テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
《 綿月の約束 》
✧ Prologue. 「 綿月 」
Side : pr
ふわり 、と足元が揺れた 。
あたり一面 、まるで雲に包まれたような
やわらかさだった 。
地面なのか空なのかすら 、よくわからない 。
ただ 、踏みしめたその先が 、確かに何かで支えられているとわかる不思議な感触。
足を一歩踏み出すたびに 、淡く金色に光る草のようなものが 、音も立てずに小さく波打った 。
ここは《綿月》。
天界と魔界のはざまに浮かぶ 、
ひとつだけの “契約箱庭” 。
「 ……っ 、なんやここ …… ? 」
ぽつんと立っていたのは 、クリーム色のふわふわした髪の少年_______ 。
その肩には 、まだうまく羽ばたけないような淡い白の羽が揺れていた 。
耳元にふわっとかかる髪が 、風にくすぐられて動くたび 、少しだけまぶしそうに目を細める 。
彼の背には 、同じように淡く白い 、
小さな角が2本 。
でもそれは 、ただ“悪魔だから”という理由だけでついているようには見えなかった 。
角も 、羽も 、表情も 。
Side : ak
「 ちょっと ? 」
声が響いた。
振り返ると 、金色と薄緑を混ぜたような髪の少年が 、緩やかに宙を歩いていた 。
彼の背には 、淡い銀白色の羽 。
きらきらと透けるような光をまとうそれが 、
揺れるたびに静かにきらめいている 。
Side : pr
「 ___っ 、はい….っ 」
ぴくんと肩を震わせ 、思わず声を出す 。
少し慌てたように胸元を押さえたその指先が 、
ほんのり震えていた 。
「 俺はぷり 。あんたと契約する 、堕天使やで 」
その口元は緩やかに笑っていたけれど 、どこか読み取れない感情が隠れていた 。
ぷりは 、震えてる少年の目の前でふわっと着地した 。
ほんの一歩 。
それだけで 、空気がすこし変わる 。
Side : ak
指先がきゅっと服の袖を握る 。
さっきから 、心臓の音がうるさい 。
なぜだかわからなくて____
胸の奥が、なんだか苦しかった 。
「 あ…..えっと….あき、です。……はじめまして 、ぷりさん 」
「 ん。 こっちこそよろしくな、あきさん 」
互いの名前を交わした瞬間 、空に淡い光がひらく
ふたりの真上 、まるで空がドアのようにゆっくり開かれていく 。
そこには 、ひとつの浮かぶ小屋____白い屋根 、
透明な煙突 、光るポストのついた家が待っていた
____夜だけ 、ふたりが過ごすための“契約の部屋”
あきの目が 、ふっと細くなる 。
「夢みたい」と呟こうとした声は 、でもまだ口から出なかった 。
「 なぁ、あきさん 」
「……?」
「 この世界 、ちょっと不思議でやろ ?
でもな、俺とおる時間は___ もっと、変になるかもしれんで? 」
その声は笑っているのに 、やさしさで包まれていた 。
ふわりと揺れた羽の隙間から 、なにかが始まる音がした 。
こうして 、16歳の小悪魔と堕天使は 、
まだ名前も知らない “感情” に 、契約されていく___ 。
小悪魔 ak 16
堕天使 pr 16
prak