テラーノベル
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宴もたけなわ、わいわいと盛り上がってきたところで、私は一度お手洗いに席を立った。
ついでにスマホを確認すると、壱月からメッセージが届いていたことに気づいた。
【お迎え任務完了。適当に夕飯食って、風呂入って寝かせます】
無事壱月のミッションが終了していたことに安堵しつつ、ここからテンション上がって寝ないこと請け合いな花斗を預けてしまって申し訳ないと、少しだけ罪悪感が胸をよぎる。
【ありがとう、よろしくお願いします】
そう返信して席に戻ると、壮馬が私に手招きをした。
「花斗くん、大丈夫そう?」
気にしてくれているのだろう。小声で、私にそう聞いてくる。
「うん。さっきメッセージきてた」
「そう。よかったね」
こそこそと話しながら、壮馬は安堵の笑みを浮かべる。
その『よかったね』に込められた意味に気付いて、「ありがとう」と返す。
「どういたしまして」
壮馬はそう言って、にこっと微笑んでくれた。
「ちょっと、元恋人同士、なんの話?」
別の同期が後ろから会話に入ってこようとする。
それで、みんなが笑いに包まれる。久しぶりの感覚に、楽しい気持ちになる。
けれど――。
「パパー!」
突然響いた子どもの声に、その場にいた全員がはっと笑いを止めた。
「パパ、みーっけ!」
遠くの席に座っていた同僚男性の足に飛び付いたのは、花斗と同じくらいの女の子だった。
父親が彼だというてことは、もしかして……。
ぞわぞわと、嫌な気持ちがせり上がってくる。そこに突然、コツコツとヒールの音が響いた。
「皆さん、久しぶり」
現れた女性に、皆の顔がはっと見開かれた。
やっぱり……。
堂々と姿勢で笑みを浮かべる彼女は、壮馬の元上司。そして、現在育休中の、壮馬の元カノだ。
ちらりと壮馬に視線を向けると、彼は困り顔で微笑んでいた。けれど、膝の上に置かれた手は震えている。
「あら、大木本さん」
彼女はわざとらしく微笑んで、こちらへ真っ直ぐやって来る。
「お子さんは一緒じゃないの? 残念、大木本さんが来るって聞いたから、顔見せに来たんだけど」
私は慌てて笑顔を貼り付けた。
「息子は知り合いに見てもらっています。それで今日、やっと参加できた感じなので……」
「残念。大木本さんのお子さん、うちと同い年でしょう? だから、仲良くなれるかと思ったのよ」
ニヤリと意味深な笑みを浮かべる彼女に、嫌悪感が募る。それと同時に、なんだか少し負けたような気分になった。
それは、この人が、女だったから。
ちゃんと、〝女性〟だったからだ。
彼女は、ちらりと壮馬を一瞥し「久しぶりね」とだけ言って、娘と旦那の方へと行ってしまった。
「壮馬……」
小声で彼の名を呼ぶと、「平気、平気」とひきつった笑顔が返ってくる。
私はいてもたってもいられなくなって、席を立った。
「そろそろ帰るね、子どもが待ってるから。壮馬、駅まで送ってよ」
そう言うと、壮馬は小声で「サンキュ」と申し訳無さそうな笑みを向けてきた。
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コメント
1件
うわ、ここで元カノ登場か…。壮馬の震える手とか、主人公が「ちゃんと〝女性〟だったから」って思うところ、ぐっときた。タイトル回収の仕方も巧いな。母親としての立場と、女としての自分のあり方を突きつけられる感じ、続きがすごく気になる。