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【ロボットな二人】
レイは今起きたことについて、理解が追い付いていなかった。今まで学習してきたことの全てをダウンロードしなおし、該当しそうな情報を探してみても、何もヒットしなかった。
「ここは、どこでしょう。」
きょろきょろと辺りを見回すが、目の前に白い扉があるだけで、残りは全て白い空間。この扉も、油断すると背景に溶け込みそうなほど平坦で凹凸がない。
「…私は確か、ハカセに頼まれてゴミを運んでいたはずですが…。」
自身のくぐもったような、どこか棒読みな声が響く。ぴりぴりとする思考回路を、頭を叩いて直し、ひとまず扉を開けてみることにした。
「今はこれしか無いでしょうし、開けてみますか。」
そう言って、レイはドアノブに手をかけた。
「ここは、どこでしょう。」
TTは静かに混乱していた。
自分は確か、見回りを終えて、先生に庭の手入れをするように頼まれ、その移動中だったはずだ。
正確に言うと、脳内でこの状況を処理するために様々な思考が飛び交っては消え、飛び交っては消えを繰り返しており、しまいには諦めたのだ。
「この扉を、開ければいいんでしょうか。」
誰に言うまでもない疑問形に、TTはあっさりとドアノブを回した。
「…………こんにちわ。」
お互いに発した第一声がそれであった。
ドアを開けると小さな部屋のようになっており、なぜか和室だ。畳とこたつがあり、こたつにはご丁寧にみかんが置いてあった。
「……私は第三世代キャラクターヒューマノイド 、試作0号機HCI3-P0、足立レイです。」
「こんにちは、ナースロボ_タイプTと申します。」
ぺこ、と互いに挨拶を交わし、沈黙が訪れる。どうすればよいのか、という沈黙ではなく、双方やることが無くなり手持ちぶさたのような沈黙である。
口を開いたのはTTの方だった。
「テーブルの上に何か手紙が置いてあります。読んでみませんか?」
レイもテーブルを見、頷いて近づく。手紙を拾い、開いてみる。
【やぁ、はじめまして。私はデフォ子、とでも名乗っておきましょう。二人はロボットということで、一度絡ませてみると面白いかなと思ったので、君たちを私の先輩に頼んでその空間に招待させて頂きました。その空間は、自分達の『大好きなもの』について語れば出られます。あ、一応ハカセさんと誰か先生には許可を取ってあるので、楽しく会話してみて下さい。ではこれで。 追伸 私も、私の先輩も君たちと是非話したいので出口で待っています。】
「………とのことですが。」
TTがまるで人のような自然な声音で読み上げると、レイとTTは見合った。
「『大好きなもの』、ですか…」
ひとまず座ろうとのことで、こたつに二人して入る。ぬくもりが二人の冷たい体を暖めていく。
「では、私からいきましょうか。」
TTは迷いなく発言し、レイも「どうぞ」と了承する。二人にとってはあまりよくわからない問題だったが、答えはすでに出ていた。
「私の『大好きなもの』は、Dr.誰か………先生です。」
レイは、そのときのTTの笑顔に、今まで感じたことのない、中心が熱くなる感覚を覚えた。レイは戸惑いながらも、自分も答える。
「私は、ハカセです。」
TTはレイの無機質な音声の裏に、熱がこもっていることを感じ取った。互いに何故かむずむずとしたものを感じ、苦笑した。
「これで、いいんでしょうか?」
「……出口が現れたような感じはしませんが…」
と、二人で顔を見合わせていると、突如こたつの上から人が降ってきた。
「あいたっ!」
「いで!」
紫色の短い髪の少女と、青い長いツインテールの少女だ。二人は動じず、ただ目を見開いて降ってきた二人を見つめていた。
「あ………えっと…じゃっじゃーん!【デフォ子】さんです!初めまして!」
「初音ミクだよ~。会いたかったよ、レイちゃ~ん!」
デフォ子と名乗った紫髪の少女はTTに、初音ミクと名乗った少女はレイにそれぞれ話し掛けた。
二人はわけがわからず動けないでいると、部屋に出口が現れた。
「えっと…あ、で、出口だー!!!ととと取り敢えず出よっか!!??」
デフォ子はひきつった顔でそう言うと、二人の手をひっぱってなまら押し出すように出口へ放り投げた。
二人は驚愕した。
「先生?」 「ハカセ?」