テラーノベル
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最近、暗夢の様子がおかしい。学校ではいつも通り過ごしているのだが、基地のなかではずっと部屋に閉じ籠もってる。泣き声も聞こえる。 五日目が経った。流石に埒が明かないので、部屋のドアを開ける。
「どうしたの?最近、元気ないよ。なんで泣いてるの?」
「あさひちゃんと朱城くんが、付き合い始めた。」
僕は落胆した。彼氏ができたことは知っていたが、だからってそんな泣くとは思わなかった。ただ、慰めないわけにはいかないので、なんとか言葉を捻り出した。
「暗夢、それは体育祭マジックってやつだよ。」
「え、何それ?」
「ほら先生が言ってたじゃん。体育祭で異性の人が錯覚ってかっこよく見えるってやつ。そんな脆いカップル、いつかは別れるから。」
「そんなの、待てないよ。」
暗夢は再び泣き出した。このままじゃ妖怪戦争も勝てないし、どうしよう…。
すると、エリート天使の人から電話が来た。
「白夜様ですか?急ですが今から天国の会議場に来れます?」
「様付けしなくて良いですって。議題は?」
「えー、【体育祭マジックによる不適切恋愛撲滅に向けて】です。」
すると暗夢が目を光らせた。
「えっと暗夢を連れてくことってできますか?」
「え、まあ良いですけど。」
天国の会議場に着いた。最近は僕は自分が神様だということを忘れていた。まあお飾りだし、僕がいなくても「エリート天使」の方たちで充分だと思うのだが、一応臨時会議には参加必須とのことだった。
「白夜様と暗夢様ですね。到着されたようですので、天地臨時会議を施行致します。」
「えっと、今日のお題でおっしゃっていた体育祭マジック撲滅って、そんな重要案件なんですか?」
僕が辿々しく尋ねると、一人の天使が眼鏡に触れながら答えた。
「はい。近年そもそも、日本国における男女の過度な恋愛による倫理観の乱れが起きています。その対策の為我々はまず体育祭マジック撲滅に向けてこのような方針で活動を行いたいと考えています。白夜様、暗夢様、何かご意見は御座いますでしょうか?」
天使は、僕と暗夢に分厚い議案書を渡してきた。正直僕は読むのも面倒くさいと思ったが、とりあえず全部目を通した。
最後のページまで読んだのでOKの判子を押そうとした時、暗夢が手を挙げた。
「何ですかこのすっからかんな文書は?こんなんで本当に問題が解決すると思ってるんですか?」
暗夢は淡々と話し出した。天使の間には緊張が走る。絶対皆そんな真剣になる必要はないけど、まあ一応最恐妖怪の一喝だもんね。
「ただ方針は素晴らしいです。お陰で最高の悪夢を思いつきました…私が手本を見せます。」
天使は息をのんだ。僕は溜め息を吐いた。
「皆さん、明日正午に久慈駅前に集まって下さい。遅れた人は全員私の胃袋行きです。」
そう言って暗夢は退出した。
「あ…ごめんなさい皆様、暗夢も体育祭マジックの被害者なんで…。僕も退出しますね。失礼しました。」
次の日の正午。
「では私から説明します。あそこのベンチに男女が座ってますが、あれ体育祭マジックです。あの二人の愛情は本物か、夢を使って確かめます。そこにある透明薬を飲み、私のあとについてきてください。」
そして、透明薬を飲んだ僕たちは、同時に二人の肩を叩いた。
夢の中には巨大なシーソーがあった。中央には朱城くんがいて、片方にはあさひちゃん、もう片方には一億円が置かれていた。天井は針山で、片方しか選択できない仕組みになっていた。僕たちは別室から二人の動向を見守る。暗夢が、声の高さを変えてアナウンスをした。
「それでは朱城武志さん。制限時間は三十秒。お好きな方を取ってくださーい!」
「朱城くーん。こっちを選ぶよね?」
「えっ、と…」
「朱城さーん、あと十五秒ですよー。」
朱城くんは悩んでいる。いやまあ愛情が実在するなら普通悩む事は無いはずなのだが。
「五、四、三…。」
「俺は、こっちだー!」
朱城くんが選んだのは、一億円だった。その瞬間あさひちゃんの顔は針山の餌食となっていた。血の色が薄い。涙も一緒に流れたのだろう。
次の瞬間、現実世界に戻った。
「あれ私たち寝てたのか…。なんか変な夢だったんだけど。」
「あ、俺も俺も。確か一億円と君で一億円を選ん…あ。」
「え?私もその夢見てたんだけど。ちょっとどういうこと?お金のほうが大事なの?」
「え、いやその…夢の話じゃん。」
「最低。もう私たち別れよ。」
そういうとあさひちゃんは立ち上がり、駅を後にした。朱城くんの目には、血の混じらぬ純粋な涙が浮かんでいた。
一方暗夢は、天使に大量の錠剤を与えた。
「じゃあ天使の皆さん、この夢がデータ化された薬です。支配性は弱めになっていて、カップルの本音を引き出せる様になってるので、体育祭マジック疑惑のカップルにプレゼントして下さい。」
「暗夢様、ありがとうございます。白夜さまもご協力ありがとうございました。」
「いえいえー。じゃ白夜くん、今日は久々に冷凍じゃない魂のお肉、食べに行こう!」
不本意な形だが、暗夢は機嫌が良くなっていた。僕もお腹が空いた。
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咲乃ルイ
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