#15 「最期の願い」
「今日、楽しかった?」
「えっ?」
シルクくんはポツリと
呟くように問いかけた。
「もちろん、すごく楽しかったよ」
「それはよかった…」
安心したのか肩を少し下ろした。
なんだか少し緊張していたみたいに。
「ねぇ、1つ聞いていい?」
「ん?どうした?」
私はどうしても気になることがある
「私…さ、
もういつ死んでもおかしくないんだよね…?」
「…!?」
さっきの電話、
きっとお医者さんからの連絡。
もう私は長くないんだ…
シルクくんは
勘づかれたかのように驚いていた。
それを隠せなかったのだろう。
「な、何言ってんだ!
回復してるに決まって…」
「いいの、嘘つかないで」
わかってる…
無理に隠されても…アレだし。
「…ごめん」
「謝ることじゃないよ…」
その場から言葉が消えた…。
空気が重くなりながらも
私たちは歩き続けた
なんだか見覚えのある道。
そうここは…
「え…ここって」
「前、来たとこだよ」
そうシルクくんが連れてきてくれた場所。
星空が綺麗に見える。
満月が私たちを嘲笑うように照らす。
「シルクくん…」
「え?」
「なんだか…
満月がシルクくんみたいだなって(笑)」
「どうゆうこと?」
「こうやって闇を作るでしょ?」
私は両手で中を隠すように示した。
その中は暗くなっている
「そして月に近づけると…」
中は明るく、見えなくなるほど眩しい
「シルクくんの笑顔みたいにね」
「そっか…」
「最期ぐらい…笑っていて」
「え?」
「私が死んでも…、
悲しまずにさ、マサイさんたちと笑ってて」
「え、悲しまずに…?」
「今日、私を
楽しませようとしてくれてありがとう」
「…………」
「私の事、忘れるくらいに笑ってて欲しいな」
「忘れるわけないだろ…!!
だって…お前は俺の…」
「彼女っ?」
「…っ…//」
そう言った瞬間、
シルクくんの顔が赤くなった。
とっさにパーカーの袖でその顔を隠す
可愛いなぁー…
「なんか積極的すぎね…?
ずりぃーぞ…」
「積極的、か…」
私は少し考えた
積極的になりたい訳じゃない。
ただ、最後に思い残した事をしたいだけ…
「シルクくん…私、怖いよ…」
「…ロミア?」
「私がいつ死ぬのか…
もう話せれなくなるのが…怖いの…」
私はしゃがんでうつむいた。
怖い…死が。
「…ロミア」
「…なに…?」
ギュッ
「シルク…くん?」
「ごめんな…俺、何もしてやれなかった」
「…もう明日には会えないのかな」
それにしても…
シルクくんの腕の中…暖かい。
まるで癒しのように…。
「絶対また会えるよ」
「絶対…?言ったね?」
「おう、これは約束するよ」
私は自然に笑えるようになった。
ありがとう…シルクくん。
それからどれだけの月日が経っただろう?
1年?5年?
シルクくんはそれ以降ここに来なくなった。
あの時の約束…守れてないじゃん…
そして寿命だった「半年」という言葉を
壊すかのように…運が良かった。
この病気を安定させる薬が開発された。
そして私はいつもの日常に戻った。
と言ってもシルクくんには会えずし
それから10年ほど経った。
もう会えないだろう…そう思ってた。
ー葛飾の土手
「………」
ここは相変わらず変わってないなぁ…
シルク…くん。
前、私を連れてきてくれたよね
懐かしいなぁ…
シルクくんは「Fischer’s -フィッシャーズ-」
という大人気YouTuberになっていた
Fischer’s…受け継がれてたんだ。
そう思った時、なんだか声が聞こえてきた。
話し声…?
後ろを振り返ってみると…
6人ほどの男の人がいた。
何かカメラを持ってる?
動画撮影かな…?
「それでシルクがさー(笑)」
「おいそれは話すなよ!w」
「www」
シルク…!?まさか…?
いや…そんな訳ないよね…?
瞬間、その男の人と目が合った
「…?こんちはー」
「こ、こんにちは…」
「…!?」
なんか驚いてる…?
その人はこうポツリと言った
「…もしかしてですけど…ロミ、ア?」
「…えっ?」
なんで…私の名前を…?
「あ、人違いですよね…!
ごめんなさい…(笑)」
「何言ってんの?(笑)撮影中だよ?」
「ごめんごめん…」
「シルク…くん?」
「え…」
あの時の…
本当にシルクくん…なの?
あの笑顔で照らしてくれる…
「ロミア…?」
「シルク…くん…!」
「え、ロミアって…あのロミアちゃん!?」
あれ?シルクくん以外の人って…
いや違う!この人たちは…
「マサイさん…!それにみんなも…」
Fischer’sがそのまま受け継がれてるんだもん
メンバーもあの時のまま…
ギュッ
「わっ!」
「やっと…会えた…」
「そうだね…」
シルクくんの腕、
相変わらず意心地がいい(笑)
「大人なったな」
「それはシルクくんもでしょ?
背…おっきくなったね?」
「おかげさまで」
「そーだ!せっかくだし一緒に遊ばね?」
「たしかに、土手来たしな」
それから私たちはあの学生時代の時みたいに
また仲良くなれて…
幸せでいっぱい。
「なぁロミア」
「ん、どうしたの?」
「あの時の約束…俺守れなかったよな」
「…そんな事ないよ?」
「はっ?」
「今、再会できたじゃん。
私はこれだけで十分幸せ。」
「心が広いな、お前は…」
そんな事ないけどね…(笑)
でもありがとう…シルクくん
約束は…いつしか叶えさせてくれる。
〜完〜
コメント
2件
いまさらのコメント失礼しますっ!全部見ました✨面白かったし、本当に作品つくるの上手ですね… 作者さんにこのコメントが届くか分からないけど、