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ビクッと肩が震えたのが翔馬にもわかったのだろう。
「ま、無理にとは言わないけど」
声のトーンが下がって、それがまた私をびくつかせる。なんとなく怒らせてるんじゃないかと思ってしまう。でも、どうしたらいいかわからない。
「あのさぁ…、いいんじゃない?これくらい。仕事にも家庭にも不満抱えてるんだから、どこかで解消しないと精神的にキツくない?」
「え?どういう…?」
「なんていうか、そっちがその気ならこっちだって!みたいな。旦那だって浮気してるんなら、ミハルもすればいいじゃん?それでおあいこだから、旦那さんにも腹が立たなくなると思うよ」
「でも…」
「俺さぁ、わかるんだよね?言葉だけのやりとりでもその相手が本心では何を求めているか?って。そうじゃないと俺みたいな仕事もできないからね」
___私が本心で求めていること?
「正直に答えて。ミハルってまだ女としての本当の悦びとやらを知らないんじゃないの?」
「!!」
驚く私とは対照的に、平然とした顔でタバコに火をつける翔馬。真昼間の、それも初対面の話題にしてはあまりにもエゲツないというか…。
「旦那が浮気してるようで寂しいとか、上司の気分次第で仕事がツライとか、そんなこと心が満たされてないのはもちろんだけど、カラダも満たされてないってことだよ」
「そ、そんなこと…」
翔馬が私を指先で手招きして、耳元で囁く。
「顔に書いてあるよ、私を抱いてめちゃくちゃにしてって」
「!!!」
不思議だった。
初対面の男にそんなことを言われているのに嫌悪感もなく、それどころか体のずっと奥の方が熱くなってくるのがわかった。それに沿うように顔がほてってくるのがわかる。
___どうしよう?私、なんで?
どう返事をしたらいいのかわからず、所在無げにカップをいじっていたら伝票を持って翔馬が立ち上がった。
「さぁ、行こうか。あんまりのんびりしていては、せっかくの時間がもったいない」
私を置いて歩き出す翔馬。
「え?行くって、どこへ?」
翔馬が目線で指したのは、ターミナルホテルの入り口だった。