俺は、親から虐待を受けていた。
朝も、夜も、殴られない時なんてなかった。
けど、学校の人にはバレないように、ずっと楽しそうに笑ってきた。
ずっと、自分を偽ってきた。
そのせいか….
自分が何者なのかわからなくなった。
ただ楽しくなくても笑い続けて。
ただ「愛されたい」を捨てて、良い子でいれるように頑張った。
ぼん「た、ただいま….. 」
俺はそう、そっと小声で言い、家に入る。
ぼん母「……。」
ぼん「お、お母さん…..」
ぼん母「なによ!!」
ぼん「ぁっ…..ビクッ」
ぼん母「ほんっとムカつく!!」
ぼん母「てめぇのその声も!!」
ぼん母「見た目もムカつくのよ
!!」
ぼん「ご、ごめっなさ…..」
お母さんはそう言い、俺を蹴る
痛い。辛い。
お母さんは、周りから見えないところを徹底的に殴り、蹴り、つねる。
だから、誰にもバレなかった。
水泳の授業は毎回休んだ。
そのせいで、体育の評価が低くても。
内申点に響いたとしても。
親に虐待されてるなんて、バレたくなかった。
そんなある日。
ドズル「どもっ!ドズルです!」
ドズル「前の学校ではみんなに、ロジカルゴリラ社長って呼ばれてました!」
クラスメイト「えっww」
ドズル「よろしくお願いします!」
クラスメイト「えー、おもしろーw」
クラスメイト「なー、友達になろうぜーw」
ドズル「えっ、いいの?!」
ドズル「もちろん!なろなろ!」
俺の教室に、ドズルさんがやってきた。
俺も行かないと、変に思われるかもしれない。
だから、いつも通りに、いつもの様に、ドズルさんに話しかけに行く。
ぼん「ねぇ、君!」
ドズル「ん?僕?」
ぼん「そうそう!ドズル…だったよね?」
ドズル「うん!そうだよ!君は?」
ぼん「俺はなぁ〜….」
ドズル「う、うん….?」
一呼吸おき、俺は大きな声で言った。
ぼん「ぼんじゅうる!ぼんじゅうるだ!」
ドズル Σ( ˙꒳˙ )
ぼん「どーもでーーす!!」
いつもの挨拶。
クラス シーン
いつもの静寂。
俺がこの挨拶をすると、大体静まり返る。
俺は少し怖気ながら、ドズルさんを見る。
ドズル ( ゚д゚)ポカーン
案の定、ポカーン状態だった。
….だけど。
ドズル「….ぷっ、あははっ!w」
ぼん「えっ…..」
ドズル「ははっ、君面白いねw」
ぼん「…..!」
少し、嬉しかった。
けど、面白いなんて言われるのは慣れてる。
みんな言ってくるし、俺も面白くあろうとするから。
けど、ドズルさんに言われた時は、なぜかすごく嬉しかった。
どうしてだろう….
ぼん「そ、そうだろ!な、俺たち友達になろうぜ!」
ドズル「うん!なろう!ありがとう、ぼんじゅうるくん!」
ぼん「あーあー、ぼんじゅうるじゃなくて、ぼんって呼んでよ!」
ドズル「ぼん….さん?」
ぼん「さん付けかぁ….ま、いいや!」
ぼん「なら俺もドズさんって呼んでいいか?」
ドズル「うん!これからよろしくね、ぼんさん!」
ぼん「あぁ!よろしくな!」
これが、俺とドズルさんの出会いだった。
それから少しして、ドズルさんがいつも虐められている人と仲良くしているのを目にするようになった。
俺は、そいつの名前だけ知っていた。
俺たちの中学校は、テストの順位、上から順に職員室前に貼り出されるのだ。
それで、毎回1位を取っていて、だけどみんなに嫌われ、虐められている。
不思議だった。
確かに、あいつが他の人に注意しているのは見た事あるし、俺だって何回かされた。
けど、それは全てあいつが正しい。
だから、俺は反省するし、ありがたく思う。
どうして、自分らが悪いこと、間違ったことをして、注意されただけで虐めるんだろう。
だけど、俺は助けに行けなかった。
唯一の居場所を、失いたくなかった。
けど、ドズルさんはそんなことなくて。
ドズル「なにしてんの!」
ぼん「ちょっ…..?!」
虐められているところを見たのだろう、ドズルさんは、そいつらのところへ行き、虐められている人を連れ出して帰ってきた。
ドズル「大丈夫?!めん!」
めん「は、はい….だ、大丈夫っす….」
めん、と呼ばれたその人はボロボロだった。
その姿が、親に殴られ、蹴られ、つねられている俺にすごく似ていた。
ぼん「ちょ、ドズさん!」
ドズル「あ、ぼんさん!」
めん「….っ?!」
俺が2人に駆け寄ると、明らかにめんという人は顔を強ばらせた。
そりゃ、いきなり知らない人が駆け寄ってくれば怖いよな。
まぁ、この人に関しては、虐められるかもっていう恐怖もあると思うが….
ぼん「あんな人達にズカズカと突っ込んでくなんて危ないでしょ!」
ドズル「友達が虐められてたんだよ?!これくらいするでしょ!」
と、ドズルさんは満足気に笑う。
めん「….!」
めんという人は、ドズルさんに憧れの眼差しを向けていた。
そりゃ俺だって、こんなふうに助けてくれたら惚れるわ。
…まぁ、まずバレないと思うんだけどね。
ぼん「君も、大丈夫?」
俺は、そう声をかけた。
めん「えっ…..あ、えと…..」
めんという人は、分かりやすくオロオロとした後…..
めん「だ、大丈夫….です…….」
そう、顔を伏せて言った。
なんとなく、家での俺と重なって見えた。
だから、俺はこの人を放っておけないなって思った。
俺は、俺を助けるように、めんに手を伸ばす。
めん「…..っ」
めんは、殴られるのかと思ったのか、目をつぶり、体に力を入れる。
….ほんと、俺に似てるな。
ぼん「君、めん…だっけ?俺、ぼんじゅうる!ぼんさんって呼んでよ!」
めん「…..へっ?」
めんは、ポカーンとしていた。
俺が挨拶をした時のドズルさんと同じように。
ぼん「俺たち、友達になろうぜ!な?」
そう言って、俺はめんに自分の出来る最上級の作り笑顔を向けた。
こんな時に限ってまで、俺は作り笑顔しかできないんだな….w
めん「….!はい!!」
めんも、そう言って笑った。
眩しかった。
ドズルさんのように。
すると、それまで黙って見ていたドズルさんが言った。
ドズル「よし!じゃあ今からここの3人は友達同士だぁ!」
ぼん「お、おぉ〜!w」
めん「え、あ、お、おぉ〜….?」
俺もめんも、あんまりよく分かってなかったけど、ドズルさんがすっごく楽しそうに言ったから、合わせた。
そこから、俺たち3人はよく行動するようになった。
けど、めんはクラスが違う。
だから、俺たちが行けない時は、いつも以上にフルボッコらしい。
どう頑張っても止められない。
めんを虐める人達は、めんを蔑むような、見下すような、楽しんでいるような、餌を見つけて弄ぶような、そんな獣のような目をしていた。
どれだけ俺たちがめんを庇っても、めんは虐められた。
…..いや、「俺たち」なんて嘘だ。
俺は行けなかった。
だって、めんを助ければ俺は居場所を失うことになる。
みんなから嫌われる。
だから、ドズルさんが突っ込んで、俺は陰で2人をサポートするような感じだった。
ドズルさんは、本当に輝いていた。
俺みたいに、自分のことしか考えるんじゃない。
辛い人が居れば、悲しんでいる人が居れば、真っ先に助けに行く。
めんも、輝いていた。
虐められていても、最近だとそれに立ち向かうようになった。
どんなに殴られ、蹴られて、暴言を吐かれても。
悪と戦っているヒーローのようだった。
….そんな中に、俺が居るのがすごく申し訳なかった。
けど、みんなから離れれば、俺は本当の独りになってしまう。
家では相変わらず酷い扱いで。
学校では偽り、自分を見失い、差を感じ、劣等感でいっぱい。
どうすればいいかなんて、わかるはずもなく。
だから俺は、今日も作り笑いを続ける。
コメント
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いじめの方って終わった??
好きだけどノベル苦手w