テラーノベル
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今日の夕飯は壱月のお手製唐揚げだ。
「今日は七味と、柚子胡椒と、塩麹」
「花斗がいたらこうは出来ないね」
そんな会話をしながら、幸せな味を頬張り、食後にはまったりコーヒータイムを楽しんだ。
それから、壱月はすぐにお風呂を準備してくれた。
「ゆっくりしてきて」
そう言われ脱衣所の扉を開けると、檜の香りが鼻をくすぐる。
こんなに幸せなゆっくりお風呂タイムは、いったい何年ぶりだろう。
そんなことを考えながら、檜の湯船で温まる。
「ゆっくりできた?」
風呂から上がると、壱月は私の足音に気付いたらしい。
暖炉の前のソファでスマホをチェックしていた壱月がこちらを振り向く。
私は思わず、肩から掛けていたタオルをきゅっと握った。
「すごい素敵なお風呂だった。ありがとう」
それに「おう」と返事した彼は、ポンポンと自分の隣を叩いた。
「ここ、座って。髪、乾かすから」
こうなることを予測していたのか、壱月は用意していたドライヤーを掲げて見せる。
「え、いいよ、そのくらい自分で……」
「俺が、したいの」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
ソファに腰を下ろすと、後ろに回った壱月が髪に優しく触れる。
くすぐったい。けれど、その温かさに安心感を覚える。
「はい、終わり」
そう言って、壱月の手が離れていく。
少し寂しいと思ったけれど、そんなことは言えるわけもない。
「じゃ、俺、風呂行ってくるわ」
「うん」
私がそう言うと、壱月は向こうの扉を指差した。
「先、寝ててくれて構わない。寝室は、あっちの扉だ」
「うん」
「おやすみ」
そんな会話をしてから、壱月の気配が浴室に消えてゆき、私はふう、と息をついた。
こんなことで、心臓がいちいちドキドキしてしまう。素直に言えない気持ちが、もどかしい。
ああ、なんでこんなにも、好きなんだろう。
*
私はソファでぼうっとしながら、膝に頬杖をついて外を眺めていた。
と言っても、日の暮れた湖畔は灯りもなく、ただ暗闇が映し出されているだけだ。
時折月明かりに照らされた水面が、キラキラと光るのが見える。
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綺麗だな、と思う余裕くらいはある。けれど、片手に持ったドライヤーを握りしめてしまうくらいには、緊張していた。
私は今、壱月の髪を乾かそうと、彼が風呂から上がるのを待っているのだ。
「愛音……まだ起きてたのか」
その声にビクンと肩が震えた。
ゆっくりと振り向くと、壱月は濡れた前髪を手で掻き上げて、こちらに優しく微笑む。
その色っぽさに、心臓が暴れ出した。
「寝てていいっていったのに」
「あー、えーっと……ほら、昼間寝ちゃったから眠くなくて」
本当のことを言うのが恥ずかしくて、慌てて言い訳を並べる。すると、壱月はニヤリと口角を上げた。
「じゃあ、それはなに?」
「へ?」
「愛音が手に持っている、それ」
しまった、ドライヤー握りしめてたんだった!
「これは、その……」
急に頬が熱くなる。
そんな私を見て、壱月は「ハハッ」と笑った。
「髪、乾かしてくれようと待ってたんだ? じゃあ、お言葉に甘えて」
まだなにも言っていなのに、壱月は私の隣に腰を下ろす。
私は慌てて立ち上がり、ドライヤーをオンにして壱月の髪に触れた。
「なんだか、不思議」
ふと、そんなことが口からこぼれた。
「なにが?」
「壱月のつむじ、見てるのが」
「俺はいつも愛音のつむじ見てるけど」
「それは、そうだろうけど……」
壱月のつむじを意味もなくツンツンとつついてみる。
すると、壱月は「後で覚えてろよ」と笑った。
コメント
1件
わああ第52話おつかれさまです!!今回もめっちゃ甘くてドキドキが止まらなかったよ〜😭💕 壱月くんが「俺がしたいの」って言って髪乾かしてくれるシーン、もう完璧すぎるでしょ!!優しさが滲み出てる…。 あと、愛音ちゃんがドライヤー握りしめて待ってるところ、可愛すぎて胸が苦しくなった…その後のつむじツンツンとか、2人の距離がじわじわ縮まってる感じがエモすぎて泣ける🥺✨ この先の展開が気になりすぎる〜!!続き楽しみにしてます!!