コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
大きな紅葉の木の下。急な通り雨に、二人は駆け込んだ。
葉のすき間から、ぽつり、ぽつりと雨粒が落ちてくる。
「びっくりしたなあ、いきなり降ってくるんだもの」
ムーミントロールは濡れた鼻先をふきながら、にこっと笑った。
「ぼ、ぼくは……知ってたんだ。雲の色が怪しいって!」
スニフは胸を張ったが、さっきまで「まだ降らないさ」と言っていたことはすっかり忘れている。
「でも、こうして一緒に走ってこられたから、いいじゃないか」
ムーミントロールは、少し照れくさそうにスニフを見た。
スニフは耳をぴくぴくさせて、しばらく木の外を眺めていた。
雨は強くなったり弱くなったり、いたずらっ子みたいに気まぐれだ。
「……ぼく、濡れるのは嫌いだな。でも、君とならまあ……」
小さな声で言うと、ムーミントロールは嬉しそうに尻尾を揺らした。
二人の間に、言葉のいらない静けさが広がった。
紅葉の葉がぱらぱらと揺れて、雨の音が心臓みたいに響く。