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爆破テロ事件から一週間、私達は合衆国の異星人対策室本部ビルで皆さんと交流しながら過ごした。もちろん今回は忘れない内に秘密基地へ銀河一美少女ティリスちゃん号を降ろして交易品の受け渡しを済ませた。これはばっちゃんとアリアに任せたんだけど、現地で巨大化して手伝うカレンを目撃したばっちゃんに改めて説教されたのはご愛敬だ。 次の目的地はブリテンに決まったからか、メリルさんは居なかった。どうやら先にブリテン入りして現地当局と打ち合わせをしているみたいだ。一応私の護衛と言う肩書きがあるし、強化されたメリルさんなら地球人には負けないとアリアが太鼓判を押してくれた。それはそれで心配になるけどね。
この一週間、合衆国上層部は大騒ぎだったみたいで国内の混乱を抑えながら各国への説明や調整に奔走する羽目になったんだとか。心なしかハリソンさんの生え際が後退しているような気がしたけど、武士の情けとして眼を逸らすことにした。
で、ある程度状況が落ち着いた段階で私達は合衆国が手配した専用機に乗り込んでブリテンへ向かうことになった。同行者は最初ジャッキーさんの予定だったんだけど、ああ見えて優秀なジャッキーさんを手離すのは辛いみたいで代わりに朝霧さんが選ばれた。日本の外交官なんだけど大丈夫なのかな?
「難しいことは私達に任せて、ティナさん達はブリテンをゆっくりと満喫してください」
お世話になります。
「フィーレ、明日出発するから準備しといてよ」
「えー?」
この一週間を一番満喫したのは間違いなくフィーレだ。時間が許す限りドクターさん達と積極的に交流して地球の技術を吸い込んでいる。
フィーレ曰く技術関係は基本的にはアードの方が遥かに進んでいるけど、一部の技術ではアードより地球の方が優れているみたいで興味津々だ。また地球の食べ物に魅了されていたよ。片手間で食べられるサンドイッチが特にお気に入りで、色んな具材の組み合わせを楽しんでいる。
フェルは言わずもがな。一週間フィーレのお世話をしつつ私の側で過ごした。私もフェルとの触れ合い時間(意味深)が増えて嬉しかった。最近はフィーレの相手をしていることが多かったからなぁ。
ばっちゃんはたまに厳しい表情を浮かべることがあった。然り気無く何かあったのかと聞いてみたけど。
「悩みの多いお年頃なの☆」
「青春(千歳)」
「笑うな☆」
こんな感じではぐらかされる。何かあったのは間違いないけど、教えてくれない。なんだかモヤモヤするなぁ。
でもまあ、本当に必要なことなら教えてくれるだろうし待つとしよう。
私達はそのまま厳重な警備……装甲車や戦車までいるんだけど……に護られてワシントン国際空港で専用機に乗り込んだ。これ、映画とかニュースで見た大統領専用機だよね? 大袈裟とは言わない。あんな事件が起きた直後だから警戒するのは当たり前だし、合衆国にも面子がある。それくらいは私もわかるし、今は好意に甘えよう。フィーレも大はしゃぎしてるしね。
ティリスちゃんだよ☆今私達は合衆国が用意した専用機に乗り込んで新天地を目指して飛んでいるんだ☆
重力制御装置も無くて空を飛ぶ機械を作って利用しているんだから、地球人はチャレンジャーだね☆
まあ、いざとなれば私達は飛べるしこのくらいの質量なら私の浮遊魔法でもなんとかなるかな☆フェルちゃんも居るから完璧だね☆
本当は地球観光を楽しみたいんだけど、アオムシの問題もあるから警戒してる。でもそれ以上に気掛かりなのは、本星で起きたミドリムシの事件だ。パトラウスが詳細を送ってくれたけど、遂にアイツらやりやがった。
どうやら宇宙ステーションに隔離していたフェルちゃんを直接狙いに来たみたいだけど、その愚行をティドルちゃんが身体を張って阻止した。ティドルちゃんは大怪我を負って、実行犯四人のうち三人は自害。一人をティドルちゃんが捕縛、いや保護した。
首謀者のマンガンの事は良く知っている。簡単に言えば頭のイカれたミドリムシだ。コイツを捕まえればバカな奴等を一網打尽に出来たのに……残念だ。
そして何より腹が立つのは、フィオレちゃんを巻き込んだことだ。わざわざ若いあの娘を選んだのは間違いなくティナちゃんへの牽制だ。
友人でもあるフィオレちゃんを前にすればティナちゃんは間違いなく動揺するだろうからね。
大方、ティナちゃんやフィーレちゃんはフェルちゃんに操られているとでも吹き込んだんだ。閉鎖的なミドリムシの里なら洗脳は簡単だ。
そしてフィオレちゃんだけを残したのも保険だ。パトラウスも対処に頭を悩ませている。立ち入り禁止エリアに入ったんだから罰を与えることは出来るけど、重罰には値しないしそんなことは出来ない。
そしてフィオレちゃんを裁けない以上、他のミドリムシを裁くことも出来ない。
本当に腹が立つよ。マンガンの奴はそこまで計算してフィオレちゃんを巻き込んだんだ。小賢しい。生きていたら私がバラバラにしてやるところだ。
でも、奴等にも誤算があった。ティドルちゃんの存在だ。ティドルちゃんを傷付けただけでも大事なのに、彼の伴侶はティアンナちゃんだ。
彼女がセレスティナ女王陛下の妹であることはアード上層部の限られた者しか知らないし、私がお願いして意図的にミドリムシには教えていない。
そして奴等は、見事にティアンナちゃんの怒りを買った。激怒した彼女はそのまま女王陛下を動かし、御前会議で直接釘を刺していただいた。これでもミドリムシは止まらないと思うけど、大きな動きは取れなくなるしリーフ人の中に存在する穏健派や融和派の背中を強く押すことになる。つまり、内側の勢力を気にする必要が出てくるからミドリムシの動きを内外から牽制できる。
まあ、ミドリムシを皆殺しにするのが一番手っ取り早いんだけどそれは内戦になるからダメだ。
パトラウスはこれを機にリーフ人の穏健派や融和派と接触を始めた。女王陛下のお言葉はそれだけの意味があるし、感触も悪くないみたいだ。本星に帰ったら私も動こう。
「ばっちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だよ☆新しい国、楽しみだね☆」
この件はティナちゃん達に知らせていない。彼女達には真っ直ぐ前を見て欲しい。騒がしい周りを抑えるのは私達大人の仕事なんだから。