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注意
・ヒロアカの夢小説です
・めっちゃ喋ります
・攻めです(攻主)・ネームド攻主
・敵連合の皆が攻主に惚れ込んでる描写有り
・地雷配慮してません ・事後描写有り
以上を許せる方のみお進み下さい。
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好きだと言えたならば、こうはなっていなかったのだろうか。
ぼんやりとそう思いながら、轟焦凍は事後の余韻に浸っていた。
さっきまではふわふわした気持ちでまともに思考ができなかったけれど、後処理をしてもらってボーッと天井を眺めていたら少しずつ頭が冴えてきた。
自分の我儘で年上である大橘狩兎に自分のことを抱かせて、その末に彼のことを求め過ぎてしまった。
今回で五回目の逢瀬で、二十歳年上の成人男性に手を出させてしまったことを少し反省する。
本当はもっと節度をもって接しなければいけないのに。
「なあ、轟。お前、まだオレのこと好きなのか?」
ふと問いかけられて、大橘の方へと顔を向ける。狩兎は仰向けのままスマホで誰かとメッセージをやり取りしていたようだけれど、視線を画面からこちらにずらして顔を見てきた。
「……たぶん、好きです」
「おー、そっか……そうかぁ」
ぼんやりとした返事に自分でも呆れる。こういう時くらいしっかりきっぱり言うべきだろうに、何度もこうして体を重ねているというのに未だにはっきりと好意を伝えることができない。
「あのな、轟。何度も言うけど、オレはお前とは付き合えないよ」
「……はい」
「いい子だから分かってくれ」
「子供扱いすんな」
ピシャリと言い放った言葉に狩兎は目を見開いた。そして少しだけ目を細めると、スマホをサイドテーブルに置いて轟の頬へと手を伸ばす。
「子供だよ、お前は」
「っ……」
「まだ未成年で、ヒーローを目指してる学生だ。オレみたいなオッサンなんかじゃなくて、ちゃんと可愛い女の子と恋愛をすべきだ。……な?分かるだろ?」
諭すような口調に、轟は唇を噛み締める。
対等に見られていない。子供だと、異性と恋愛をするべきだと思われている。
それが悔しくて悲しくて仕方がなかった。
「……んで、そんなこと言うんですか」
「何がだ?」
「俺のことを好きじゃないのに、なんでこういう事するんすか」
声が震えてしまって情けない。泣きたくなんてないのに、こんな弱々しい発言をすれば困らせることは分かりきっているというのに。それでも涙は溢れて止まらなかった。
「……お前が辛そうな顔をするから。ヒーローとしてのしょうもないお節介だよ」「泣いても止めなかったのは?」
「お前が離してくれなかったからだろ」
涙を拭ってくれる指の温もりが優しくて、ますます涙が溢れて止まらない。どれだけ拭ったところで次から次に溢れてきて、その内に狩兎は轟の目元に口付けた。
「……っ」
「泣くなよ、轟。……な?」
何がなだ。何も良くないし何も解決していない。それなのに狩兎は優しく微笑んでいて、その余裕のある態度がまた悔しくて悲しくて、轟はまた泣いた。
「なんで……っ、そんな、優しくするんすか……!」
「優しいのが嫌か?それなら控えるよ」
「嫌だ、優しくして欲しい」
グズグズと鼻を啜りながら我儘を言えば狩兎は困ったように笑った。
「……可哀想になあお前は。本当はこういう事をするべきじゃないんだろうなって思うけど……ごめんなぁ。表立って突き放す事もできない弱い人間なんだよ、オレは」
狩兎の懺悔のような言葉に轟はブンブンと首を横に振る。違う、狩兎が謝る必要なんてない。悪いのはこんな関係を持ちかけた自分なのだから。
「あんたが謝る必要なんてない……俺が、勝手に好きになってるだけだから」
「轟……」
「ごめんなさい……っ」
泣くな泣くなと自分に言い聞かせても涙腺がバカになっているのか簡単に涙が溢れてきて止まらない。これじゃ子供の癇癪と変わらないじゃないかと自分に呆れてしまう。
そんな轟の頭を狩兎は優しく撫でながら、慰めるように額に口付けた。
「轟の想いは嬉しいよ」「っ……」
「でもオレはお前の気持ちには応えられないし、付き合うこともできない」
「……はい」
分かっている。この好意が迷惑だということも、子供だと思われて相手にされないことも。それでも一度抱いた恋心を簡単に捨てることなんてできなくて、こうして何度も体を重ねてしまうのだ。
「……ごめんなさい」
「謝らなくていいって」
狩兎はまた優しく笑ってくれたけれど、それが逆に辛くて泣きたくなった。
「なぁ、轟」
「……はい」
狩兎は身体を起こすと、そのまま覆い被さってくるように抱きしめてくる。強く抱き締められて少し苦しいけれど、それでも離れたくなくて必死に縋り付いた。そんな轟の行動に苦笑しながら狩兎は小さく溜息を吐き出す。
「改めて言うけど、お前はまだ若いんだし、これから沢山の出会いがあるだろう?オレみたいなオッサンじゃなくてさ……もっと素敵な女の子と恋愛をした方がいいと思うんだよ」
「……」
「だからもう終わりにしよう」
「……っ」
終わりにしたくない。終わらせたくない。
でも、これ以上迷惑を掛けたくないという気持ちもあるから強く言い出せないのが歯痒い。
「……じゃあ。もし、お前がプロヒーローになって、オレがまだ生きてて、それでもまだオレが好きなら……その時は改めて付き合おう。いいか?」
「……はい」
「よし、いい子だ」
狩兎は轟の頭を撫でると額にキスをした。そしてそのまま再び唇を重ねると舌を絡ませ合うキスをする。互いの唾液を交換しあうような激しいキスに頭がクラクラしてくるけれど、それでもやめたくなくて必死に舌を動かした。
(せめて今だけは)
そんな浅ましい欲望を隠すように、轟は狩兎の背中に腕を回して強く抱き締めたのだった。
───
それから数日後、大橘狩兎がヴィランとの戦闘中に行方不明になったというニュースが流れた。
ヒーロー達の懸命な捜索も虚しく、結局大橘狩兎の行方は分からないまま更に数ヶ月の時が流れたのだった。
轟焦凍はそのニュースをぼんやりと眺めながら、あの日の出来事を思い出す。
(あの時……)
あの後、轟は泣き疲れてそのまま眠ってしまったのだが、朝起きると隣に狩兎の姿は無かった。サイドテーブルにはメモ書きがあり、そこには一言だけ書かれていた。
“今までありがとな。幸せになれよ” そんな短い言葉を残して彼は消えてしまったのだ。
それから数ヶ月経っているが、未だに彼が生きているのかも分からないまま時間が過ぎていく。
轟はただ呆然と過ごしていた。あれから何度も自分の想いを伝えようとしたけれど、結局言えなくて今に至る。
「……会いたい」
ポツリと呟いた言葉は誰にも聞かれずに消えていった。
◆
それから、狩兎を改めて見かけたのは、敵連合との戦闘中だった。
悲しいかな、狩兎は敵連合としてその戦闘を傍観していたのだ。
「狩兎さん……!」
轟が思わず叫んだ時、狩兎は一瞬だけ轟の方を見た。
そして、小さく笑ったように見えた。
「狩兎さん!なんで……!」
「……久しぶりだな、轟」
狩兎はそう言うと、そのまま背を向けて去っていこうとする。
「待てよ!」「待たない」
引き止めようと手を伸ばしたけれど、それは届く前に振り払われてしまった。その行動があまりにも冷たくてショックだったけれど、それでも諦めきれずに追い縋ろうとした時だ。「動くな」という声が背後から聞こえたと同時に、牽制のように蒼い炎が轟を取り囲むように燃え上がる。
「ッ……!?」
「下手に動いたら火傷じゃ済まねぇぞ」
いつの間にか背後にいたのは荼毘だった。彼は轟を睨みつけると、そのまま耳元に顔を寄せる。
「アイツは俺の恋人なんだ。手ぇ出したら殺す」
「は……?」
「じゃあな、轟焦凍」
それだけ言うと、荼毘はそのまま去っていった。残された轟は呆然と立ち尽くすことしかできなかったけれど、それでも狩兎を追いかけようと足を踏み出そうとする。しかしその前に狩兎は行ってしまって、その手は虚しく空を切ったのだった。