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むぎ「…はい!配信切ったよ、おつかれさま~」
リリ『はーいお疲れ様』
今日は20時からリリむぎオフコラボ雑談配信をしていた。
約1時間30分の枠に収まり、雑談配信はタイムキープがしやすいなと思いながら、足早に台所へ冷えたミルクティーを取りに行ったちゅっちゅの顔を見つめている。
リリ『なんですか、私の顔に何か付いてますか?』
と、配信とあまり変わらないテンション感で話す。
それが、まだ配信の温度感が抜けていないのか、いつもこういう風なのかは分からない。
でも、この話し方が暖かくて、あ、「ここに夕陽リリがいるんだ」と感じられる話し方でむぎは好きだ。
むぎはにっこりと笑みを浮かべながら
むぎ「何にも付いてないよ、ただちゅっちゅの顔が見たかっただけ!」
と答える。
リリ『何ですかそれw』
ちゅっちゅはフッと笑みを浮かべ答えた。
笑い方もちゅっちゅ特有でかっこよくて、かわいい。
そんな笑いが今はむぎと視聴者ではなくむぎだけに向けられている事実を理解し、頬が緩む。
むぎ「えへへ… そうだ!ちゅっちゅ、この後ご飯行かなーい?むぎ行きたい所があるんだけど… ここここ!」
と、スマホでお店の概要を見せながら話す。
ここはインスタグラムでたまたま流れて来て行きたいなと思っていたお店。
リリ『へぇ、いいんじゃないですか?行きましょう。』
ちゅっちゅは自分の左手首に付けられた珍しい腕時計を見ながら言う。
時刻は22時前、さすがにそろそろお腹が空いてくるころ。
むぎ「やった〜!ありがとう!じゃあむぎ予約しておくから準備とかあればしてて~」
と言うとちゅっちゅは『okです』と言い立ち上がって離れていった。
スマホでお店の番号に電話をかけ、今日これから二人で向かいたいと言った旨を伝えた。
幸いお店は空いているようで一応店員に席の予約をしてもらった。
むぎ「ちゅっちゅー準備できた~?なんかお店空いてるらしくて今からでも入れそうかも」
どこにいるのか分からないちゅっちゅに少し声を出して言う。
すると思ったより近くから返事が帰ってきたので少し驚いた。
リリ『ほう、良かったじゃないですか。準備出来てますよ。家長は準備大丈夫なんですか?』
むぎ『ダイジョウブ!!』
相変わらず小動物みたいな声を出してしまいちゅっちゅがくすりと笑う。
むぎだってもう20歳なのに。
家を出たのは22時過ぎ、すっかり足元は暗くて、視界はビルの光で埋め尽くされてしまう。
ここから歩いて5分位の所にお目当てのお店はある。その間は他愛もない話をしていた。
最近にじさんじ等で流行っているスイカゲームやArc、少し前に上げたハッピートリガーの歌ってみた等。
次のハピトリコラボはいつにしようと言う話をし始めた頃お店についた。
むぎ「うーんと、たぶんここ!!」
むぎはちゅっちゅと話している間にチラチラ見ていたグーグルマップを頼りに言った。
ここは洋食っぽいお店で見た感じ混んでいると言う様子は無かった。
リリ『多分ってなに!?…まぁでもここっぽいですね。』
むぎがスマホを見せるとちゅっちゅも同意してくれた。
少し重い扉を開けて中に入ると店員の大きな《いらっしゃいませー!》と言う声が店内に響き渡った。
店員〈何名様でしょうか?〉
むぎ「あ、電話で予約した家長です。」
店員〈お待ちしておりました。お席のご用意ございます。どうぞこちらです。〉
むぎ「ありがとうございます。」
飲食店特有のいい臭いがして、リリがキョロキョロと店内を見渡している。
席に座り一通り説明を受けた後、注文をした。
むぎはオムライス。ちゅっちゅは和風のパスタ。あと大きめのサラダ一つ。これは二人で分けて食べる。二人ともドリンクバーを付けたので飲み物を取りに行くことにした。
店内には外でパッと見たよりも人がいて賑わっている感じだった。
家族連れやカップル、お爺さんお婆さん、老若男女問わず様々な人がいた。
ドリンクバーの前に着き順番を待つ間にドリンクはどれにするか聞こうとする。
むぎ「ちゅっち………リリはどれにするの?」
リリ『w…ちゅっちゅどれにしようかな~』
と、ちゅっちゅは言い間違いを少し煽ってきた。
むぎは少し顔を赤くして睨む。
ちゅっちゅ呼びが悪いと思っている訳ではない。でも、外では恥ずかしいのでリリ呼びにしようと思ってから意識するようにしている。
むぎ「だめだぁ…心の中でいつもちゅっちゅって呼んでるからか一向に直らないよ~…」
リリ「まだまだ軟弱だなぁ」
むぎ「めしょ~…」
結局むぎがアイスティーにしようかなといったら『じゃあ未来人もそれにします。』と言ったので2人ともアイスティーだ。
外でも『未来人』が一人称なリリも中々だと思ったが心の内に仕舞った。
先にリリがパスタを食べ終わって、アイスコーヒーを飲みながらまったりしていた。
むぎも少ししたあと食べ終わって2人でアイスコーヒーを飲みながら談笑した後お会計をして店を出た。
むぎは20歳の威厳を見せつけてやろうと、
むぎ「むぎが誘ったんだし、ここはむぎが払うよ!」
と言ったのだが、リリは
リリ『いやいや、家長に奢られるとなんか申し訳なくなるので流石に割り勘しましょう。』
と言われてしまった。妙に真剣な顔をしていたのでいつものように割り勘することにした。
こういう時のリリや剣持さんはなんだか威圧的?だ。
もうむぎは20歳なのに、特に2人は全く信じてくれない。
店を出る頃には23時30分を回っていた。何時までやっているのか店員に聞いてみたが24時まで空いているらしい。
都会でこんなに遅くまでやっているレストランのような飲食店は多くはないだろう。リリも物珍しそうに店内を見回していた。
外は以外と肌寒くコーヒーをアイスではなくホットを飲めばよかったと後悔しているとリリが、
リリ『夜遅くなると寒くなると思って一応これ持ってきたんだけど使う?』
と薄手の上着を差し出しながら聞いてきた。
むぎ「え!いいの!?ありがとう!!」
むぎはこれが出来る女…ちゅっちゅちゃんすき…と思いながら受け取った。
むぎ「ねぇリリ、もし寒くなければそこの浜辺まで行かない?」
リリ『? 別にいいけど家長こそ寒くない?』
むぎ「全然大丈夫!リリからもらった上着があるからね」
そうして、歩いて数分の浜辺に向かった。
そういえば夏の間にしたいこととして夜の海に行くを挙げて行ったなぁと思い出した。あの時は一人だったけど今はリリがいる、
リリ『なんかしたいことあったんですか?』
むぎ「いやー?ただリリと夜の海を見ながら話したいなと思ってさー。」
リリ『それだけ?』
むぎ「うん。それだけ。ごめんねむぎのわがままに付き合ってもらって」
リリ『いや全然いいんだけど、夜の海なんて滅多に来ないですし。』
真っ黒な海とリリの桃色の髪が映える。
そうしてぐだぐだ喋りながらシーグラスを探したり、波の海水に触ろうとしてみたり。一回失敗してむぎの白色のワンピースの裾がちょびっと濡れたり。
そんなことで笑いあえて。無言だって苦に感じないリリと10分ほど海岸に沿って歩いた。
むぎ「そろそろ帰ろっか」
リリ『もういいの?満足した?』
むぎ「うん!大満足!!」
今日はリリがむぎの家に泊まってくれる、いわゆるお泊まり会と言うやつだ。
だから帰る方向も一緒、これが地味に嬉しかったりした。
むぎ「ねぇ、リリ空見て?ちょっと歩くだけでこんなに星がきれいに見えるんだね」
そこでは都会では珍しい、星が10個ほどきれいに見えた。
リリ『本当だ、ちょっと暗いだけでこんなに見えやすさ変わるんだ。…でも、きっと家長と見るからだよ。』
リリは口を開けずににやっとした。
この女たらしがという気持ちを込めてぽかぽかリリの背中を叩いた。
リリ『あはっw 小動物みてーなパンチw』
むぎ「もーーーーーー!!!!」
むぎたちは元来た道とは違う道で家に帰った。
空は真っ暗で行きよりも建物の光が眩しく感じる。歩道を2人でならんで歩いていたらリリが手を握ってくれた。
むぎ「えっ!?//」
むぎはびっくりした。どういう意図で手を繋いだのか全く分からなかったから。
リリ『家長はちょっと目を離した隙に迷子になりそうだなと思ってさ』
なんだか期待していたのとは違った。
もしかしたら…!とか、思ったのに。
むぎ「はぁーあ!?そんなことないんですけど!ちゃんとリリのこと見えてるよ!!」
リリ『そっか、そうだよね。じゃあ手繋がなくてもいっか』
リリはむぎの手を離した。
むぎ「え~!?それは違うよ!」
リリ『ww嘘だよ、仕方ないなー家長は』
そう言ってもう一度繋いだリリの手は少し冷たくて、きっとむぎの手の方が暖かかった。
家に着いてむぎが鍵でオートロックのドアを開ける。
未来から来たリリにはオートロックは珍しくも何ともないのだろう。それとももう古いんだろうか?
リリの居る未来に対して疑問を抱くことは沢山あるが、聞いてもはぐらかされてしまう事が多い。
未来のことは言ってはいけないルールだとかがあるのだろうか。
いつの間にか未来の事はあまり聞かなくなっていた。
玄関のドアを開ける。「ただいま~」と海水はすっかり乾いた靴を脱ぎながら誰も居ないのに言う。これがむぎの中では癖というか、パターン、ルーティーンになってしまっている。
ただいま~と言うむぎを見て、リリも『ただいま』と言う。なんだか同棲しているみたいでにこにこしてしまった。
むぎ「よかったらお風呂先入りなよ〜」
荷物の片付けも大体終わったところでむぎは言う。
リリ『あーそうしましょうかね。すみませんお先に頂きます』
むぎ「いえいえ!ごゆっくりどうぞ?」
と言うとリリは洗面台へ向かった。
時刻は24時くらい。鞄などを直して他に特になにもすることが無いのでだらだらとテレビを見ていた。
ベランダから見える夜空には、海辺で見えていた星たちはもうすっかり見えなくなって、ただ二日月がむぎを照らしていた。
スマホでYouTubeを見ようとすると、丁度がっくんが配信をしていた。
やっていたのはむぎの知らないホラーゲームで、いつもはホラーは苦手なので見ないのだが今日は興味が沸いたので見てみる事にした。
突然洗面所から
リリ『家長ーー!』
とリリの声が聞こえたのでびっくりして半分寝ていたが、パッと目が覚めた。
ホラーゲームを見ていた筈なのになぜ半分寝てしまっていたのだろう…と不思議に思いながら返事をする。
むぎ「な、なにー!なにかあった?」
と洗面台の扉越しに問いかける。
リリ『あのさ化粧水とかない?あったらちょっと使わせて欲しいんだよね、忘れちゃってさ』
むぎ「あー!もちろんいいよ!もう入っても大丈夫?」
リリ『うん。』
と言いながらむぎが扉を開けるより先にリリが扉を開ける。
そこにはパジャマを着て肩にタオルを掛けたリリが立っていた。
むぎ「初めて見た…リリのお風呂上がり…」
と思って声に出してしまったがすぐにきしょいことに気がついた。リリも眉を曲げていた。
むぎ「いやごめん今のはきしょかった」
リリ『w自戒できてえらい』
リリのお風呂上がりを見つめていたが、すぐに目的を思い出す。
むぎ「wごめんごめんっ!えっと化粧水だよね?それならここに…はい」
真正面の鏡の扉を開き化粧水を取り出しリリに渡す。
リリ『ありがとう。この鏡ってそうなってるんだ』
とリリが驚いていた。未来にはこういう棚は無いらしい。
むぎ「じゃあちょっと次むぎ入って来るから好きにしててー」
リリ『はーい』
リリからの返事を聞いた後着替えとスマホを持って洗面所へ向かった。
いつも通りお風呂を済ませた後、お風呂の栓を抜いて出た。スキンケアをしてリリの所へ向かう。
むぎ「リリー」
問いかけるが返事がなかった。どこに居るのかなと探すとリリはソファーに座ったまま寝ていた。
むぎ「寝てる…のかな」
目を閉じてすぅすぅと寝息を立てるリリはまるでロボットの様だった。
時刻を確認するともう1時を過ぎた所だった。
むぎ「今日は楽しかったな…」
とリリを起こさない様に小声で呟いて、音を立てずに隣に座る。
寝ているリリは手まで温かくてゆたんぽみたいだった。
そんなリリに触れているとむぎまで眠くなった。
目を閉じる前に一瞬リリの口元が笑った気がしたが、きっと見間違いだろう。
むぎ「おやすみ、リリ」
むぎはリリの隣で深い眠りに落ちてしまった。
『おやすみ、家長』