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上映後
エンドロールが流れ終わった。
劇場内が明るくなる。
「……。」
誰も立たない。
阿部と目黒は顔を見合わせた。
「……みんなどうしたの?」
阿部が聞く。
最初に口を開いたのは佐久間だった。
「よかったぁぁぁ……!」
深く座席へ沈み込む。
「普通の恋愛映画だったぁ……!」
「そこ?」
阿部が笑った。
「だって最近のお前らの映画怖かったんだもん!」
「分かる。」
渡辺が真顔で頷いた。
「めめがあべちゃんを食おうとしたり。」
「記憶改ざんしたり。」
深澤が続ける。
「あべちゃんも毎回酷い目に遭うし。」
「今回は元彼に追われてたけどね。」
岩本が冷静に言う。
「それはそれで重いんよ!」
康二が突っ込んだ。
___________
ラウールは目元を拭っていた。
「でも、花屋のところよかった……。」
「分かる。」
宮舘も頷く。
「一年後に迎えに来るところ、綺麗だったね。」
「店の花全部買うのは意味分かんなかったけど。」
渡辺が言う。
「俺も撮影しながら思った。」
阿部が笑う。
すると目黒が隣から言った。
「でも、あべちゃん迎えに行くならあれくらいするでしょ。」
「しねえよ。」
渡辺の即答。
「花屋一軒買い占める財力前提で話すな。」
「映画だから。」
「映画でもだよ。」
___________
深澤は腕を組んで考えていた。
「俺さ。」
「途中、本気であべちゃんが帰らないエンドあると思った。」
「俺も。」
岩本が頷く。
「花屋で新しい人生を歩みます、みたいな。」
「それも綺麗だけどね。」
阿部が言う。
「でもめめ迎えに来たじゃん。」
佐久間が急に身を乗り出す。
「『迎えに来た。一緒に帰ろう』!」
「やめてよ。」
阿部が恥ずかしそうに笑う。
「いや、あそこめっちゃよかった!」
「俺も好きやった!」
康二も興奮する。
「しかもおじいちゃんとおばあちゃんの『帰りなさい』な!」
「泣いた。」
ラウールがまた目元を押さえる。
「孫たちが店継ぎたいって言ってるから、あべちゃんも安心して帰れるんだよね。」
「そうそう。」
阿部が嬉しそうに頷いた。
___________
すると。
渡辺が目黒を見る。
「でも一個気になった。」
「何?」
「お前、一年何してたんだよ。」
「映画の俺?」
「そう。」
「仕事。」
「あべちゃん探せよ。」
「……。」
一瞬。
全員が黙る。
深澤が吹き出した。
「確かに!」
「一年後に格好よく迎えに来てんじゃねえよ!」
「いや、探してた設定だよ。」
目黒が慌てて弁明する。
「映画で描かれてないだけで。」
「本当に?」
阿部まで疑い始める。
「あべちゃんまで?」
「だって一年だよ?」
「ちゃんと探してるって!」
「その間、あべちゃんは毎晩泣いてたぞ。」
「それは台本だから……。」
「かわいそうに。」
佐久間が阿部の頭を撫でる。
「佐久間、俺も台本だから。」
___________
ひとしきり笑ったあと。
ラウールがぽつりと言った。
「今回のめめ、最後までいい人だったね。」
また。
沈黙。
全員が目黒を見る。
「……何?」
「確かに。」
深澤が言う。
「裏がなかった。」
渡辺も頷く。
「ストーカーじゃなかった。」
「吸血鬼でもない。」
「記憶も弄ってない。」
「閉じ込めてもない。」
「怖い笑顔もしなかった。」
次々挙げられる。
目黒は呆れた。
「俺を何だと思ってんの?」
「最近の映画のめめ。」
「役だから!」
阿部は隣で笑っている。
「よかったね、めめ。今回は好青年で。」
「本当にね。」
すると。
佐久間が何かを思い出した。
「ねえ。」
「何?」
「今回もメイキングある?」
全員の視線が。
一斉に阿部と目黒へ向いた。
「あるよ。」
阿部が答えた瞬間。
「見る!」
ラウールが即答。
「また全員で見よう!」
「見たい!」
「花屋の撮影裏見たい!」
「目黒が花全部買い占めるシーンどうやって撮ったのか気になる。」
一気に盛り上がる。
阿部は苦笑した。
「最近、本編よりメイキング楽しみにしてない?」
「だって安心して見られるから。」
渡辺が答えた。
「今回は本編も安心だったでしょ。」
「まあな。」
そこで。
目黒が立ち上がる。
「あべちゃん。」
「ん?」
自然に阿部へ手を差し出した。
「一緒に帰ろ。」
「うん。」
阿部も手を取って立ち上がる。
その瞬間。
「……。」
なぜか。
メンバー全員が二人を見る。
目黒が気付く。
「何?」
深澤が警戒した顔で言った。
「いや……最近その台詞聞くと怖くて。」
「今回は普通だから!」
「前回も映画館で同じこと言ってた!」
「今回は本当に普通!」
阿部は大笑いしている。
目黒は呆れながら阿部の手を握った。
「帰ろ、あべちゃん。」
「うん。」
「……本当に普通だよね?」
ラウールが確認する。
「普通だよ。」
「家に花屋一軒分の花とかないよね?」
「ない。」
「隠し部屋も?」
「ない!」
渡辺が最後に一言。
「メイキング見るまで信用しない。」
「なんでだよ!」
結局。
心温まる純愛映画だったにもかかわらず。
過去二作のせいで、目黒の信用だけはエンドロールが終わっても回復しなかった。
___________
映画のBlu-rayが発売された日の夜。
約束通り、メンバー全員が集まっていた。
テーブルには大量のお菓子と飲み物。
テレビの前では、ラウールが嬉しそうにリモコンを持っている。
「今日は安心して見られるね。」
阿部が言うと。
渡辺が首を振った。
「まだ分かんない。」
「何が?」
「本当にめめが最後まで普通だったのか確認する。」
「本編で確認したでしょ。」
「前科があるから。」
「役だからね?」
目黒が呆れる。
深澤も頷いた。
「メイキングで急に監督から『実は目黒さんは裏で全部仕組んでました』とか説明入る可能性ある。」
「ないよ。」
「隠しエンディングとか。」
「ない。」
「あべちゃんがめめの家から一生出られないとか。」
「純愛映画!」
阿部が笑った。
「普通に恋愛映画だから!」
「じゃあ確認しまーす。」
ラウールが再生ボタンを押した。
___________
最初に流れたのは。
深夜。
目黒が玄関前で眠る阿部を見つける場面。
本編では。
疲労で弱り切った阿部を、目黒が心配そうに見つめていた。
そして。
眠る阿部を抱き上げる。
『カット!』
その瞬間。
阿部が目を開けた。
『俺重くない?』
『軽いよ。』
『本当に?』
『もう一回抱っこする?』
『しなくていい。』
『確認のために。』
『何の確認?』
スタッフの笑い声。
渡辺がテレビを指差した。
「はい。いつもの。」
「何が?」
「安心した。」
佐久間も頷く。
「今のところストーカー要素なし!」
「最初からないって。」
___________
次は。
阿部がお風呂から出てくる場面。
目黒の大きなTシャツとスウェット姿。
本編では。
目黒が一瞬見惚れる。
しかしメイキングでは。
『これ本当にめめの衣装?』
阿部が袖を伸ばして遊んでいた。
『大きい。』
『あべちゃん小さく見える。』
『めめが大きいんだよ。』
『かわいい。』
『役の感想?』
『俺の感想。』
「おい。」
深澤が目黒を見る。
「本編より恋愛始まるの早いぞ。」
「感想言っただけじゃん。」
「まだ拾った当日だぞ。」
「撮影では何日も会ってるから。」
「そういう問題じゃねえ。」
___________
次々と撮影風景が流れる。
そして。
服を大量に買おうとする場面。
『めめ、これ本当に全部レジ持ってくの?』
『台本には「大量の服を持って」って。』
『多くない?』
『あべちゃんに似合いそうなの選んだらこうなった。』
『役として?』
『俺として。』
『減らして。』
「まただ!」
佐久間が叫ぶ。
「最近の映画、めめのアドリブ多くない!?」
阿部が笑った。
「結構あったよ。」
「監督止めろよ。」
渡辺が言う。
「監督さん面白がってた。」
「じゃあ駄目だ。」
___________
やがて。
空気が変わる。
元彼がナイフを持って現れるシーン。
撮影前。
アクション監督から細かく動きの説明を受けている三人。
何度も安全確認をしている様子が映る。
そして本番。
目黒が阿部を庇い。
怪我をする。
『カット! OKです!』
次の瞬間。
『めめ!』
阿部が目黒へ駆け寄る。
『大丈夫?』
『大丈夫だよ。』
『本当に当たってない?』
『当たってない。』
『見せて。』
『ほら。』
衣装についた血糊を避けながら。
阿部が目黒の身体を確認している。
『よかった……。』
目黒が笑った。
『あべちゃん、本番より心配してない?』
『本番は俺が心配される側だから。』
『今は?』
『俺が心配する側。』
「……。」
メンバーが静かになった。
「普通に仲良しじゃん。」
康二が呟く。
「なんかいいなぁ。」
宮舘も微笑む。
渡辺だけが。
「……まだ油断しない。」
「何を待ってるの?」
阿部が笑った。
___________
続いて。
阿部が置き手紙を書いて家を出る場面。
本番。
阿部が泣きながら。
『ありがとう、めめ。』
そう呟いて扉を閉める。
『カット!』
しかし。
阿部の涙が止まらない。
『……ちょっと待ってください。』
スタッフからティッシュを受け取る。
すると。
画面外から目黒が来た。
『あべちゃん。』
『……めめ。』
『泣きすぎ。』
『だって悲しいんだもん。』
目黒がティッシュで阿部の涙を拭く。
『映画だから。』
『分かってる。』
『俺ここにいるよ。』
『分かってるって。』
目黒が笑いながら。
阿部の頭を撫でた。
「……。」
佐久間が鼻を啜る。
「俺、メイキングでも泣きそう。」
「佐久間、感情移入しすぎ。」
「だってあべちゃんが泣いてる!」
___________
花屋での撮影に入る。
老夫婦役の俳優たち。
孫役の若い俳優たち。
撮影の合間。
阿部は本当に花束作りを教えてもらっていた。
『ここを少し短くして。』
『こうですか?』
『そうそう。上手。』
『楽しい。』
別の日。
撮影が始まる前から。
阿部が一人で花を並べている。
『阿部さん、もう本当に働いてますよね。』
スタッフが笑う。
『だって楽しいから。』
『お給料出ませんよ。』
『めめの家より家政婦してる。』
スタッフが爆笑する。
そして。
いよいよ。
一年後。
目黒が花屋へ迎えに来るシーン。
ラウールが身を乗り出す。
「ここ好き!」
本番では。
『迎えに来た。』
『一緒に帰ろう。』
映画館で全員が感動した場面。
しかし。
メイキングでは。
撮影直前。
目黒が店いっぱいの花を見ていた。
『これ本当に全部買った設定なんですよね?』
『そうです。』
監督が答える。
『この量、家に入ります?』
『目黒さんの役の家なら入ります。』
『そっか。』
阿部が隣から。
『入るかどうかじゃなくて、世話する人のこと考えて。』
『あべちゃんがいるから。』
『俺にやらせる気じゃん。』
『二人でやろ。』
「撮影中からオチの会話してんじゃん!」
深澤が笑った。
___________
そして。
問題の告白シーン。
リビングを埋め尽くす。
大量の花。
「うわ、改めて見るとすごい。」
岩本が言う。
「これ全部本物?」
「ほとんど本物。」
阿部が答える。
「撮影現場すごくいい匂いだった。」
映像の中では。
照明やカメラの調整を待つ二人が。
花まみれのソファに並んでいた。
阿部が花を一本取る。
『めめ。』
『ん?』
『はい。』
『俺に?』
『うん。』
目黒が受け取る。
『ありがとう。』
今度は目黒が一本取って。
阿部へ渡す。
『はい。』
『……何してんの俺ら。』
『花交換。』
『ふふっ。』
二人で笑う。
ラウールがテレビを見ながら言った。
「もう本編より付き合ってるじゃん。」
「それは本人たちだからね。」
宮舘が冷静に返した。
___________
そして。
告白。
本番の目黒が。
真っ直ぐ阿部を見つめる。
『俺は、あべちゃんが好き。』
『家政婦だからじゃない。』
『助けてあげたいからでもない。』
『一緒にいたい。』
阿部の目から。
涙が落ちる。
『俺も、めめが好き。』
目黒が阿部を抱き締める。
『カット!』
「……。」
それでも。
二人は離れなかった。
『OKです!』
スタッフがもう一度声をかける。
まだ。
離れない。
『……お二人とも、OKです。』
『聞こえてます。』
目黒が答える。
『あべちゃんが泣いてるから。』
『めめが離さないだけじゃん。』
阿部が腕の中から言う。
スタジオに笑い声が響く。
「……。」
渡辺が真顔でテレビを見る。
「何?」
目黒が聞く。
「監督さん大変そう。」
「なんで。」
「カットかけても終わらない。」
___________
最後。
エピローグの撮影。
目黒が花屋で一本だけ花を買い。
阿部へ渡す。
本番終了。
『オールアップです!』
拍手。
花束を渡される二人。
阿部は笑いながら。
『ありがとうございました!』
目黒も頭を下げる。
『ありがとうございました。』
そして。
記念撮影。
すべてが終わる。
阿部が目黒を見る。
『めめ。』
『ん?』
『帰ろ。』
『うん。』
目黒が自然に阿部の手を取る。
『一緒に帰ろう。』
そのまま二人で歩いていく。
映像が止まった。
___________
「……。」
リビングが静かになる。
阿部が首を傾げる。
「どうだった?」
渡辺が。
ゆっくり目黒を見る。
「……普通だった。」
「だから言ったじゃん。」
「本当にストーカーじゃなかった。」
「違うって!」
深澤も安心したように息を吐く。
「記憶も弄ってなかった。」
「当たり前。」
「吸血鬼でもなかった。」
「人間です。」
「地下室もない。」
「ない!」
佐久間が嬉しそうに笑う。
「よかったぁ! 純愛だった!」
「最初から純愛映画だよ。」
阿部も笑った。
ラウールは満足そうにリモコンを置く。
「今回のメイキング好き。」
「俺も。」
康二が頷く。
「本編しんどいところ多かったけど、裏では二人ずっと仲良かったんやな。」
「うん。」
阿部が目黒を見る。
目黒も笑う。
その時。
深澤がふと聞いた。
「ところで。」
「何?」
「撮影で使った大量の花って、終わったあとどうしたの?」
阿部が答える。
「出演者とかスタッフさんで持って帰ったよ。」
「へえ。」
「俺たちももらった。」
「どれくらい?」
阿部が黙った。
目黒も黙る。
「……。」
渡辺が嫌な予感を察する。
「おい。」
阿部が目黒を見る。
「めめが『余ったら全部ください』って言って。」
「……。」
「家に。」
「……。」
「かなり持って帰った。」
全員が目黒を見る。
「だって。」
目黒は悪びれずに言った。
「あべちゃんとの映画の花だから。」
「お前だけ役抜けてねえじゃん!」
深澤が叫ぶ。
「違うよ!」
「花屋買い占めた男と同じことしてる!」
「買ってない! もらったの!」
「そこじゃねえ!」
阿部は隣で大笑いしている。
渡辺が深いため息をついた。
「やっぱメイキング見てもめめはめめだったわ。」
そして。
純愛映画のメイキング上映会は。
最後の最後で判明した、
目黒が現実でも大量の花を持ち帰っていた事件によって幕を閉じた。
コメント
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メイキング上映会のわちゃわちゃ好きヽ(=´▽`=)ノ 純愛映画やほのぼの映画の共演なら良いけど、この監督の作品はプロットの段階でメンバーの承諾アリ以外NGすべき、メンバーの🖤を観る目が疑いしか残さない様になってる(^O^;)

楽しかった😁 花の手入れ大変そう。 エンドロール後 メイキング ワチャワチャ騒いでるメンバーが好き😊 それにツッコミを入れてる2人も好き😊 🖤は独特な世界観なんだな その人を操れる💚違う意味で凄い
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kaede🍁
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