ya君付き合って三年が経った。
高校から始まった恋は大学生になっても続いていたけれど、
最初の頃の熱よりいつの間にか落ち着いて、
安心に変わっていた。
本来なら心地よいはずのそれが、
気づけばどこか寂しさを伴っていた。
最近のya君は忙しそうだった。
サークル活動や友達付き合い、バイト。
スマホを握りしめて笑う彼の姿を見るたびに、
胸の奥で小さな不安が膨らむ。
私といる時にはその笑顔は少なくなっている気がして、
どうしてだろうと考えるたび、
心は重くなった。
et「 ね え 、今 度 の 日 曜 っ て 空 い て る ?
勇気を出して聞いた言葉に、
ya君は一瞬スマホから目を上げたけれど、
すぐにまた視線を戻した。
ya「 御 免 、バ イ ト 入 っ ち ゃ っ て る 。
短い返事。
会話はそこで途切れてしまう。沈黙が二人の間を埋め尽くした。
ほんの小さなことだった。
返事がそっけなくても、きっと疲れているだけ。
頭ではわかっているのに、心はそれを受け止められなかった。
夜。ベッドに横になっても、
ya君の声や表情が頭から離れず、涙がにじんでいた。
et「 … そ れ で ね 、
最 近 ほ と ん ど 会 話 ら し い 会 話 が な く て 。
カフェの窓際、urに向かって私は声を絞り出す。
カップの中でコーヒーが冷めていく。
urは黙って頷きながら、私の話を最後まで聞いてくれる人だった。
昔からそう。
どんなに愚痴っぽい話でも、途中で遮らず、
ただ「うん」と相槌をくれる。
et「 笑 っ て る 顔 を 見 る の が 減 っ た 気 が す る ん だ 。
et「 私 と い る と き よ り 、
誰 か と い る と き の ほ う が 楽 し そ う で さ 。
声が震えて、
最後はほとんど聞き取れないくらい小さくなった。
urはしばらく視線を落とし、それから静かに言った。
ur「… et さ ん は 、
そ れ で も y a の こ と が 好 き な ん だ ろ ?
et「 … う ん 。
ur「 だ っ た ら 、
ち ゃ ん と 気 持 ち を ぶ つ け て も い い と 思 う け ど 。
当たり前のようなその言葉が、胸に深く突き刺さる。
わかってる、わかってるのに、怖かった。
もし本当に心が離れていたら。
その現実を知るのが、何より怖かった。
カフェを出ると、夕暮れの街が広がっていた。
オレンジ色の光に照らされた横顔のurは、
優しげで、だけどどこか切なそうで。
私が見逃していただけで、
その瞳には別の感情が揺れていることに、
本当は気づいていたのかもしれない。
数日後、私は思い切ってyaに聞いてみた。
et「 ね え 、最 近 …
et「 私 た ち っ 、… な ん か 変 じ ゃ な い ?
yaは少し驚いた顔をしたけれど、すぐに視線を逸らした。
沈黙が続く。
心臓が痛いほどに脈打っているのが自分でもわかった。
ya「 … そ う か も ね。
ようやく返ってきた声は、淡々としていた。
et「 前 み た い に 話 せ な い 。
何 が 原 因 な の か 、わ か ら な く て …
必死に言葉を繋ぐ。
だけど、yaはどこか遠くを見ているような瞳で、
私の声をすり抜けていった。
ya「 … 気 に な る 人 が い る ん だ 。
一瞬、意味を理解できなかった。
耳の奥で、何かが爆ぜるような音がした。
呼吸が浅くなり、喉が詰まる。
et「 え … ?
ya「 ご め ん 。
ya「 … も う 、前 み た い に は 戻 れ な い と 思 う 。
視界がにじんでいく。
どうして、そんな言葉が言えるの?
どうして、私たちはこんなふうになってしまったの?
問い詰めたいのに、声が出なかった。
yaは最後まで私の目を見ようとしなかった。
その背中が離れていくのを見送ることしか、私にはできなかった。
その夜、urに電話をかけた。
受話器の向こうで
ur「 ど う し た ?
と落ち着いた声が響くと、
張り詰めていたものが崩れ落ちるように涙が溢れた。
et「 終 わ っ ち ゃ っ た … 。
言葉にした瞬間、現実が突きつけられる。
息が苦しい。
胸が締めつけられる。
けれど、urは何も聞かず、
ただ黙って私の泣き声を受け止めてくれた。
その優しさが、痛いほど温かかった。
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