しろキャメ【休日】
窓の外では春風が枝を揺らし、柔らかな陽がカーテン越しに差し込んでいる。
ベランダの鉢植えに水をやった後、せんせーが大きく伸びをしてソファへとやってきた。
「キャメ〜、おまえ今日はちゃんと起きとるやろなあ」
キッチンのほうから、ゆるい返事が返ってくる。
「起きてるよ。せんせーが水やってるの、さっきからずっと見てた」
「うそつけ、あれ寝起きの声や」
「んー……でも、目は開いてたよ?」
俺はマグカップを二つ持ってリビングへ入る。ひとつは自分用、もうひとつはしろせんせーの分。
ミルク多めで、好みに合わせてある。
「ほら、せんせー。あったかいうちに」
「……おまえ、こういうとこだけ妙に気ぃ効くんやから、ずるいわ」
しろせんせーはマグを受け取って、ふっと笑う。
ほんとは怒ってないくせに、いつも文句っぽく言う。
俺がそれに乗ることが分かってるから
「ずるいって言うなら、俺のこと可愛がってよ」
「は?」
しろせんせーがコーヒーを吹き出しそうになった。
俺はそれを横目で見ながら、笑いを堪える。
「冗談だよ。でも、ほんとはちょっとだけ甘えたい気分だったりして」
「おま……どっちやねん……」
そう言いながら、せんせーは俺の隣に座る。
距離が近い。
ソファのクッションが沈み、自然と肩が触れた。
俺はそれにわざとらしくもたれかかって強調する。
「キャメ、おまえなあ……」
「ん?」
「……しゃあないな」
ため息交じりの声が耳元に落ちてきて、そのまま頭を撫でられた。
少し指が絡んで、髪をくすぐる。
「……ほんま、おまえには勝てへんわ」
「知ってるよ。俺、ずっとそう思ってたもん」
しろせんせーの手のぬくもりに、俺は目を閉じた。
今日は何もせずに、ただ一緒にいよう。
多分だけど、休日の贅沢な過ごし方って、こういうのを言うんだと思う。
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