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あれから約2週間ほど経つ
正直なところ忘れていた。完全に忘れていた訳では無いのだが、そう言えばそんなこと考えたかもしれない、ぐらいの認識の薄さにはなっていた
と言うのも期末考査はすっかり終わってしまい、春休みが待ち遠しくて仕方がなかったのだ。特に委員会に所属していないため、卒業式なんて今年に関しては全く縁がない
しかしこの時期は気温の上下が激しく、衣服の調節が難しい。ひとつ間違えると暑すぎるか、はたまた寒すぎるかの2択に遭う羽目になる
残念なことに例外なく俺もそれに当てはまる。さらに悪いことに後者だ
🟪「…〜っ!」
🟦「あれ、スマイルセーター持ってきてないんだ?」
🟪「朝はそんな寒くなかったんだよ…くそ、ミスったわ」
体育終わりの更衣室。この時期に持久走なんて何を考えているんだと思うのも今年で2年目
汗をかいたのも相まって思わず身震いする俺に、隣のクラスの友人に声をかけられた
1年の頃同じクラスだったこともあり、こいつとは付き合いが長い。それに、俺ときりやんの交友関係を取り持ったのも彼だ。なんでも、中学が同じだったとかで元々友人だったらしい
🟦「あー、俺も今日は持ってきてねえわ」
「持ってきてたら貸せたんだけど」
🟪「まあ我慢出来ない程じゃないし、厚意だけ受け取っとくわ」
🟦「上からジャージ着るとかしておけば多少は暖かいんじゃね?」
🟪「そうしたいのは山々なんだけどさぁ…」
そう言って今しがた脱いだジャージを見せると、彼から苦笑の声が漏れた。それもそのはず、俺のジャージには隣を走っていたヤツが雪解け後のぬかるみに足を滑らせ、盛大に転んだ時の二次被害が広がっていたからだ
全面泥だらけのそいつよりはマシなのだが、半身がなかなかに汚れている。潔癖では無いとはいえ、流石にこれを残り半日も着れる気はしない
とことんツイていない日だ、などと考えていると背後に見知った気配を感じた
振り返ると既に着替えを済ませていたきりやんの姿があった
🟦「お、きりやんじゃん 」
「てかスマイル、あいつに借りればいいじゃん」
🟪「いやぁ持ってなさそうじゃね?しかもベスト着てるし余計ないだろ」
🟨「なーに俺抜きで話進めてんの?俺には教えてくんないわけ?」
🟦「いやスマイルがさ─」
と、先程までの会話を彼がきりやんに話している間に着替えを済ます。やはりブレザーだけではいささか心もとないなと思う。 対して寒がりじゃない彼のことだ、そこまで期待はしていない
しかしその返答は予想外のもので
🟨「え、俺カーディガンなら持ってるよ」
「今体育終わって暑いし、ことの後も別に着ないだろうから貸してやろうか?」
🟪「いいのか?後で飲み物ぐらい奢るわ」
🟨「いやいいって別に、ほら次の授業移動教室だから早く行こうぜ」
🟪「うわそうじゃん…悪い先行くわ、またな」
🟦「おう、また」
どうやら俺よりも気温対策はバッチリだったらしい
差し出されたカーディガンと自分のブレザーを急いで羽織り、きんときに軽く手を振り別れる
一瞬彼の笑みが何かを含んでいるように見えたのだが、まあ気のせいだろう
・・・
少し早歩きで教室へ戻る。幸いまだ時間に余裕はありそうで一安心する
机から教科書やら筆箱やらを取りだしている時、俺はあることに気づいた。 それは彼も同じだったらしく、移動先に向かう最中に彼に問いかけられた
🟨「俺らって別に身長そんな変わんないよな?」
「なんでそんな袖長いのお前、萌え袖みたいになってんじゃん」
🟪「それさぁ俺も思ったんだよね。きりやんオーバーサイズとかで買った?」
🟨「いや?そんなだと思うけど」
そう言われちらりと彼の方を見る
比較的アウトドアな趣味を持つ彼は、俺よりも肩や腕周りの体格が良い。身長もほんの数センチ彼の方が高いが、そこまで目立つほど違う訳でもないという事は、それが原因だろうか
いつもの癖で顎に手を当て考える。すると俺のものでは無い匂いがふわりと鼻を掠めた。きっとカーディガンからだろう
その香りが何となく心地よくて、柔軟剤が違うだけで同じ服でもこんなにも変化があるのかと一人感心していれば、彼から怪訝な顔でこちらを見られる
🟨「……臭う?」
🟪「は?…っあ、いやそんなことないから」
「ただ…その、、何だ、いい匂いだなって」
慌てて弁明した後に気づく。今俺は相当気持ち悪い返答をしたのではないだろうか?
異性ならともかく同性のやつから「いい匂いがした」なんて言われて気分のいいやつなんて相当居ない
🟪「あ、…違、こう、変な意味じゃなくて」
「あー、なんて言えばいいんだ、きりやんの匂いだなとおもって……」
段々と尻すぼみになって消える声
終わった。余計に墓穴を掘ってしまった。もっと言い方あっただろ、何故そのチョイスなんだと脳内でまくし立てる
彼からきっと大層な顔で見られているだろうと思ったが致し方ない。今日はとことん運が悪い日らしい
その証拠に彼はなんの声も発さないじゃないか。あまりの気まずさに耐えきれず、彼の名をおずおずと呼んでみるが反応を示さない
そんなに嫌だっただろうかと、もう一度彼の名を呼んだ。今度は顔を覗き込みながら
🟪「…きりやん?」
🟨「…っん!?あ、ごめん呼んでた?」
「ちょっと別のこと考えてたわ。で、どうかした?」
🟪「いや、まあ…てかお前何ニヤニヤしてんの」
🟨「…は!?いや別にそんなことないですけどねぇ…??」
ようやく気づいたと思えばこれだ。そんなに面白かったのだろうか。気持ち悪いと思われるよりかはかなりマシな方だが、あまりいい気はしない
誤魔化そうと口元を隠しているが、代わりに目元と声音がそれを物語っている
🟪「…教室着いたらこれ返すわ」
🟨「え、何で」
申し訳なさからの提案に、食い気味で問いかけられ少し驚く。が、そのまま言葉を続けることにした
🟪「何でって、…さっきの俺が言ったことキモくなかったわけ…?」
🟨「いやー、まぁキモイなとは思ったけどおもろいから良いわ」
「いいよ着てなよ、風邪ひかれても困るし」
🟪「そうか…?じゃあ、」
笑いながら話しているせいか声が揺れている彼の様子が、柔らかな陽射しと良く似合っている
借りた本人からそう言われてしまえば引き下がるのも失礼だろうと思い、甘んじて借り続けることにした
・・・
その日の帰り際、たまたま部活前のきんときと鉢合わせしたのだが、特に目立って変な様子はなく、半日前の違和感はただの思い違いだということに結論付けた
その後数分だけ彼がきりやんを借りるといい場を離れている間、何となく薄雲のようなモヤがかかった気分になったものの、これも気温のせいだろうと己に言い聞かせる
彼らが帰ってくる頃にはそのモヤも消えており、今日は気温に振り回されてばかりじゃないかと心の内でぼやき、帰路に着いた
結局返し忘れて、その日の夜電話越しに文句を言われたのはまた別の話である
続く