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『今から家来れる?』
ブーという振動音が聞こえてベッドに放置していたスマホに目をやると、緑のアイコンのアプリからそう通知が入っていた。
何度も目にした名前と、メッセージ内容。
あまりに淡白すぎる文からでも、何を伝えたいかがわかってしまうほどに呼び出しされ慣れてしまった俺は、スタンプを返信しながらお風呂場へ向かっていた。
「…、ふっ…ぁっ、」
…訂正。
やっぱり、浴場に響いてしまう自分のくぐもった声色と官能的な水音にはいつまで経っても慣れることが出来ない。
こうして、元貴に呼び出されて一人で後ろを解してから家に向かうというルーティンはいつから始まったのだろう。そもそも、いわゆる『体の関係』というのを持ち始めたのも正直いつだったか覚えていない。
そう、それが、俺と元貴の関係。
割り切ってて、冷めてて、性欲を吐き出すための都合のいい相手。……なんて、そう思うようにして傷つかないよう自分を守ってるだけなんだろうな、俺は。
もし奇跡的に元貴と恋人関係になれて、甘い雰囲の中で体を重ねられたら…なんて妄想をして自慰することもあった。
けれど、現実なんてそう上手くいくもんじゃなくて、実際のところお互い酒に呑まれて流れでヤッてしまいました、なんてエロ漫画家も飽き飽きのストーリー展開である。
お互い男とヤるのは初めてだったし、手探り手探りな前戯とスムーズに行かない挿入でムードもへったくれもなかった。
そんなわけで、もちろん初行為はそんなに気持ちよかったわけでも幸せな感覚になったわけでもなく、痛いし苦しいしでずっと泣いてた気がする。
けど、元貴が俺の痴態を見て勃起してくれてたりだとか、元貴が俺を抱いているっていう事実に興奮してしまっている自分もいて。後々、自己嫌悪に苛まれた。
たった一夜過ごしてしまっただけ。若気の至り。
そう思うことでやり過ごそうと思い、あの日の出来事は水に流そうと自分なりに数ヶ月ほど時間をかけて消化しきった頃。
また、元貴に抱かれた。
1回目より何倍も優しく甘く丁寧に愛撫され、比べ物にならないほどの快感を叩き込まれた俺の体は、いとも簡単に堕ちた。気持ちいい、気持ちいいってばかの一つ覚えのようにひたすら鳴いてた気がする。今思い出しても顔から火が出そうなほどはずかしい。
なんで。なんで、 まえシたときより何倍も上手くなってんだよ。まさか他の男を抱いてみたりした?
なんて考えて泣きたくなったのとは反対に、顔をぐしゃぐしゃに崩して、高く媚びるような女みたいな嬌声をあげる俺に『かわいい』『すきだよ』なんてこっちの気も知らずに囁いてくる元貴。
ほんとずるい。
「ぁっ、あ…!は、あ!」
ついあのときのことを思い出してしまうと、より体全体の熱が上がっていき、素直に快楽を拾っていく。
気持ちいい。のに、まだなにか足りない。
自分より太い指で、意地悪に攻め立ててくる元貴の指にすっかりハマってしまったのか。我ながらもう立派な変態だな。
2回目以降散々分からせられた自分の前立腺をとんとんと押してやるとすぐに射精感が高まり、ちゅぽん、と指を後ろから抜くとその拍子でびゅるびゅると精液が飛び出た。
すっかり後ろで快感を拾うようになってしまった事実にちょっと情けなくなる。
「もういっかっ…」
体をもう一度シャワーで流し、元貴の家に向かう準備を進めた。