この世に神聖なものはあるだろうか。穢れのない子供、純心な想い。いや、違う。俺が思う神聖なものはそんなものじゃない。
あぁ、『天使様』が目を覚ます。花が舞うような雰囲気とあの憐憫な立ち姿。まさしく天使のようだ。
「やっと、、俺のモノになる」
考えるだけで胸が躍る。自分の目の前でゆっくり目を覚ます彼を撫でる。
「大丈夫だぜ、俺がいればアンタも無問題だろ?」
暗転
目を覚ます。誰かが僕の近くにいる。まだ脳が覚醒しきってない。正常な判断が出来ない。
「刀也さん」
名前を呼ばれ、ハッとする。目の前に知らない人がいる。辺りを見る。知らない場所だ。背中に冷や汗が伝う。怖い、怖い、この男は誰?知らない。
「大丈夫っすよ、刀也さん」
「なに、、が?」
なんで名前を知ってるんだ?
大丈夫って、どういう事?
待て、コイツ、何か既視感がある。
どこで、、、、
「俺はアンタを信仰してる」
男はニタァと笑う。あぁ、通学路にある看板に書いてあった殺人鬼じゃないか。モッズコートに、狂気的な笑顔、琥珀の瞳。最悪だ。息を呑む。
「信仰……?僕は、…貴方の神か何かですか?」
恐る恐る質問をする。
「いんや、違うぜ」
先程とは違う、爽やかな笑顔をみせる。
「じゃあ……」
「刀也さんは俺”の”天使だ」
…。コイツなんて言った?僕が?天使?は?
「穢れなく、純潔で、凛としている。まるで天使の様だぜ!」
両手を結び祈るように、僕の前に跪く。狂ってる。
殺人鬼に祈られるなんて最悪だ。
どうやら僕は狂気に誘拐されたらしい。