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五日後、北関東の地元の地方都市で伯父の葬儀への参列を済ませたトモエは、秋葉原へ戻って来た。上野駅で山の手線に乗り換え、スマホの地図を見ながらヒミコたちのいるビルへと歩く。
まだ東京に土地勘がないトモエにとっては、たどり着くのはそれなりに骨が折れる道中だった。だからトモエは地元の市からずっと後をつけられていた事に全く気付かなかった。
秋葉原の駅から出て歩くトモエの数十メートル後ろを、ひざ丈の瀟洒な白いワンピースを着た同じぐらいの年頃の女がずっと尾行していた。
ツインテールの長い髪の垂らした部分を縦ロールに巻いているその女は、ヒミコがマユキと呼んでいた人物だった。四月になったばかりの、さして日差しが強いわけでもないのに、日傘をさしていた。
その日傘は一風変わっていた。和傘で、柄の部分は竹で出来ているように見え、傘の表には色とりどりの花模様があしらわれている。全体的に細身の造りだが、常に傘の柄をクルクルと回しながら歩くマユキの姿は、道を歩く特に若い女性の通行人の目を引いた。
すれ違った若い女性二人が思わず声に出した。
「わあ、あれ見た? 綺麗な日傘」
「見た見た。あれって日本風の日傘だよね? 和傘だっけ?」
それほど目立つ日傘をさして歩いているにも関わらず、マユキはトモエに全く自分の気配を悟られずに一定の距離を保ちながら後を追っていく。
ようやくトモエがホワイトリズムの事務所兼宿舎であるビルにたどり付いた。仕事場のスペースで紺色のパンツスーツを着て、腰まで届く長い髪を首の後ろで結んで、机に座っていたヒミコがそれに気づいて椅子ごと向きを変えてトモエに言う。
「おや、お帰りやす。もう地元での用事は全部済みはったんか?」
トモエはキャリーバッグを横に置いて、深々と頭を下げた。
「はい、全部終わりました。ほんとは出たくなかったんですけどね。あの伯父さんは一応あたしの法律上の保護者だし、葬式出ないわけにもいかなくて。それにしても東京で自殺なんて、あたしを追いかけて来たんじゃなかったのかな?」
ヒミコは何食わぬ顔で言った。
「まあ、なんか深い事情でもあったんやろうな。とにかく自分の部屋に荷物置いて来なはれ。一時間後にいろいろ説明したるさかいに」
「はい、今日からお世話になります。よろしくお願いします」
トモエが奥の階段を上って二階に姿を消すと、入れ替わりにマユキが入り口から入って来た。無表情なまま、ヒミコがマユキに尋ねた。
「ご苦労でしたな、マユキ。それでどうやった?」
マユキは畳んだ日傘を片手で持ったまま答えた。
「何も変わった事はありませんでしたわ、ねえ様。わたくしたちの事を誰かに口外したりも一切なかったですわね」
ヒミコは全く感情を顔に出さずに言う。
「そうか、そら何よりやな。そんで戻って来たいう事なら、信用してええですやろ」
マユキは日傘を広げて、柄に手を添えた。日傘の柄の下半分程がスポッと外れて、中が空洞の筒になった。それを口元に近づけて、マユキはこともなげな口調で言った。
「ええ、ねえ様。わたくしもこれを使う必要がなくて気が楽になりましてよ。わたくしたちの秘密を洩らしそうになったらその場で殺せという命令、実行せずに済みましたものね」
コメント
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第14話「花びらと六文銭」、読み終わりました。マユキの日傘、あの花模様が美しいのに、柄を外せば武器になるって描写がすごく好き。綺麗なものに隠された刃、って感じがしてゾクッとしました。トモエが全然気づかずに普通に生活してるのが逆に怖くて、ヒミコの裏の顔もじわじわ見えてきて、この先どう転ぶのか楽しみです。今日も重くて綺麗な世界をありがとうございます🤍🥀