コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
狂聡/50×25
祭林組の顧問弁護士とかになった聡実くんと出世して若頭になった狂児が組を巻き込んでイチャイチャする話
ちょっとだけ裸の付き合いしてます。
誤字脱字は目を瞑ってください。
見つけ次第修正するつもりです。
𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃
飼愛殺
𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃
成田狂児には、溺愛する男がいる。
齢25にして祭林組の顧問弁護士を務める岡聡実。大きめのメガネを掛け、男にしては少し長めのまつ毛を携えた目を伏す姿は10年経った今もあの頃と変わってはいない。ただ変わっているのは、数年前に成長期を迎え伸びた身長と、あの時の学生服ではない、25の弁護士にしては上等すぎるスーツを身にまとい、かつて聡実が茹でた狂児の腕時計と同じ物を腕に着けている事くらいである。細身の体にフィットした深い藍色のスーツは、まだ少々あどけなさが残る顔に大人びた雰囲気と少しの色気を纏わせるのに十分に役立っている。
「ほんま、そのスーツめっちゃ似合ってるわ〜」
やっぱ俺センスええわ、と組長室のソファにどっかりと腰を下ろし聡実のことを観察している。2人が出会ってから約10年、狂児は何も変わっていない。顔も性格も右腕に彫られた”聡実”の2文字も。肌のハリ…は少し失われているかもしれないが、目立つようなシワはないように見える。大きく変わったことといえば役職と、あと聡実との関係ぐらいだろうか。
「狂児、今日は聡実先生は仕事で来てんのや。邪魔してんとちゃうぞ」
聡実が自分の目の前に座る強面を見れば、聡実センセイの方がゆっくりすべきやのにな?と気を遣われる。ひとまわりもふたまわりも違うヤクザの組長に気を遣われる若手弁護士がいてたまるかと思った。が、散々狂児を始めとする組の人達に甘やかされたこの10年を思い出して聡実は考えるのをやめた 。
組長の前で「聡実くんがここ来るの久しぶりですもん〜楽しんだってええですやん〜😭」と駄々をこねる恋人に、ここはもうコイツを外に出すしかないと思った聡実は立ち上がる。
「狂児さん」
「ん〜?」
「もうすぐ終わるから、お使い頼んでもええ?」
「お、ええよぉ」
ここにはヤクザの若頭をお使いに行かせる肝の座った弁護士が居る。岡聡実である。
「ちょっとお腹空いてん。コンビニかなんかでおにぎり買うてきてもろていい?」
「お、ええよ〜具は何がええのん?」
「デカイのな。ほなよろしく」
「…具は……?」
バタン、と半ば強引に狂児を外に出した聡実はドアを閉め、 元の椅子に座り直す。
「じゃあ、あとここだけ説明して終わりますんで」
「いつもありがとなぁ」
「いえ…仕事ですし」
「いや、狂児のことや」
ニカっと笑う組長に、 はて、と聡実は思う。
お世話になっているのはどちらかと言うと聡実の方だと思ったから。だって生活費は聡実が出したいと言った物以外は全部狂児が出しているし、聡実が身に纏うこの仕事着だって狂児が(勝手に)オーダーメイドで仕立てた物。今だってお使いに出したのは普通に小腹が空いたからでもあるが、おにぎり代はもちろん狂児持ちだし。
「そうですか?」
「せやで?聡実センセイは自分の事普通やと思てるでしょ?」
「まぁ…。でもどちらかと言えばヒモの部類ちゃいます?」
なんの疑いもなく思っていることを言えば、それ狂児の恋人が言うとおもろくて敵わんわ、とひとしきり爆笑されてしまった。
「そう言わんとき。あの狂児の手綱握れるのは聡実センセイしかおらへんで??」
誇れ、言うのも変やけどなーと強面が笑う。
「おつかれー😁」
「狂児さん」
ブーンと静かなエンジン音を響かせて黒塗りの高級車が目の前に止まる。狂児が運転席から少し身を乗り出して中から助手席のドアを開ける。
「おにぎりは?」
「狂児さんよりおにぎりなんか〜?そういうとこも可愛ええから好きやけど😘」
「あ、おかかとこんぶやん」
「無難なの買うてきたけど良かった?てか2個で足りるか?」
「うん、ありがとう」
もぐ、と聡実がおにぎりの頂点にかぶりつくのを愛おしそうに見届けた後、狂児がアクセルを踏んだ。
さすが高級車。静かである。ふとバックミラーを見れば、後ろの方で聡実を見送った舎弟さんたちが深々と頭を下げているのが見える。
「あの人ら、まだ頭下げてんで」
「そらそうやろ、そういう教育してんねんから」
「へー、大変やな」
「あんまり思てへんやろ〜」
少しは思っているので不正解である。
また今度遊びに行くことがあったら舎弟さんたちの話も聞いてみよう、と思った。というのも、 聡実には企んでいることがあるからである。狂児は若頭と言ってももう50の男。もうあの時の反射神経もお肌のハリもないのだから、いつ何があってもおかしくはない。聡実は我ながら恐ろしいとは思いながらも、やっぱり狂児の命と舎弟の命は天と地程の重さが違うと考えている。だから、聡実は探しているのだ。聡実に惚れ、聡実のために、死んでくれる人を。
別日、聡実は狂児の仕事終わり待ちで事務所におじゃましている。
「頼むから程々にしときよ〜」
「はい?」
「うちの若手誑かしてんの、知ってんねやで?」
「そんなつもりないんですけどね」
「何企んどるんかは聞かんけど…聡実センセは美人さんなんやから、うちの若いのなんてイチコロやねん」
「そうですか」
響いてへんなぁ、全くもって。祭林組幹部であり長らく狂児の成長を見守ってきた小林はそう思う。
狂児がカラオケ練習会に当時14歳の中学生を連れてきた時、「あ、こいつ誘拐で捕まんねや」と思った。そしたら例のお歌の先生や!と言うから「あ、こいつショタコンなんや」と思ったのもハッキリ覚えている。
ヤクザに囲まれ怯え、狂児の腕にしがみついていたはずなのに。目の前の子を見ているとつくづく子供の成長は速いと思わされる。そう、もうあれから10年も経ったのだ。
「タバコ吸うてええか?」
「あの…もう僕子供じゃないんですよ😠」
「子供扱いちゃうて、気遣いや気遣い!」
ぷん、という擬音が似合う可愛らしい顔で「気にせんと、どうぞ」と聡実は続けた。狂児が惚れ込むのも分かる。だからといって狂児のように手を出すなんてことはしないけどな、と小林は思う。
聡実センセがカラオケ大会に乗り込んで来て紅を歌ったあの日、狂児と付き合ったと言って恥ずかしそうに組に挨拶に来たあの日。全部覚えているのに、目の前にいるのに、この強かな子はあの時の聡実と地続きの人間では無いのだと思う。狂児はそれをわかっているのだろうか。
聡実のために車を買い、聡実のために家を買った狂児は、この子がここまで堕ちていることを知っているのだろうか?
不意に、プルルル、と小林のスマホから音がした。
珍しく、狂児からの電話だった。
「ちょっと出てくるわ、すまんな」
「狂児ですか?」
「おう、よう分かったな」
「なんとなくやけど」
ほんとに恐ろしい、そう小林は思った。
一見執着しているのは狂児だけのように思われるが、実の所は恋人の電話を当てるくらいこっちの男もなかなかに執着している。
「…出なくていいんですか?」
「あ、ちょっとぼーっとしてもうたわ」
ちょっと出てくるわ、と小林が退出する。
話し相手が居なくなり、暇になった聡実が頂き物のケーキをもぐもぐと頬張っているとお茶を持って舎弟の1人が部屋に入ってきた。
「お、お茶です」
「ありがとう」
聡実と同い年か少し下かと思われる男に、聡実は話しかける。
「なぁ、今狂児待ってて暇なんよ。 やからお話し相手なって欲しいねんけど、あかん?」
寂しそうな雰囲気を醸し出し聡実は言う。
狂児の連れ合いの誘いを断る勇気など舎弟にはなかった。しかし何されるか分からないし(聡実にも狂児にも)、それに何かあっても聡実を守り切れる自信が無い。さすがに事務所の中だし何も無いとは思うが、どうせなら道連れを引っ張ってくればよかった。
「次のカラオケ大会近いやろ」
「はい!」
「あ、お名前聞いてへんかったな」
「森田といいますっ!」
「元気やね」
ふふ、と口に手を当てて笑う聡実はとても美しかった。
聡実は、狂児と一生を連れ添うと決めた日から、ありとあらゆることを身につけた。
身だしなみ、仕草、言葉遣い、目線の移し方。そして自分の容姿もそこそこ整っていて利用できることも分かっている。狂児に相応しい連れ合いになるために全てを使うと決めた聡実には、惚れない者はいない。
「森田さんはカラオケの曲決めた?前回何歌ったん?」
「いえ、自分は初めての参加でまだ…」
「そらアカンわ、はよ決めて練習せんと。そや、僕も考えたるよ。僕が狂児の歌の先生してたの知っとる?」
「存じております!」
「他の人も決めてへん人おったら連れてきてもええよ」
道連れを増やしておいでと暗に言われ、森田はこれ幸いと同じ時期に部屋住みになった同期を引っ張りに行く。
「センセイ!自分はこれ歌おう思てるんですけど…」
「これはちょっと前田さんには音域合ってないんちゃうかな」
「ありがとうございます!」
狂児の連れ合いであり弁護士という立場から、ただの歌の先生になった聡実に、若手の組員が群がる。しかし、みてみて、自分も自分も、とさながら幼稚園のようだった雰囲気が壊れたのは、山本の発言からだった。
「センセイ、自分はこれを…」
「これ流行ってるやつやんな、低めで歌いやすいんちゃう?」
だって、山本さん立派なもん持ってはるやん?
そう言って聡実は、少しソファから腰を浮かせて向かいに座る山本の喉仏をするり、と撫でる。
「大っきいなぁ、ほんまええもん持ってるわ」
聡実の恍惚とした表情に、思わずゴクリと周りの組員と山本が固唾を飲む。
「あ、動いた…緊張してるん?」
ナニの話をしているのかって?もちろん喉仏の話である。
「聡実センセ、そんくらいにしたってや」
助かった!聡実のおもちゃになっていた若手の組員全員がそう思っただろう。まさに鶴の一声。小林が戻ってきた。時間にしては10分もないが、誑かされていた森田を始め、あと4、5人は既に立派な聡実のおもちゃだった。
「狂児、下に迎え来たみたいやで」
「ほんまですか?じゃあそろそろお暇しよかな」
「見送ってくるからそこら辺片しとけ」
「は、はい!」
小林は抜かりなく片付けの指示を出し、聡実のためにドアを開けた。
外に出るまでの道中、小林は聡実に問う。
「あんなことして、狂児が聞いたらブチ切れちゃうの?」
「大丈夫やと思いますよ?多分。」
「多分て」
「それに会話全部聞かれてるやろうし、遊んでたん?可愛いなぁ〜☺️くらいしか言われんと思います」
小林は「可愛いなぁ〜」の部分が余裕で狂児の声で脳内再生されてしまい、少し悲しくなった。聡実を前にした狂児は、あの頃の狂児とは違う生き物だと思う。
「会話全部聞かれてんの!?聡実センセイはそれ許してるん?」
「まぁ聞かれて困る会話はせんから、大丈夫です」
そう言い切った聡実に、小林は豪快に笑う。
「そーかそーか確かに、真っ当に生きとって聞かれて困る会話することはあんまりないかもなぁ」
ちょうど出口に差しかかり、 玄関を開けると黒塗りの高級車が止まっていた。狂児が助手席のドアの前に立ってタバコを吸い、暇つぶししているようだ。
「あ、ようやっと来たな」
「待った?ごめんな」
聡実の言葉に狂児は、ええヨン😁と笑って助手席のドアを開け、聡実はそれに乗り込む。狂児も小林に軽く挨拶をして運転席に座った。
「ほなな、聡実センセイ」
「うん、ケーキありがとうございました」
「聡実くんケーキ食べたん!?もぐもぐ聡実くん見たかったわぁ〜😭」
「そんなん見てどうすんねん仕事せえ」
「聡実くん辛辣ぅ」
「おい狂児 」
「なんですか?」
小林は愛する子が乗った助手席のドアを閉じたばかりである狂児に話しかける。
小林は長いこと裏の世界で生きてきた。危なっかしいことを平気でやる男も、想像もつかない突飛なことをしてのける男も、自分とは相容れない考えを持っている男でさえも、芯が通ったヤツならば、大方はおもろいなー!と言って受け入れる自信がある。
そんな小林が、面白いと思った、大事にしてきた弟分。それとその連れ合いの子。思い入れがあって当然なのだが、最近はまた少し2人の考えが読めないことが多くなった。
「お前、聡実センセのこと、あんな野放しにしといて大丈夫なんか?」
「あー、最近はエスカレートしてるけど、大丈夫ちゃいます?」
「で、何企んでんねん」
バレてましたかぁ😂、と可愛こぶる狂児に小林は呆れる。
「秘密ぅ〜」
「はぁキッショ」
「さっきアニキのこと呼びに行ったん、森田で合うてますよね」
「合ってるけど、なんや。ほかしてくるんか?」
さすがにそれは勘弁願いたい。そう思って小林は断るつもりでいた。
「ちゃいますよ〜さすがにヤクザやって万年人手不足やねんから、意味もなく殺しませんて 」
「せやったらなんや」
「俺がもろてもええですか?」
「……は?」
「ん、ぁ、♡」
グチュグチュと後ろを解しながら深いキスをされる。
「あ、まだ口の中甘いな」
「なんで…?」
「ケーキ食べたんやろ?」
「そうやった…」
この行為が始まってからそれどころじゃなくて忘れていた。
狂児は家に着くなり聡実の服を脱がせ、そのままベットへ連行した。何がスイッチになったのかは分からないけど、狂児がなんだか嬉しそうだったからいいやと聡実は思う。
「聡実くん、事務所で何してたんよ」
「ぜんぶ聞いとるくせに」
「ふふ、せやったわ」
盗聴しといて今更何を。すこし睨むと幸せそうな狂児の顔が見える。こいつは睨まれて幸せなんか?と思ったが、まぁこいつ僕のこと好きやしな、と聡実は結論づける。聡実の自己肯定感は立派に育っている。狂児のおかげというか、狂児のせいと言うか。
挿入して暫く、聡実の喉から母音しか出なくなった頃、せや、と 狂児が言った。
「なんで若いの誑かしとったん?」
「なんでって、ぁ、♡狂児の盾探さんと、」
「盾ぇー?」
「僕、狂児が死ぬん嫌やから…」
「狂児さんは聡実くん置いて簡単に死なへんよぉ」
狂児は、せやって息子もこんなに元気だし。とは言わないでおいた。みぞおち蹴られそうだったから。
「そして聡実くんのことは狂児さんが守るから、安心し?」
「それは知ってぅ、♡ちょ、一旦動くん止め! 」
「ハイ…(知ってんねや…可愛いな…)」
挿入れられたままじゃまともには話せやしない。それを知ってて会話を促すのは狂児の嫌なところだった。
「知ってるよ、狂児が僕のこと守ってくれることなんて。でも」
「でも?」
「でも、その狂児は誰が守るんよ。自分は自分で守るとか抜かしたら殴るで」
もちろん自分で守るとも!と答えようと思っていた狂児は普通に焦った。ここにはヤクザの若頭を焦らせる弁護士が居る。岡聡実である。
「ホンマは僕が守りたい。けど、それはさすがに無理があるやろ。ヤクザやし。狂児がある程度自分の身を守れることくらい知っとるけど、僕が居れへん代わりに狂児の前に人柱があった方がええと思うねん。」
なんて恐ろしい子。あんなに純粋無垢だった聡実を、こんな子に育てたのは誰か?いや、俺やん!聡実くんのお父さんお母さん、ほんますんません。
「え〜♡そんなに狂児さんのこと大好きなん〜??狂児さんも大好きやで〜♡♡」
「うん。知ってる」
「知ってるかぁ〜♡」
狂児に愛されてしまったこの可哀想な子は、狂児に愛されていることを当たり前だとして狂児に抱かれている。
なんて愚かで可愛いのだろう。
狂児はこの腕に刻まれ、その腕で 抱かれている 可愛そうで可愛い子を、もう二度と離すまいと改めて思った。
「あ、あとな、」
ひとしきり喋った後、また揺さぶられて喘いでいた聡実は、ある事を思い出して言う。
「狂児、聞いたことある?」
「ん〜?」
「最近、狂児のイロ…僕が、色んな人誑かしとるんは、狂児が老いぼれて不能になった時に聡実を満足させるための”棒”の候補を探しとんのやって」
「そらまたおもろい話やなぁ」
誰から聞いたん?と少し影が射す顔で狂児が言う。
「この前仕事行った時の相手に言われたんよ」
「へぇ」
「聡実くんはなんて返したん?うちの成田は生涯現役です〜って? 」
「いや?そんなこと言わんよ」
情事の余韻と熱が頬に残った顔でイタズラな笑みを浮かべて笑い、狂児の 期待を誘う聡実に愛おしさが爆発しそうになる。
「ほんならアンタもその候補に入れてもろたらどうですか?って言った」
狂児は心底後悔した。なぜその時その場に居なかったのか…!
言葉を発する聡実の顔はきっと、氷点下よりも低い、冷たい目をしていたんだろう。その目を向けられた相手は聡実の顔を見てきっと興奮していたはずだ。 可哀想だとも思うが、羨ましいとも思う。 狂児もその場所に居合わせて、その目に興奮を覚えたかった。キモイ?いや今更やな。
「聡実くん天才〜〜〜〜!♡」
「やっぱ狂犬の飼い主も狂っとるんやって言われたし。飼われとるの僕やのに」
飼うなど人間に使う言葉では無いが、そこに怒りを覚えず、自分の方が飼われているのだという。そんな聡実に、狂児は言いようのない感情を抱く。飼うも飼われるも狂児にとってはどうでもいいことだけど、聡実が飼いたいなら狂児は飼われるし、聡実が飼われたいのなら狂児が一生飼ってやる。
「聡実くんがおらへんかったら狂児さん暴れ散らかして早死にしとったかも知らんからなぁ」
「もう、そんなこと言わんといてよ」
「大丈夫やって、もう死なへんよ」
ならいいけど、と聡実がむくれる。可愛い。
「あ、そや聡実くん」
「ん?」
「今日聡実くんが遊んどった男の1人、借りてきたから今度から狂児さんが仕事忙しい時とかの送迎はそいつに頼ますからな」
「ふーん」
聡実は、さも「興味無いです」というふうに返事をする。聡実に関しては本当に興味がないのだろうと長い付き合いで分かるようになった。
「10年たってまうなぁ、こんなに大きくなって。」
「せやな、僕中学生やったし。」
あんなに小さくて、狂児が握れば潰れてしまいそうな子供だった聡実が、隣に立つまでに成長した。月日が経つのは早いものだ。狂児はつくづくそう思う。
「責任取ってな、最期まで」
「もちろん、聡実くんこそ。」
「ふふ、もう捨てれへんよ。名刺も狂児も。」
二度と悲しみの涙は流させないと誓った。
二度と離さないと誓った。
飼って飼われて、そして愛し、殺すまで。