テラーノベル
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「……まさか、こんな形で着ることになるなんて」
私は姿見の鏡に映る自分を見て、ため息と熱い吐息を同時に漏らした。
身に纏っているのは、純白のドレス。
……けれど、それは普通のウェディングドレスではない。
私の趣味を全開にした、背中が大きく開き
スカートの丈が不揃いな、ファンタジー調の「戦う花嫁」のコスプレ衣装だ。
今日は、私たちの結婚式……ではなく、二人だけの「記念撮影会」。
「いいじゃないですか。世界で一番、怜さんらしい姿ですよ」
背後から声をかけられ、私は肩を震わせた。
タキシードを完璧に着こなした真壁くんが、眩しいほどに愛おしげな瞳で私を見つめている。
「……会社の人たちには、絶対に見せられないわね」
「ふっ、これは俺だけの特権ですから。会社では相変わらず『鉄面の神代マネージャー』でいてください。家では、俺の可愛い奥さんでいてくれればそれでいいんで」
彼は私の腰を引き寄せ、耳元で甘く囁いた。
あの日、コスプレがバレて絶望していた自分に教えてあげたい。
あなたの抱えていた「秘密」は、あなたを破滅させる刃ではなく
最高に愛してくれるパートナーへと導く道標だったのだと。
「……ねえ、湊くん」
「なんですか、怜さん」
「一年経っても……契約が終わっても、私を離さないでよ」
私が少し不安げに上目遣いで言うと、彼は満足げに口角を上げた。
「手放すわけないでしょ。契約は破棄しましたけど、俺たちの『生涯独占契約』は更新されたばかりですから」
真壁くんは私の指に光る、本物の結婚指輪にそっと唇を寄せた。
そして、彼はカメラのシャッターを切る代わりに、私を深く、長い抱擁で包み込んだ。
翌朝
私たちはいつも通り、少し時間をずらしてマンションを出る。
会社に着けば、私はまた「氷の女王」として、彼は「生意気な部下」として、背筋を伸ばして歩き出すだろう。
けれど、誰にも見えないスーツの下には、彼から贈られた情熱的な愛の証が刻まれている。
秘密を共有し、弱さを晒し、それでもなお愛し合う。
そんな歪で、けれど最高に幸せな私たちの物語は、ここからまた新しく始まっていくのだ。
「……おはよう、真壁くん。今日の進捗はどう?」
「絶好調ですよ、マネージャー。……今夜も、期待しててくださいね」
すれ違いざま、彼が私だけに分かるようにウインクをした。
私の頬が、ほんの少しだけ熱くなる。
鉄面の女上司の仮面が、今日も心地よく剥がれ落ちそうになっていた。
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#コスプレ
#ドS