それは本当に正だろうか。
とある明治時代の小さな集落に人生を楽しまない老け、老いた男が一人住んでいた。男は何時も疑問に思つて居た何故人は人に命令され、従いながら生きて行かねばならぬのかと。天皇とてたかが同じ人間なのです。何か有ればすぐ政府。とある男は人はこのままで良いのかと思つて居ました。学校でもそう。テストで出る点数と云う唯の数字だけで後の人生を決められる等。何もかもが気に食わなかつたのです。そんな下らない事を思いながら男は街を歩いて居ました。すると空から目の前に何か落ちてくるでは有りませんか。其れが気になり近づき見てみると、一冊の小説でした。短くも長くも無い誰が書いたのかも分からない小説本。興味本位で中身を読んでみると、余りに恐ろしヰ事が書かれてあつたのです。殺し方、死に方、遺体の解体等の余りに残酷な事が書かれた本でした。題名を見てみると、「死体処理」と云うものでした。男は怖くなり、その本を道に捨てたのです。すると、なんと云う事だろう、男自身の周りが黒くなりどんどん下に落ちて行くのです。小説と同じスピヰドで。すると、男は全然知らなヰ場所に居たのです。男は思わず腰を抜かして尻もちを着いてしまいました。周りには白装束を身に纏った老若男女が大勢居て、目の前には真つ赤な川が荒く音を立てながら流れていました。そう、男は死んだのです。すると、川の向こうで鬼と思われる者が偉く話し込んで居たのです。少しだけ聞き取れ、先程見た小説と同じような事を話してヰました 。そしてしばらくすると、上から先程の本が降昇機の様に降りてきたのです。男は驚き、開いた口が開いたままでした。するとそこへ何処からかは分からぬが、チャリン チャラン カラカラ チャリン。と鈴の音と共に、木車輪が回るの様な音が聞こえてきたのです。音が聞こえる方向を見てみると竈蓋に風呂敷、鈴とボォボォと僅かな音を立てている妖の様な物が男に向かつて歩いてきました。すると風呂敷の中から話しかけられたのです。「手前は私が怖かねェのか?」と一言云つて何処かへと消えて行きました。そして三途の川の岸辺で四十三年間自由気ままに居たところ、なんと四十三年ぶりにあの妖と再開したのです。男は酷く動揺し、開いた口が塞がりませんでした。すると、いきなり風呂敷を正面からカアテンの様に開けました。なんと風呂敷の中は生物が入つて居る訳では無く、真つ暗闇に一つだけ机がちょこんとあつただけでした。すると机の上に何処かで見た様な本があるのです。脳の片隅で薄らと覚えて居るあの本。そう、その本の題名は死体処理と云う物だつたのです。男は今以上に怯え、動揺と恐怖で体中が動かなくなつて居ました。男は恐る恐るその本を手に取り云いました。「之は昔私が見た物で御座ヰましょうか、、、昔の物にしては随分と新しい様に見えますが」すると風呂敷の妖は笑つたのです。そして男は聞きました。「やはりそうだ、この本の中身が何も書かれて居ない」と。風呂敷の妖が云いました。「それは自分で完成させる本だ。決して他の者が手を触れないようにすべし。」男はその後二十六年程でその本で小説を描ヰたのです。その題名は「落小説」そしてある程度風呂敷の妖とも、仲が良くなり、その後男は現世に戻され、平凡な暮らしをして居た。男は久しぶりの暗い空の星達に涙して居ました。朝日が昇り、明るくなり太陽が沈み、月が昇る。之が普通の人生なのだと男は気づいた。男は家へ帰り、一言云い残し、何故か急に自身の胸を牛刀で刺し、自殺した。その一言は「もう一度だけ、妖に会いに行きます。さようならそして有難う」と。男はやはり自身の人生への失望を持つておつた。男は云つた「人は、生き物と云うのは戯言を吐いてしか生きれない愚者なのです。そう皆同じような失望を持つて居るのです。」と。だから辛い時死んでも無駄と云う事を教えて居たのです。その後妖は見えない悲しげな面を見せながら暗い川の向こうへと鬼混みに紛れるように消えて行つてしまつた。そして最後にこう云つた。「次は誰にしようかねェ」妖は自らの気持ちで人を殺していた。
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