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政治資金パーティーは、政治資金を集めるイベントだ。
参加者に〈パーティー券〉を売り、売上から経費を引いた金額が〈政治資金〉になる。
信也の〈パーティー券〉は1枚2万円だから、参加者1000人で二千万円の売上だ。
大物議員になると、参加者が3000人を超える会合もある。
経費節約のため『立食形式』が多いが、信也は『着席形式』を選んだ。
今回は注目されている。思い切って奮発した。
それに、このホテルは結婚式で利用したから融通が利く。
我儘も無理も通せた。
といっても、莫大な結婚式費用は「妻の実家」が出したのだが。
(今日のパーティーは次期選挙のために重要。ミスなく成功させる)
意気込んで壇上に上がったが、目の前に『元妻』が座っていた。
元妻は、まっすぐな視線で信也を見ている。
(何をしに来た? 会いたくないのに)
信也は紗姫が「苦手」だった。
初めて会ったときから『格の違い』を感じた。
この人と結婚したら「組織力(地盤)」「知名度(看板)」「資金力(鞄)」が手に入る。
だが一生「妻に頭が上がらない」と思った。
議員として成功しても「妻のお陰」と言われるだろう。
国会議員になって東京に行くと、信也は主役になれた。
『衆議院議員 伊崎信也』は尊敬されて、周囲がチヤホヤしてくれる。
地元に帰ると、主役は紗姫だ。人は紗姫の周りに集まる。
信也は地元に帰らなくなった。
4ヶ月前。
紗姫の実家『錦藤グループ』が後援会を退会した。
実家の援助が無くなった紗姫と、夫婦でいる意味はない。
信也は「紗姫と離婚したい」と思った。
頭の上がらない妻は、いらないと思った。
だが、地元で絶大な人気がある紗姫と離婚するのは難しい。
議員の妻としても、非の打ち所がない。
信也は機会を待った。
機会はすぐに来た。
[国費の不正受給]に気付いた私設秘書が、交通事故で亡くなった。
「そうだ! 紗姫が秘書と不倫していたことにすればいい!!」
証拠探しを口実に、秘書のパソコンを押収できる。
一石二鳥だ。
計画は、信也の思い通りに進んだ。
信也の人気は落ちず、紗姫は悪者にされた。
今日はその仕上げだ! 絶対に失敗できない!!
意気込んで壇上に上がったが、目の前に『元妻』が座っている。