#進む影
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 コツ…コツ…
足音を鳴らして進む影。数10メートルには俺が気になってるあの人。ふわふわの茶髪に少し緩めの服。付けてるピアスや眼鏡さえ愛おしい。
 「今日もいつものルートで帰っちゃってる…後ろには気をつけないと俺みたいなのがいるからね…」
 そう呟いても相手には届かない。いや、届かなくてもいい。彼には赤いバラがお似合いだ…と思い今日は1日中尾けた。
近くの空き家に身を潜めた。
真実の愛とはなにか
俺は長年その答えを導き出せてない。
身体を重ねあってこそ愛なのか
常に一緒に居てくれるのが愛なのか
 考えるのをやめて薄暗い中青白く光るスマホを見た。どうやって彼に近づこうかと。
そういや彼はここから2駅ぐらい離れたところでカフェ店員として働いていたなと思い出した。予め予備としてた服で今度尋ねてみようか…。
 
 
 
 
 
 午前8時。空き家をでて彼を追いかけるべく探す。何気にこの時間がお気に入りだ。近くの建物の様子や人の混雑具合、特徴が掴めるからだ。
 店の近くまで行った俺はこの建物が見えるショップに行く。人気のない階段についた。スマホを開きカフェのHPを開く。なにかヒントになりそうだったからだ。特にヒントはなく、でも彼は週3で入ってる。これはいい鍵だ。
店があいて数十分。怪しまれないため時間をズラす。
 カランカラン…
 深澤)いらっしゃいませ。1名様でよろしいでしょうか?
 宮舘)はい。
 
 深澤)では、空いてるお席へどうぞ。
 宮舘)ありがとうございます。
 俺は空いてるカウンター席へ座った。入口からは遠い席。いい雰囲気のお店だ。それに加えて彼は行きとは違う雰囲気だ。流石店員さんだね、
 深澤)ご注文お決まりでしょうか?
 彼は軽く屈んで話しかけてきた。彼よりは低い背だがお客目線で話してくれる。なんて親切な…
 宮舘)ホットミルクとこのマカロン1つ…
 深澤)かしこまりました。
 軽く一礼をし、ホットミルクをつぐ。
 深澤)お待たせしました。ホットミルクとマカロンです。
 宮舘)ありがとうございます。
 深澤)ごゆっくりどうぞ…
 くっ、っと、ホットミルクを1口。ほのかな甘みのあるホットミルクは彼の優しさ、そのものに感じた。すると彼が俺に
 深澤)もしかして、初めましての方ですよね、?
 宮舘)…そうですね、
 深澤)僕、深澤辰哉です。ここの店員なんですがよろしくお願いします。
 宮舘)深澤さん、よろしくお願いします。
 なんと俺を認知しようとしてくれた。こんな人初めてだった。
俺はそこから週3で行った。言えばLINEを繋ぎたかった。
 そして数日後…
 深澤)もしかして…宮舘さん、?
 俺の存在に気づいたんだ。尾けてはいたがたまたま彼が振り返った。ここで逃げたら怪しまれる。俺は素直に言った。
 宮舘)よくわかりましたね…深澤さん
 深澤)目元が似ていたので…、どこか出かけるんですか?
 宮舘)いえ、散歩です。
 ドンッ!
 深澤)いって…すみません
 通行人とぶつかりバッグの中身が出てしまった。
 宮舘)手伝います
 深澤)すみませんね…
 彼のバッグを拾う時にスマホも出た。さっと拾って右手に隠し持ってた盗聴器をイヤホンの差し口にさっと入れ、なおす。
 深澤)ありがとうございます、
 宮舘)いえ、気をつけてください… 
 そう呟いたが彼には届かなかった。
 
 







