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二作目です。
誤字脱字等はご容赦くださいませ。😭
死ネタ、nmmn注意でございます。
ーー全部おとぎ話やったらよかったのに。
降り続く雨は、あの日と何も変わっていなかった。
静まり返った廃ビルの中に、重い沈黙が広がる。
「……あ、」
緋八マナの手から、レイピアが滑り落ちた。
彼の目の前で崩れ落ちていく男がいる。
伊波ライ。
かつて共に笑い、共に同じ正義を掲げ、形成してきた相棒。
「マナ―――ッ!!!」
静寂を切り裂いて現場へ雪崩れ込んできたのは、息を切らした仲間たちの叫びだった。
荒い呼吸と、雨に濡れた足音。
「頼むから待て!!」「俺たちが行くまで手を出すな!」
通信機器越しに必死に叫び続けていた6人が、ようやくたどり着いたその目前で、結末は決していた。
「な……嘘、だろ……ッ!」
赤城ウェンの膝が、がくりと床につく。
止める間すらなかった。あんなにも「生かして捕らえよう」「全員で背負おう」と誓い合って走ってきたのに、たどり着いた瞬間に目にしたのは、決定的な決別の光景だった。
「お前……何やって……ッ!?」
宇佐美リトが叫びながら駆け寄ろうとするが、その足が激しい驚愕で止まる。
リトの瞳に、見たこともない焦燥と絶望の色が浮かんでいた。
「……マナ。なんで……なんでお前がトドメを刺したんだよ……!」
小柳ロウが掠れた声で漏らす。握りしめた拳に力が入っていた。
他でもない、一番近くにいた緋八マナが、ライの最期を看取った。その事実が、6人に襲いかかる。
「あ……お……俺たちが、もっと早く着いていれば……っ!」
叢雲カゲツが頭を抱え、床に視線を落とす。あと数秒早くここに辿り着いていれば、マナにこんな選択をさせずに済んだのに。
佐伯イッテツは言葉を失ったまま、呆然と固まっていた。思考が完全に停止していた。
「……最悪の選択です、マナ……」
星導ショウの冷静だったはずの声が、震えて途切れる。
論理的に考えれば、マナがなぜこの選択をしたのか分かってしまうからこそ、余計に胸が締め付けられる。
マナ一人にどれほどの重荷を背負わせていたのか。彼を極限まで追い詰め、この道を歩ませてしまったのは自分たちだという罪悪感だった。
けれど、マナは一度も振り返らなかった。
仲間たちの叫びも、差し伸べられた手の温もりも。
すべてを突っぱねて、ただひたすらに倒れ込むライだけを見つめていた。
仲間たちの優しさは痛いほど分かっていた。
けれど、一番近くでライを見てきたマナだけは知っていたのだ。
ライはもう、半端な気持ちでここに立っていない。彼が背負ったものの深さは、生半可な方法で償えるレベルを超えている。
生かして捕らえ、裁きに引き渡すことこそが、ライの覚悟に対する行為として違うのだと。
身内の決着は、他の誰も巻き込まず、身内である自分が引き受ける。
仲間たちに一生恨まれても、二度と陽の目を見られない闇に堕ちることになっても。
ライの選択も、その最期も、全部自分が引き受けて終わらせる――。
それが、緋八マナの選んだ、あまりにも身勝手で過酷な「正義」だった。
「ライ……っ!」
崩れ落ちる体を、マナは抱きとめた。
腕の中に収まる体温が、次第に失われていく。
二人の制服が、その過酷な現実を物語っていた。
「……あは, は」
マナの胸の中で、ライが小さく笑った。
仲間たちの声と、雨の音の中で、どこか安心したようにマナを見上げている。
「……やっぱり、マナが……」
「当たり前やろ……!誰が他の奴らに、お前の最期を決めさせるかよ……!」
「ふふ……相変わらず……頑固だな。みんな……止めてくれたんでしょ……?」
「お前が……そんなんで救われるような奴じゃないことくらい、俺が一番知っとるわ……!」
「……そっか。ごめんね……マナに、こんなの背負わせちゃって……」
マナはライを強く、強く抱きしめた。
仲間たちの制止を振り切り、己の正義感と責任感で突き通したはずの覚悟が、手の中で冷たくなっていく現実の前にボロボロと崩れていく。
背後で崩れ落ちる6人の気配を感じながらも、マナの世界にはもう、冷たくなっていくライしか存在していなかった。
「……夢だったら、いいのにね」
ライの口から、掠れた声がこぼれ落ちる。
「……え?」
「全部……悪い夢で……目が覚めたら、いつもの部屋で……マナが『朝やぞ』って……起こしに来てくれてさ……」
「ライ……っ」
「……そんな、おとぎ話みたいなハッピーエンド……あったら、よかったのに……ね」
ふっと、ライの身体から完全に力が抜けた。
抱きしめていた背中が、ただの重みへと変わる。
「ライ?」
返事はない。
「ライ……嘘やろ? なぁ……おい!」
叫んでも、揺さぶっても、二度とその瞳が開くことはなかった。
背後で佇む6人の絶望的な沈黙の中、自らの手で相棒を刺し殺した男の絶叫だけが、静かな雨の中に消えていった。