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赤 × 緑
地雷さん 🔙 推奨
昼のオフィス 。
俺は欠伸をしながら頼まれごとを次々とこなす緑の様子を眺めていた 。
資料の不備も 、 急ぎの対応も 、 緑に任せればすぐに整う 。
同僚や後輩 、 上司までもが口を揃えて言う 。
「 緑がいれば完璧だ 」 と 。
俺が忙しなく動く緑を見ていると 、 隣に座っている同期がコーヒーを片手に呟いた 。
「 ほんと緑ってなんでもできるよな ー …
頼れるし 、 優しいし … 家でも完璧なんだろうな 」
俺は緑から視線を逸らしながら適当に相槌を打つ 。
「 … さぁ 、 」
「 緑なら間違いないって 、
理想を集めたような人間じゃん 」
「 まぁ 、 そ ー だな 」
うっとりと緑に見蕩れる同期に見えないように俺は緩んだ口元を隠す 。
「 いいな ~ … 俺もあんな風になれたらなぁ 」
羨ましそうに呟く同期に適当に相槌を打ちつつも 、 俺の脳裏には昨夜の光景が浮かんでいた 。
照明を落としたリビングで 、 緑が床に膝をついている 。
その首には俺が付けた首輪がついている 。
その顔には昼の完璧な微笑みではなく 、 苦しそうな 、 けれどどこか嬉しそうな表情が浮かんでいる 。
「 … 今日 、 楽しそうに話してたの誰 ? 」
「 ん゛ … っ 、 … ただの顔見知りだよ … ? 」
「 ふ ー ん ? 」
首輪をぐ 、 と引っ張ると緑が少し咳込む 。
「 っ゛ ?! けほ っ゛ 、 ♡ 」
「 その顔ほんと可愛い 、 ♡ 」
苦しそうな緑の顎を指で掬う 。
「 … 今日は寝かせねぇから 」
にやりと顔に笑みを浮かべると 、 緑は驚いたように目を瞬かせた後 、 素直に頷く 。
「 っ゛ 、 はぃ … ♡ 」
あまりにも素直な緑に俺は思わず笑ってしまう 。
完璧な人ほど 、 こうして崩れる瞬間が愛おしい 。
「 … お ー い 、 赤 ? 」
同期の声で 、 俺はふと我に返る 。
「 ん … あぁ … ごめん 、 なんて ? 」
「 いや 、 緑って恋人とかいるのかなって … 」
「 … 知らね 」
再び緑に目を向けると 、 緑はまだ忙しなく動いていた 。
完璧で 、 清潔で 、 隙のない人 。
「 はぁ … 緑って完璧すぎて人間味ないよなぁ … 」
コーヒーを口にしながら呟く同期に俺は
「 そうだな 」
と笑う 。
____ あんなに完璧と言われている緑が 、 家では犬同等の扱いをされているだなんて誰が想像できようか 。
誰も知らない “ 緑 ” を見ることができるのは俺だけだ 。
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