛くね!?いつもコスチュームと制服の姿しか見てないから気づかなかったけどスタイルいいんだな!!」
八百万「騙しましたわね!!」
蛙水「…上鳴ちゃん…峰田ちゃん…」
一方その頃
死柄木「おい…先生…」
AFO「何も言うな…弔。ただこの光景を目に焼き付けておきなさい」
死柄木「ああ、分かってるよ」
レクリエーション後ついに決勝トーナメントが始まる
1回戦 志村VS心操
既に心操の個性を把握している緑谷によって完封勝利
2回戦 志村VS轟
広範囲氷結をしかけてきた轟だったが、筋力増強の個性で生み出した風圧で相殺。ノーリスクでパンチをくりだせる出久に対して氷結を出せば出すほど体の動きが鈍くなる轟、耐久戦に持ち込み出久の勝利。
準決勝 志村VS飯田
フィールドのコンクリを砕き飯田のマフラーに詰めることでエンストを起こさせ個性を封じる。出久の勝利。
そして決勝 志村VS爆豪
爆豪「……」
今のかっちゃんは僕にとって全く脅威では無い…
ならはその矜恃を出来るだけへし折ってから勝とうとしよう。
マイク「さぁー!!ついに決勝戦!!これで!雄英1年のトップが決まる!!爆豪VS志村だぁあああああ!!」
ミッドナイト「試合開始!」
爆豪「オラァ!」
開始早々爆破で距離を詰めてきたかっちゃん。
かっちゃんならここできっと…右手の大振り!
爆豪「!?」
マイク「おおっと!志村!爆豪の先制攻撃をかわした!」
爆豪「にゃろ…」
それでもひるまず次々と攻撃を加えていくかっちゃんだったけど全て読んでかわす。この程度、いつも脳無とトレーニングしている僕からすればまるで止まっているように見える。
爆豪「テメェ…避けてるばかりじゃ俺に勝てねぇぞ!」
志村「そうだね…じゃあここらで…」
ガン!!
マイク「おおっと!?志村の生々しいパンチを爆豪、モロにくらったぁあああ!!」
出久のパンチをくらった爆豪は地面に叩きつけられた。
爆豪「ゲボッ…」
だがこの程度で怯むかっちゃんじゃないことは分かってる。そろそろ追い詰められてあの技を繰り出してくるはず。
爆豪「オラ!」
ドカン!!
かっちゃんが普段より数段大きな火力で攻撃を仕掛けてきた。
志村「!」
これは僕への攻撃というよりはただの目くらまし!
ということは…来る!
ボボボボボ…
断続的な爆破で勢いと回転を生み出し、今持てる限りの最大火力で攻撃を仕掛ける、かっちゃんの最終奥義!
爆豪「ハウザァァ!インパクト!!」
…ありがとう、かっちゃん。その技を繰り出してくれて
試したかったんだ、君の最大火力を僕がどの程度の力で握りつぶすことができるのか……!!!
バアアアアアアアアアアン!!
マイク「爆豪!!麗日戦でみせた特大火力に勢いと回転をプラス!まさに人間手榴弾だ!!これにはさすがの志村も…おおおっと!?」
爆豪「!?コイツ!」
拳の一振りで俺のハウザーインパクトを相殺しやがった!!!
志村「50パーセントくらいってところかな…」
マイク「なんと!志村無傷!!爆破の瞬間に拳を振るうことで衝撃を相殺した!……やば、バケモンかよ」
爆豪「50パーセント…??」
志村「君の攻撃を相殺するのに必要だった力だよ!」
爆豪「なっ…!テメェ…本気でかかってこいよ!舐めてんのか!!」
志村「まさか!そんなことしたら君が病院送りになっちゃうよ…それより爆豪君…胴ががら空きだよ?」
爆豪「!」
ハウザーインパクトをきめた直後、体勢を立て直す前のかっちゃんの隙を見逃すわけがなかった。
ドカ!!
爆豪「ぐは!」
かっちゃんの空いた胴に拳を叩き込みそのまま場外へ殴り飛ばす。
緑谷「スマッシュ!」
爆豪「ぐ!」
大きな音をたててかっちゃんが場外の床に叩きつけられた。
ミッドナイトが素早く審判を下す。
ミッドナイト「爆豪君場外!!志村さんの勝利!」
うわーーーーーー!!と観客の歓声があがる。
マイク「勝負あり!!雄英1年のトップは志村華に決定だああ!!」
麗日「わああ!凄い!有言実行だ!」
轟「…」
爆豪「クソ!!あの野郎!舐めた真似しやがって!」
死柄木「よし!すげぇ出久!!1位だ!」
AFO「フフフ…」
黒霧「やりましたね!緑谷出久!」
こうして雄英体育祭は志村華もとい緑谷出久の完全勝利で幕を閉じた。選手宣誓通りの結果を叩き出した志村華に多くの賞賛が集まったことは言うまでもない。
緑谷出久自身も父と死柄木への宣言を達成したことになる。しかし、
緑谷「ここまでするとは聞いてないよーー!!」
AFO「遅かったじゃないか出久、今日はお祝いだ。君の好きな食べ物を用意させたよ、体育祭の出久の勇姿のプレイバックビデオ(編集・監督AFO)を見ながら食べよう」
死柄木「みろ!ほら!ネットでもお前に関するコメントに溢れてるぞ!」
AFO「明日になったら新聞や雑誌が届くからね、今からスクラップ本を準備しておいたよ」
黒霧「料理が冷めますよ…早く食べましょう…死柄木弔の壊したテレビを買い直してきたんですから私お腹ペコペコなんです。」
出久「……」
もうこの人たちに何を言っても無駄なことは経験則からよーーく分かっている。
出久「いただきます…」
今日の試合ビデオ(緑谷しか映っていない)を見ながら、その都度死柄木とAFOの感想コメントを聞き、食べる晩御飯は全く味がしなかったという。
出久「ま、いいか…1年の実力の程をしれたしかっちゃんを完膚なきまでに叩きのめすことができたし!」
雄英体育祭が終われば職場体験が待っている。どの事務所に行くか検討しなければならない。体育祭で優勝したからといってもやることはまだまだ山積みなのだ。
翌日、死柄木の部屋からチア服の出久の写真を発見してしまった出久と、死柄木の間に第1次ヴィラン連合大戦が勃発するのはまた別の話である。
翌日学校では体育祭に基づく指名と職場体験の説明がされた。もちろん志村華の指名数は学年トップだ。まさに事務所は選びたい放題である。
出久「エンデヴァー事務所からも指名きてる…轟君と僕で指名してきたのか…あとはベストジーニストにウォッシュ、リューキュー、ギャングオルカまで指名がきてる。さすが雄英体育祭の影響力…」
麗日「華ちゃん!一緒に帰ろう!」
志村「あ、お茶子ちゃん、それに他のみんなも」
蛙水「今日はこの後みんなで体育祭についてお互いに講評をし合おうっていう話になったの。」
志村「そうなの??ごめん今日はこの後用事があるんだ」
麗日「そっかぁでも今日決まったし仕方ないよね、途中まで一緒に帰ろう!」
芦戸「そういえば志村さー!今日決めたヒーロー名のラビットってどこから来てるの??」
志村「ああ…あれはええっと…兎が好きなんだよね!どこへでもぴょんぴょん飛んでいくところとか!」
芦戸「ふーん」
本当は考えるのが面倒くさくてヴィラン名黒兎から適当に取ったんだけどね…
志村「じゃあ僕こっちだから!」
麗日「じゃーね!華ちゃん!また明日!」
そう今日はヴィラン連合としての用事があるのだ。
今巷を騒がしているヴィラン、ステインに会う。
出久「おまたせ、弔くん」
いつものパーカーに黒の仮面を付けてアジトの扉を開ける。
死柄木「おせぇぞ黒兎、もう来てる」
ステイン「……お前らがヴィラン連合か」
出久「初めまして、ステイン。僕は黒兎、以後お見知りおきを」
ヒーロー殺しステイン。禍々しい見た目から有無を言わせないオーラを醸し出している。なるほど、鋭い目つきだ。凄まじい執念を感じる。何が彼をここまで駆り立てるのか…
ステイン「用件はなんだ…」
死柄木「まぁ、早い話俺たちと一緒にこの社会をぶっ潰さないかってところだ」
ステイン「…何ゆえ…何故お前達はこの社会を壊そうとする…何の目的があってのことだ。」
死柄木「オールマイトにはとりあえず消えてもらう、後はそうだなムカつくヒーロー共と雄英のガキ共と…」
ステイン「なんだと…?」
ステインの放つオーラが変わった。
ステイン「オールマイトこそ真のヒーロー…この贋物が蔓延るこの社会で唯一の本物…俺の信念に反する…!!」
死柄木「あ?お前ヒーローを消したいってんじゃなかったのか?」
ステイン「当たらずも遠からずだ。俺が望むのは贋物のヒーローの粛清。ヒーローとは見返りを求めてはならない。ヒーローとは己の自己犠牲の上で与えられる称号であるべきなのだ。」
死柄木「なるほどな…どうする、黒兎?」
出久「ふふ、なるほど、ヒーローとは見返りを求めてはならない、自己犠牲の上に成り立つ、その思想に僕は賛同するよ」
そう、ヒーローとは本来そうあるべきだ。僕も幼い頃ヒーローとは皆そうであると勘違いしていた。今思い出されるのはお母さんと僕を見捨てたヒーロー、そして個性でしか人を判断出来ないオールマイトという最低のヒーロー…!
出久「でもオールマイトが真のヒーローか…それだけは絶対に君と分かち合える気がしないな。アイツはヒーローなどではない…アイツこそこの個性社会で最悪の害虫だ。」
そういうと僕はステインを睨みつけた。
ステイン「……!!黒兎と言ったな…仮面の下からでもお前の目からは強い信念を感じる…」
ステインは完全に僕に気圧されたようだ。
死柄木「それは俺も黒兎に同意だな。何でこの社会で普通の奴らは笑っていられると思う?いつ誰が個性をふりかざすかも分からないのにだ…全てオールマイトだ…!アイツが救えなかった人間など誰も居なかったようにヘラヘラ笑ってるからなんだよな…!!」
弔くんがいつもにも増して饒舌だ。
そう、僕たちはオールマイトも含めた全てのヒーロー、そしてヒーローが支えるこの社会を、個性によって成り立つこの社会を憎む。そしてこの社会をぶっ潰すことでいかに正義とやらが脆弱なのかを暴く。それが我らヴィラン連合の信念だ。
ステイン「…なるほど…お前たちにも信念があるようだな」
ステインとは良き協力関係になれるかと思っていたがどうやらそうでも無いらしい。
ステイン「だが、今の現状に不満を持っているという点では俺たちは一致しているようだ…」
出久「確かに…そう言えるかもね」
ステイン「オールマイトのことに関しては全く相容れないが………まぁいいだろう、ある程度なら協力し合うことも悪くは無い…お前達が良ければだがな」
死柄木「…」
ステイン「用があればまた会いに来い、ヒーローの粛清なら手伝わないことも無い」
出久「この後はどうするつもりで?」
ステイン「あの場所にはまだやるべきことが残っている…」
出久「保須ですね」
ステイン「ああ…」
黒霧さんがステインを元いた場所に戻した後
死柄木「おい、出久お前どう思った?」
出久「無理だね、オールマイトを信奉している時点で協力は絶望的」
思い出しただけで吐き気がするレベルの思想だった。
死柄木「ははっ、俺と同じだな。お前はオールマイトに関しては特に厳しいよな」
出久「当たり前だよ、アイツは僕の抱いていた希望を全て打ち砕いた存在といっても過言では無いからね」
死柄木「なぁ出久…俺たち今同じこと考えてないか?」
出久「そうだね、ステインとは協力出来ないけど」
死柄木「アイツには利用価値がある」
互いにを顔を見合わせて笑みを浮かべる。やはりAFOの元で共に育ったもの同士考えることは一緒のようだ。
黒霧「死柄木弔、緑谷出久、どういうことでしょうか?」
出久「強い信念っていうのは人を惹きつけるんだよ、黒霧さん」
死柄木「良く言えばカリスマだな」
出久「鮮烈な出来事と共にその思想が広がれば信奉者はその思想を元に1つに団結する」
黒霧「鮮烈な出来事…ですか」
死柄木「人気アーティストの突然死や強烈な思想犯によるテロとか…だな。ステインの思想は水面下で燻る小さな悪意を目覚めさせるのには丁度いい。最もらしいからな。」
出久「でもそれがステイン中心では意味が無い。ステインの思想が広まるかつ、その思想は僕らヴィラン連合を中心として渦巻いて欲しいんだ。」
黒霧「つまり…?」
死柄木「ステインの華々しい逮捕劇を演出する。それによってステインの思想に感化された奴はまとめて俺たちヴィラン連合が頂く。」
出久「彼にはその身を持ってヴィラン連合の広告塔になってもらう」
黒霧「そんなことを……」
出久「もう方法は大体決まりました。彼はまだ保須にいるようですから…」
それらの様子をAFOは画面越しに見ていた。
AFO「いいよ…死柄木弔、出久。利用できるものは利用していけばいい。全ては君らのためにあるからね…」
結局僕は適当なチャートナンバーの事務所に職場体験することにした。
職場体験をそつなくこなす中、僕は情報屋としての情報網を駆使してステインがまた次も保須に出現するかもしれないという噂をヒーローの間に流した。
そんな事しなくてもエンデヴァーは保須にまたヒーロー殺しが出るかもしれないと睨んでいたようだ。そこだけはさすがNo.2ヒーロー。
ドクターに下位から中位レベルの脳無を数体貰った。前回の脳無はハイエンド脳無だったから回収したけど今回のものはヒーロー共に回収されても問題ない。パワーも搭載している個性もハイエンドに劣るが並のヒーローを手こずらせるには十分である。
数日後、ステインに動きがあったと黒霧さんから連絡が来た。作戦実行だ。
ステインの犯行に被せるように保須に脳無を放つ。
町は瞬く間にパニックになりヒーロー、警察が駆けつける。ステインに取ってみればこれはピンチであると同時に駆け付けたヒーロー達を一斉に粛清するチャンスでもある。
街をめちゃくちゃにする脳無と駆け付けたヒーローを狩るステイン、まさに世間の興味をひく話題!
ステインの個性、凝血は大した個性では無い。遠距離攻撃個性を持ったヒーロー複数人で囲んでしまえば制圧は容易だろう。だからこそ路地裏にやって来たヒーローを1人ずつ殺すなんて言う非効率的な戦法を取っているに違いない。
その日のうちに案の定ステインはヒーローによって逮捕された!
ステインと脳無による保須での大事件は大体的にニュースで取り上げられた。
雄英襲撃事件で世間を騒がせたヴィラン連合の従える怪人脳無とステインが同時に現れたことによってステインとヴィラン連合が協力関係にあったのではないかという推測も広がっている。
ステインの思想が明らかになり、それは英雄回帰と名付けられた。動画投稿サイトでは英雄回帰にまつわる動画のアップと削除が連日繰り広げられている。
結果、ステインの思想を踏み台にして僕らヴィラン連合は勢力拡大を果たしたのだった。
義爛「いやー、あんたらのおかげでこっちも商売繁盛だよ。」
出久「いえいえこちらこそ、情報屋の方の仕事もどんどん舞い込んできますよ」
死柄木「そんなことよりも義爛お前、うちに入りたいっていうやつの仲介は?」
義爛「もちろん、明日にでも連れてくるよ。仲介料は頂くよ」
義爛が帰った後僕はバーのカウンターに置いてあった新聞を手に取った。ステインに関する記事が書かれている面を開く。
今回の鮮烈な逮捕劇は僕たちの作戦通りに進んだ。けど全てが思い通りという訳ではなかった。
『今回の事件でヒーローが多数負傷、プロヒーローネイティブが死亡した。また職場体験に訪れていたヒーロー科の生徒1名が重症を負った。』
このヒーロー科の生徒は飯田くんの事だ。
実際飯田くんは職場体験後も入院を理由に学校を休んでいる。確かに飯田くんが保須のマイナーヒーローに職場体験していたのは知っていたけどまさか今回の事件に巻き込まれるとはね…
新聞を閉じて僕は次に起こすべき行動について思いを馳せた。期末試験が近づいているがそれは問題ないだろう。
出久「林間合宿……」
そう次に行動をおこすなら林間合宿だろう。その為に仲間になりうる人材を集めた。林間合宿はそのテストも兼ねている。
死柄木「出久、林間合宿の件だ。作戦を練ろう」
出久「ああ、待ってその前に話しておきたいことがある。」
死柄木「なんだ?何か問題でも起きたか?」
出久「ううん、違うよ。いいニュースだよ!
雄英に入学して2ヶ月。ついに模倣に成功したんだ、これで次に投入する脳無の性能は格段に向上する……!イレイザーヘッドの個性、抹消をね!」
To Be Continued……