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なんだか嘘みたいで……。だって矢代チーフが、私のことを? なんで、私を? なんで、どうして……?
頭の中が疑問符でいっぱいになるのと同時に、無意識な涙が流れた。
「まいったな。泣かれてしまうとは思わなかった。そんなに嫌われていたか?」
「あ、ごめんなさい! 違います!」
急いで手の平で涙を拭うと、
「わ、私も好きです! だから、たまらなく嬉しくって……!」
ずっと焦がれてきたその人へ、素直な気持ちを伝えた──。
想いを告げると、また新たな涙が流れて、こんなにも彼のことが好きだったなんてと、自分でも思いがけないくらいに感じた……。
「そうか、僕も嬉しいよ」
首筋に片手を当てて照れたように微笑う矢代チーフに、私はハンカチで目尻に滲んだ涙を押さえ、にっこりと笑みを返した。
「……私、チーフはカモフラージュでキーホルダーを付けてるんだろうと、そう思っていたんです……」
涙が止まると、頭の中にもやもやと浮かんでいたことがふと口をついた。
「カモフラージュ?」
と、不思議そうな顔で問い返される。
「はい、他に好きな人がいて、その人と上手く行ってると見せかけるためなんじゃないかって。私なんかは眼中にないとあえて思わせるために」
「まさか」と、チーフが口にする。
「僕は、そんな姑息なマネはしない。ただ君が気づいてくれればと思って、キーホルダーは付けていただけだ」
そんな風にも告げられて、人通りの多い往来にも関わらず、顔からボッと火が出るんじゃないかというくらいに真っ赤になった……。