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青年の手があれこれ動くのを見ながら、旅人は言った。
「君は簡単にはいかない。おまけにこんな努力、誰も見てない。誰も助けてくれない。それでもやっと、一台を造り上げる。ネジ一本間違うことなく、車は買ってきたときと同じような統合体になった。分解する前と組み立てた後の外見は同じ、性能も同じだ」
「はあ」と青年。
「さて。今その車、どう見える?」と旅人。
「今瞼の裏に写ってるのは、前と全然違ったヤツだ」なんてったって、車ってものをよく理解してる、と青年は心の中で付け加えた。
「でも、全然違ったのは車の方じゃないよ。たぶん、理解して、深まった君の方だ」と旅人は言った「君のこの風景と、僕が見てるこの風景の違いも、きっとそんなところだと思う」
青年は目を開けた。
夕陽がまぶしい。手をかざす。指の間から見える、シルエットになったヨーロッパ大陸。船。かもめ。