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そして夕凪が微風を留めて汗ばむ頃、日暮れのデザイン制作室に二人の影が伸びた。アクリル板に押し付けられた私の肢体にアクリルシートを咥えた惣一郎さんの唇が吸い付いた。手のひら、手首、腕の内側、肘、二の腕、脇の窪み、タンクトップの付け根にカットされたアクリルシートが貼り付けられてゆく。


私は身悶えた。


「・・・・・惣」

「声を出さないで下さい」


人気ひとけのない美術棟に熱い吐息が漏れる。それは額や鼻先、頬、唇にも貼られた。


「ほら、素敵な作品の完成ですよ」


惣一郎さんは着衣の内側に触れる事はなかった。カッティングシートに彩られた私は彼の作品になり暮れなずむ制作室に展示された。両腕を組みそれを堪能した惣一郎さんはベージュの帽子を脱ぎ頭を左右に振ると両手で髪の毛を後ろへと撫で付け本当の姿になった。


「惣一郎さ、ん」

「良い子だから黙って」


今度はカッティングシートを唇で摘み、その場所を舌で舐めた。脚が震え崩れ落ちそうになると顔料塗れの手が腰を支えそれを許さなかった。


(ーーーあ)


最後の一枚は上唇に貼られていた。私は思わず舌を差し出したが惣一郎さんはそれに応える事なく身を離した。自分の隠れていたはしたなさに顔が赤らんだ。


「七瀬ちゃん、昨日の場所まで送って行きます」

「はい」

「教員駐車場で待っています」

「はい」


ベージュの帽子を目深に被った井浦教授は制作室を後にし、それと入れ違いに大垣光一が入って来た。惣一郎さんは階段を上って来る誰かの気配を感じ取っていたのかもしれない。


「なに、あれ油画の井浦じゃね」

「うん」

「なんでここにいるんだよ」

「マスキングテープを探してたって言ってた」

「ふーーん」

「うん」


大垣光一の視線が止まった。


「なに、おまえなんか付いてるぞ」

「え」

「虫刺され?」

「そうかも」


184cmの虫、タンクトップの胸の谷間にアクリルシートのような赤いキスマークが付いていた。


木陰からいつも奥さまがこちらを見ていました

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