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「離婚に応じてくれない」
「そうだろうね」
「松崎さんはわかっていたんですか?」
お昼は松崎さんが事務所にいるときは、給湯室で簡単な物を作って食べる様になった
松崎さんは平たいきしめんをつるつるとすすりながら
「音声データを聞いたときに、ご主人と不倫相手に温度差を感じたんだよね」
「でも、大森恵美と浮気していたのは本当でしょ。賢也だけ好きなようにして私とまた生活をしていこうとしているけど、私は無理。大森恵美と賢也が私のことをバカにしながらセックスしてたと思ったら、それだけでも嫌な気持ちになるし、一生忘れることはないもの。それに、賢也とはもうできないし、したくもない」
「どうしても別れないというのなら、訴訟をおこすか慰謝料を諦めて自由を得るという考え方もある。一応、その方向でも誓約書を作っておこうか?」
「自由?」
その考えは無かった。
***************
家に帰るのが苦痛だ。
今は探偵事務所のほうが居心地がいい、もっとすんなり離婚できると思っていたのに。
「はぁ」ため息をついてから、深呼吸をしてドアを開ける。
賢也は家にいるようだ、彼女の部屋にでもいけばいいのに。
大体において彼女の部屋にまで行ってるくせに、私を好きだとか言って離婚したくない理由は本当は会社での立場とかそう言うことなのかも知れない。
それって、私のことを考えてくれていないってことだよね。
そう思うと無性に腹が立ってきた。
ダイニングに近づくとカレーのいい匂いがしてくる。
「お帰り有佳、カレーを作ってみたんだけど」
「おいしそうな香り、着替えてくるね」
今まで、料理なんてしたことなかったのに・・・・
世間体?自分の分の慰謝料を支払うのが嫌?
自分を守るためなら今までしなかったこともできるようになるんだ。
でも
結婚してはじめて食べた賢也のカレーは案外おいしかった。
日曜の朝、私は仕事で賢也は会社が休みだ。
「じゃあ行ってきます」
いままでは、賢也を見送るだけだったが今は違う。
「今日の昼は何?」
「パスタです。さすがにここではあまり凝った物は作れないから」
「明日、カタがついたら俺の部屋で夕飯を作って」
「はははは、さっさと食べて仕事してください」
そういう言い方、勘違いしちゃうからやめて欲しい
明日、お金は振り込まれているだろうか・・・
家ではお互い仮面を被って夫婦ごっこしている。
二人で食事をして私は自分の部屋に籠る。
月曜日の朝、賢也は早く出社していった。
落ち着かない・・・
「はぁ・・・」
松崎さんは朝から調査に出ているため事務所には一人だけだ。
ファイルの整理をする。
こうやって見てみると、浮気調査って結構多い。
男性側だけでなく女性の浮気もあった。
そういえば、先日の依頼者はどうしたんだろう。
自分の願ったようになったんだろうか、私自身のことを考えても思ったようにはならない事の方が多いのかも知れない。
3時になり帰ろうとしたところに松崎さんが帰ってきた。
「有佳ちゃんおまじない」そいうと抱きしめられた。
松崎さんの腕の中はすごく落ち着く。
「がんばれよ」
そう言って背中をぽんと叩いてくれた。
銀行で記帳をするとオオモリエミの名前で200万円振り込まれていた。
「振り込みはちゃんとできてると思う」
「うん、確認した」
「賢也はどうしても離婚はいやなの?それって、会社での体裁のため?」
「え?」私の言った事が理解出来ないような表情をする。
「体裁とかそんなことを考えて居ないよ。こんなことをしておいて勝手だとおもうけどオレは有佳が好きなんだ。だからずっと一緒にいたい。慰謝料は払う。だから離婚だけは考え直して欲しい」
「本当に勝手だね、結局は賢也しか得しない話だよね?私のことを好きだとか言ってるけど、それならどうして不倫なんてしていたの」
「本当にごめん」
「もうこの話はいいわ、不毛だもの。離婚はしないということだと、浮気をされたのは私なのに賢也に有利なことだらけ」
「だから、慰謝料をはらう」
「慰謝料はいらない、その代わり私の提示する条件をのんでくれるのなら離婚は考えます」
離婚をしない場合の誓約書を賢也の目の前においた。
「慰謝料の200万円の支払い免除と離婚をしない代わりに、今後一切私に触れないこと」
「え?」
賢也の前にもう一枚の紙を広げる。
「診断書?」
「私の体調不良は妊娠とかじゃなくて、賢也のせい。PTSDなの。賢也に触られると吐き気がとまらなくなるのそれで消化器に言っても特に原因がわからず、心療内科でこの病気がわかったの。あなたが他の人を抱いたその手で触られることに猛烈に嫌悪感があるの、それで吐き気がするようになったの、だからこれは守ってもらいます」
下を向いて苦痛の表情をしていた賢也が「わかりました」と言葉を絞り出した。
「でも、セックスが好きな賢也はこまるでしょうから、恋愛など異性との付合いはお互い自由とします。それならいいでしょ?他の人と子供を作っても認知してもかまいません」
何も言えない賢也は拳をキツく握りしめながら
「了承します」と、ぼそっと答えた。
「では誓約書にサインをしてください。」