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#2 ヒーローは少し変な口癖とともに
町外れの小さな公園に、夕暮れの風が吹いていた。 ベンチに座る僕と、隣でぶらぶらと足を揺らしているのが、幼なじみのタクトだ。
普段のタクトは、少し無口で、どこにでもいる普通の高校生だ。
――ただし、気持ちが高ぶると、妙な癖が出る。
「なあ、覚えてる?」
僕が言うと、タクトは空を見上げて小さくうなずいた。
「この公園でさ、昔約束しただろ。大人になったら――」
その瞬間、タクトの目がきらっと光った。
「ヒーローになるって約束したピーポー!」
出た。
テンションが上がると、語尾に必ず「ピーポー」をつけるやつ。
「やっぱり覚えてたんだな」
僕が笑うと、タクトは立ち上がり、拳を握りしめた。
「忘れるわけないピーポー!
誰かが困ってたら、絶対に助けるって! それがオレたちの、ピーポーの約束だピーポー!」
その声は、夕暮れの公園にやけに響いた。
数日後、その約束が試される日が来た。
商店街で火災が起き、騒然となる人々。煙の向こうから、助けを求める声が聞こえた。
「中に子どもがいるんだ!」
その瞬間、タクトが僕の前に一歩踏み出した。
「行くしかないピーポー」
震えているのに、足は止まっていない。
「約束しただろピーポー! 怖くても、逃げないってピーポー!」
消防車のサイレンが近づく中、タクトは迷わず建物の中へ走り込んだ。
数分後、彼は子どもを抱えて戻ってきた。顔はすすで真っ黒だったが、どこか誇らしげだった。
「……守れたピーポー」
その一言に、胸が熱くなった。
後日、いつもの公園で僕たちはまた並んで座っていた。
タクトは照れくさそうに頭をかく。
「なあ、さすがにもう『ピーポー』卒業したほうがいいかな」
「どうだろうな」
僕は笑って答える。
「でもさ、あの時は――」
タクトが少しだけ笑って言った。
「盛り上がってたから、仕方ないピーポー」
夕焼けの空の下、
僕たちの「ピーポーの約束」は、ちゃんと生き続けていた。