テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
くもがくれ
42
死にたかった。
高校2年生の夏、梅雨の時期。夜は少し肌寒かった。
深夜1時、暗い部屋の中、物が散乱しぐしゃぐしゃの紙とティッシュと血の中、私は床に倒れていた。
手首を切る感覚が好き。なんだか気持ちよかった。
部屋のドアノブには紐が括られている。そこに、貧血で朦朧とする意識の中、自身の体を引きづりながら近づき紐に頭を通す。一瞬、景色が白色の花畑に見えた。
「これから死ぬんだ。死ねるんだ…」
そう呟き、予め買っておいた眠剤を大量に摂取する。薬が回るまで暇だ。私はまた手首を、腕を、脚を切る。
飲んだ量が多かった。数分で目の前が暗くなってきた。それを合図に身体をぐっと前に倒す。苦しい、でも気持ちい。
段々意識が遠のく。ああやっとおわれる、終われるんだ。
目が覚めた。病院だった。病院のベッドの上だった。腕には点滴の針が刺さっている。横には見慣れた母の姿。泣いていた。
母は、意識を取り戻した私を見てナースコールを押した。
「死ねなかった。」
まだ弱々しく、掠れた声で呟いた。涙なんて出なかった。
やっと退院できた私はまだ弱々しい足取りで、1人海に行った。潮風の気持ちいい海に行った。なんとなく、金欠の中行ってみた。そこで運命の出会いでもすれば何か変わったのかな。ただ綺麗な海を見て、さらに消えたくなった。海は見飽きた。
今度は森に行った。金欠の中行ってみた。鳥のさえずり、虫の声、またさらに消えたくなる。そんな私の手には縄が握られていた。
いい感じの気を見つけた。これならきっと折れない。縄をかけ、手馴れた手つきで輪っかを作る。頭を通す。ずっと流れてこなかった涙が溢れ出た時、私は本当に死ぬんだと悟った。
地面から足を離した。ぶらんぶらんと揺れ、じたばたと体が動く。苦しい、きもちい、くるしい…。もう死ぬ。目の前が霞んできた。
あぁ、生まれて、迷惑ばかりかけてしまって、「ごめんなさい…」
コメント
1件
うわ……これは重い。読み終わった後、しばらく息ができなかったよ。 「死にたい」が「気持ちいい」に変換されていく感覚の描写が生々しすぎて、主人公の孤独と絶望がひたひたと伝わってきた。特に「涙なんて出なかった」からの病院シーン、そして森で初めて涙が溢れた場面の対比が胸に刺さる。 死に場所を求めて海に行っても森に行っても「さらに消えたくなる」という負のループが、逃げ場のなさを強烈に印象づけてくる。タイトルの『ごめんなさい。』が最後の一文で回収される構成も、読後感を重くしている。 これは続きが気になる……というか、この先どうなるのか心配になる一話だった。