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「これが証拠だね、舞花に言われて慌てて削除したんだよ。こんな絶妙なタイミングはないよ」
佐々木が鼻息荒く、スマホを見る。
「そうだね、私ですって言ってるようなものね。で、どうする?舞花ちゃん」
「友達やめる。なんであんなことしたのか知りたい気もするけど……。なんかもう関わりたくない」
このまま友達として付き合っていると、また何かされるかもしれないという、不安があるのだろう。
「その方がいい、何か言ってきたら俺が舞花を守るよ。だから安心して」
できるだけそばにいるからと、舞花を安心させようとしている佐々木。
「じゃ、できるだけ早く帰ってきてね」
「あぁ、わかってる」
ぽんぽんと舞花の頭を撫でている佐々木は、これからきっとその言葉通りに暮らしていくだろう。
「えっと、あれ?そういえばなんの話してたっけ?裏垢のことですっかり忘れちゃった」
舞花に言われて思い出した。
「あっ!雅史が酔っ払ってどこかで寝ちゃった話ね。もう、仕方ないんだから。こっちは大丈夫よ。それより生まれてくる赤ちゃんのために、佐々木さんと仲良くね」
「はい。わかりました。また生まれたら色々教えてくださいね」
「俺からもよろしくお願いします」
「任せて。ママとしては少し先輩だからね」
「パパとしての話は岡崎に訊くかな?」
「あー、あんまりアテにならないわよ、イクメンなんて自分で言う人は、実は何もできなかったりするんだから」
あははと笑い合う。
「あ、そろそろ行かないと、ね、隼人くん。杏奈さんごめんなさい、これからうちの家族とちょっとお出かけするんです。赤ちゃん用品を買いに」
「そう!それはたくさん買ってもらわないとね。あれ!雅史、まだトイレ?」
さすがに長すぎる、まさか倒れてたり?
急いでトイレのドアをコンコンとノックする。
「ね、大丈夫?お腹痛いの。病院行く?」
「あー、もう出るよ。大丈夫だよ」
「そう、ならいいけど。あ、佐々木さんたち、もう帰るって」
「あ、そうか。よろしく言っておいて」
雅史の声が、どことなくうれしそうな声に聞こえるのは気のせいか。
お邪魔しましたと佐々木夫婦の声がして、玄関のドアが閉まった。
私はそのままトイレの前に立って、雅史が出てくるのを待つ。
きっと、京香とLINEでもしているのだろう。
ガチャとドアが開いて、私に当たって止まった。
「あ、いたっ、なんだよ」
痛いのはこっちなのにと思う。
「随分長いトイレだったから、心配になったのよ。でも平気みたいね、顔色もいいし」
「あ、うん、出すもの出したらスッキリしたよ」
そういう顔とも少し違う、なんだかニヤけている。
_____やっぱり京香と?
「違うでしょ?誰かと連絡取ってたんでしょ?それ」
京香に連絡して、口裏を合わせてたんだと予想する。
「やっ、これはゲームしながらさ、ただトイレに座ってるのも退屈だから」
「はぁ?お腹痛いのに?わけわからない。もういいわ!そろそろ圭太も起きる頃だし。起きたら散歩にでも連れて行ってくれない?その間に晩ご飯の準備するから」
まだだ、まだ証拠はない。
_____証拠を見つけたら、私はどうしたいんだろう?
「圭太が起きたから、散歩行ってくるよ」
「おかーたん、行ってくる」
まだ少し眠そうな圭太だったが、お父さんと散歩に行けると聞いて、喜んで出て行った。
私は冷蔵庫からミンチや玉ねぎを出して、今日はミートボールを作る予定だ。
野菜スープを仕込み、ミートボールの材料をボウルに入れた時、スマホが鳴った。
遠藤からのメッセージだった。
《休日に失礼します。先週お渡しした案件ですが、納期を二日ほど早めていただくことは可能でしょうか?》
カレンダーを見て時間配分を考えてみた。
_____火曜日までならなんとかなる
母に圭太を預けることはできないから、連れて行くことになるけど。
〈大丈夫です。火曜日にはお届けします〉
《ありがとうございます。急がせてしまって申し訳ありません。お詫びにこの前話していた美味しいラーメンをご馳走しますね》
_____やった!
雅史の浮気のことを疑いながら、遠藤とのランチを喜んでしまう自分は、とんでもなくひどい女の気がしてしまうけれど。
_____仕事関係の人とお昼ご飯を食べるだけだし…って誰にも訊かれてないのに
誰に説明するでもなく、自分で言い訳を考えていることがおかしかった。