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ドラマの撮影は順調に進んでいく。雅が緊張してセリフにつまっても、大介は笑顔で声をかけた。
「大丈夫、大丈夫。一緒にやってこうぜ」
その言葉が、雅には何より嬉しかった。
次の場面は――二人のベッドシーン。かなり際どい内容だ。
大介は前貼りをつけ、上半身裸のままソファに腰を下ろす。
白い肌に、ダンスで鍛えられた体が一瞬のぞいたが、カメラが回る直前までスタッフがバスタオルを掛けた。
その隣で、雅も上半身裸でスタンバイする。
互いに視線を合わせた瞬間、微妙な空気が流れた。
「よろしく」
さすがの大介も、少し緊張しているようだった。
「はい……よろしくお願いします」
大介の姿に目のやり場を失い、雅は苦笑する。
「初めてなので、緊張します」
「俺もだよ」
そこへ監督がやってきて、演技の指示を出した。
「ナルミはスバルに甘える感じで。スバルは少しクールに、でも愛してる気持ちは残して」
二人はうなずき、監督が離れたあと、動きを確認し合う。
「腕をこう回すから、まっすぐ来て?」
「はい。このあと抱きしめてもいいですか?」
「うん、それがいいね」
段取りが決まったものの、なかなか撮影が始まらない。
「すみません、カメラトラブルです。少しお待ちください!」
「あちゃー、トラブルかぁ」
肩のタオルをかけ直す大介に、雅が声をかけた。
「風邪ひいちゃいますよ」
「これくらい、なんでもっ――」
言いかけた瞬間、雅がそっと身体を寄せた。
その体温が伝わり、大介は思わず息をのむ。
「ち、近いって……」
「恋人同士なんですから、我慢してください」
雅は笑顔で大介の腰に両腕を回す。
大介は顔が熱くなるのを自覚した。
「お前なぁ、からかうなよ」
「からかってないですよ?」
きょとんとした顔で見つめ返され、大介は苦笑する。
「はいはい、わかった」
「それ、絶対わかってない言い方ですよ」
そんなやり取りの最中、スタッフの声が響いた。
「スタートします!用意お願いします!」
「よし、気持ち切り替えていこう」
「はい、切り替えます」
大介の表情を見ただけで、雅の胸が高鳴った。
バスタオルを外し、ソファに横たわる大介。
雅は嬉しそうにその上へ覆いかぶさる。
「……なんだよ」
「え?」
「なんか、嬉しそうにしてるから」
「え、してます?」
自分の頬に手を当てて、はにかむ雅。
そして大介の耳元に顔を寄せ、囁いた。
「大介さんが、可愛くて仕方ないから」
その言葉に、大介の顔が一気に赤く染まる。
「っ……お前っ……!」
言い返そうとしたところで、スタッフの声がかかった。
「お二人とも、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。お願いします」
「了解、スタンバイOK!」
カメラが回り始めた。
――二人の関係も、今まさに始まったばかりだった。