テラーノベル
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六人が目を覚ましたのは、窓のない白い部屋だった。
壁も床も天井も、継ぎ目のない金属でできている。中央の台座には六つの腕輪と、古びた黒いガラケーが置かれていた。
K-Tは最初に起き上がった。
防弾チョッキの留め具を確かめ、腰のトンファーと拳銃を確認する。そして台座のガラケーを手に取り、アンテナを伸ばした。
アンテナは、硬い警棒へと変形する。
「Kさん、それ、携帯電話として使えるの?」
メバルが尋ねた。
「問題ない」
「聞いたことに答えてないけど、いつものことね……」
カキは壁を叩いた。
「この金属、すごいぞ! 見たことのない合金だ! 少し削って調べようぜ!」
「カキちゃん、目が覚めてすぐ採掘しないで!」
「でも、内部に空洞がある」
ミステーが壁にピラミッドの被り物を押しつけた。
「壁の向こうで、古代文明が呼吸している」
「それ、自分の被り物がこすれてる音じゃない?」
アオノは腕輪を一つ取り上げ、淡々と調べていた。
「生体認証、位置情報、心拍数の監視機能がある。装着後の取り外しは困難」
「工具があれば外せるのか?」
マサカゲが聞く。
「可能性はある」
「まずは工具を探すべきだな」
「俺、鉱石を探す!」
「カキちゃんは工具を探して!」
そのとき、正面の壁が開いた。
巨大なモニターに、白い仮面をつけた人物の影が映し出される。
『参加者六名の起床を確認』
『これより、四つのゲームを開始する』
『第一ゲームは、チーム対抗ドッヂボール』
「ドッヂボール? それなら、まだ普通のゲーム――」
『ボールに被弾した場合、衣服が破損する』
「普通じゃない!」
メバルが即座に叫んだ。
カキが腕輪を見下ろす。
「全部破れたら、どうなるんだ?」
「カキちゃん、そんな先の心配はしなくていいの!」
「衣服の材質によって破損の範囲は変わるだろう」
ミステーが真剣な顔で言った。
「そこを分析しないで!」
画面にチーム分けが表示された。
チームA:K-T、メバル、マサカゲ
チームB:ミステー、アオノ、カキ
その瞬間、K-Tの足元の床が開いた。
「Kさん!?」
金属製の拘束具がK-Tの足首に絡みつく。
K-Tは床に手をつき、穴の縁をつかんだ。
「これは罠だ」
「見れば分かるよ!」
メバルとマサカゲが腕をつかむ。
「引くぞ、メバル!」
「うん!」
三人で引っ張ったが、地下から伸びた機械の力は強かった。
「カキ、手を貸せ!」
マサカゲが叫ぶ。
「今行く!」
カキが駆け寄る。だが、その途中で床に落ちていた金属片を見つけた。
「おおっ、これは珍しい鉱石――」
「今はKさん!」
メバルが怒鳴った。
「問題ない」
K-Tは落ち着いていた。
「いや、絶対に問題あるよ!」
「俺は地下へ行く」
「行きたくて行くわけじゃないでしょ!」
K-Tの体が、ずるずると穴へ引き込まれる。
「この施設の設計者に伝えろ」
「何を?」
「落とし方が雑だ」
「そこ!?」
K-Tは最後まで表情を変えず、床下へ消えた。
穴は閉じた。
しばらく沈黙が続く。
やがて、床の下から声が響いた。
「暗い」
「Kさん! 大丈夫!?」
「狭い」
「ケガは?」
「問題ない」
「本当に?」
「あと、階段がある」
「勝手に進まないで!」
「もう下りた」
「早いよ!」
声が少しずつ遠ざかる。
『参加者五名の準備を確認』
「五名じゃないってば!」
メバルがモニターへ抗議する。
『第一ゲームを開始する』
「Kさんを地下に置いたまま!?」
『欠員の補充は行わない』
「欠員って言わないで!」
五人は通路を通り、アリーナへ移動した。
中央には黒いボールが六個置かれている。壁にはルールが表示された。
三対三のチーム戦
ボールに被弾した場合、衣服が破損
一定回数の被弾で失格
「Kさんがいないから、こっちは二人しかいない」
メバルが不満そうに言う。
「不利だが、守りを固めれば勝機はある」
マサカゲが周囲を確認した。
その隣で、ミステーとアオノがメバルをじっと見ていた。
「……何?」
メバルが尋ねる。
ミステーの目が怪しく光った。
「メバルちゃんの服が、どの方向から、どの程度の力で破けるのか観察したい」
アオノも腕輪を確認しながら続ける。
「破損位置、範囲、布地の裂け方、被弾後の表情を記録する」
「二人とも急に何を言ってるの!?」
「さらに重要な観察項目がある」
ミステーがマサカゲを見る。
「メバルちゃんの服が破けたとき、マサカゲがどのような反応を示すか」
「俺の反応?」
マサカゲが眉をひそめる。
「驚くのか、怒るのか、守ろうとするのか。責任感の変化も観察できる」
「絶対に観察させないから!」
メバルがボールを拾った。
「そんな目的で私を狙うなら、こっちも本気でいくよ!」
開始の鐘が鳴った。
カキが真っ先にボールをつかむ。
「メバルちゃん、まずは一発!」
「宣言しないで投げて!」
カキの投球を、メバルは横へ跳んでかわした。
ボールは壁に当たり、床を転がる。
ミステーがすぐに拾った。
「今の回避で、メバルちゃんの右肩が約三十度下がった。恐怖より反射が先行している」
「実況しながら狙わないで!」
ミステーが投げる。
メバルは再びかわした。だが、ボールは壁に当たって跳ね返り、背後から迫る。
「背中に、二度目の秋が来ている」
「季節で言わない!」
メバルがしゃがみ込む。
ボールは頭上を通過した。
その隙にアオノが別のボールを拾う。
「次は低い軌道。足元を狙う」
「予告までしないでよ!」
アオノの投球がメバルの足元へ飛ぶ。
メバルは片足で跳び、ぎりぎりでかわした。しかし、ボールの端が上着の袖に触れた。
ビリッ、と布が裂ける。
メバルの上着の袖が、肩口から大きく開いた。
「当たった!」
ミステーが目を輝かせる。
「破損位置は左袖。裂け方は縦方向。布地は見た目より弱い」
アオノが淡々と記録する。
「メバルちゃんの表情は、驚きが四割、怒りが六割」
「勝手に割合を出さないで!」
メバルが袖を押さえる。
マサカゲが一歩前へ出た。
「メバル、大丈夫か?」
「うん、袖だけ。でも、二人を止めて!」
ミステーがマサカゲへ視線を向けた。
「反応を確認。まず心配し、次に敵を警戒した」
アオノも頷く。
「予測どおり、保護行動へ移行した」
「だから観察するな!」
マサカゲがボールを拾い、ミステーへ投げ返す。
ミステーは避けたが、ピラミッドの被り物に直撃した。
「ピラミッドが破損した」
「ミステーちゃんの服じゃないから、観察対象外ね!」
「被り物も衣服の一種では?」
「違う!」
カキが床の線を見つけた。
「なあ、ここから下に空洞があるぞ! K-Tがいる場所かもしれない!」
「カキちゃん、試合中に床を掘らないで!」
カキが床を踏んだ瞬間、アリーナ全体が大きく揺れた。
床の中央に、細い亀裂が走る。
モニターに赤い文字が浮かんだ。
地下区画との連動を確認。
ゲーム終了まで、K-Tは放置されます。
「わざわざ表示しないで!」
メバルが叫ぶ。
床下から、かすかな声が聞こえた。
「問題ない」
「Kさん、そこにいるの!?」
「扉がある」
「開けないで!」
「開けた」
直後、地下から大きな音が響いた。
「何を開けたの!?」
返事はない。
アリーナ中央に、新しいボールが三つ転がってくる。
ミステーとアオノは、再びメバルの破れた袖へ視線を向けた。
「次は背中側の破損を観察する」
「次は表情の変化を、より正確に記録する」
「そしてマサカゲの反応も――」
「絶対にさせないから!」
メバルが拳銃を抜いた。
「銃を使うのは反則じゃないんだよね?」
マサカゲが叫ぶ。
「メバル、それは最終手段だ!」
その瞬間、壁に新たな表示が浮かんだ。
銃の使用者を優先標的に設定。
五人の視線が、メバルへ集まる。
床下から、最後にK-Tの声が聞こえた。
「問題ない」
「Kさんのその言葉、今だけは助けに来てって意味に聞こえるよ!」
扉が閉まり、第二ラウンド開始の鐘が鳴った。
コメント
1件
読了しました🌙🤍 設定がいきなり不気味で引き込まれました。特にK-Tさんの「問題ない」連発、あれ不気味で笑っちゃいました(笑)。メバルちゃんのツッコミがテンポ良くて、読んでてすごく楽しかったです!服が破けるってルールも面白いし、続きが気になります…!