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36号は話を続ける。
「月曜火曜は地獄の底に居るような気分。水曜日になって、あと半分だと自分を奮い立たせ、金曜日の午後の授業が無事に終わった瞬間、収容所から解放された囚人の気分になる。この地獄の1週間を4セット行うと月が変わり、12セットで季節が巡る。そんなところでしょうか?」
「図星です」
「GWや夏休み等の長期休暇を、後何週間、後何日と指折り数え、無事に休みを迎えられるように天に祈っている。
来年度のクラス替えで絶対にアイツらと同じクラスにならないように毎日お祈りしてる。
イジメを苦にジ○ツした同年代の子供のニュースを見ると心が痛む。
できるだけ苦しまないジ○ツの方法をネットで調べたが実行する勇気がない。
……だって、この世に未練が山程あるから」
「……」
「週刊連載のマンガの続きが見たい。深夜アニメの続きが見たい。長期休載していた作品が連載再開した。月末から始まるソシャゲのイベントで推しキャラが実装される。来月、限定生産のプラモデルの予約販売が始まる。−−あと、もう少し我慢すれば。あと、ほんの少し我慢すれば、続きが見れる。あれを手に入れられる……
大人たちにしてみれば鼻先で笑い飛ばすような、取るに足らない「理由」ですが、それが貴方に最後の一歩を踏み留めさせていた「理由」だったのですね」
「……そうです」
36号は根岸の肩に手を置いた。
「そんな地獄の日々も今日までです。明日からは大多数の人たちと同じ、普通の日々が始まりますよ。あ、ちょっと待って下さいね」
36号は潰したコーヒー缶を足下に置くと、根岸の両頬に手の平を当てた。ヒンヤリとした冷たい感触がした。
「治癒魔術を施しておきましょう。明日の朝、痣になったり腫れたりしないように」
「あっ、あの……」根岸は思い切って36号に切り出した。
「どうして、ここまで親切にしてくれるんですか?僕は−−」
「−−さっき、苦しまぎれに七王様にお祈りしただけで、悪魔に対する信仰心なんて、丸で無いのに。ですか?」
36号が先回りして根岸の質問を受け止める。
「あの時、あの瞬間の貴方の祈りは確かに本物でした。貴方の祈りは七王のうちの一柱のお眼鏡に見事かない、貴方を救うために私が派遣された、という訳です」
36号が言葉を切り、根岸を真正面から見つめる。
「今は無料お試し期間だと思って下さい。我々が提供する圧倒的な奇跡と加護を体験した上で、我々と共に進むかどうかをお決めになれば宜しい」