テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
side記者
某月某日…うだるような暑さの中、俺はスクープを撮るために車の中で耐えていた。
”三流ゴシップ雑誌”
そう世間様から評価されている雑誌の記者である俺は
「期待しているぞ」
そう言って送り出した編集長の顔を思い出しながらマンションを見張る。
きっかけは編集部に来たタレコミである。
――大森元貴にはペットが居る――
ペットとは、動物ではなくなんと「人間」のらしい。
ご丁寧に住所付きで送られてきたそのタレコミは、ひと目でガセと判断されて、
普通なら相手にされないようなネタ。
だが、我が雑誌はタレコミがあればガセと言われても現地に赴くがモットー。
ガセであると判断されるまで粘るのだ。
「2週間だな…2週間張り込んで何も出てこなければ切り上げていいぞ」
リミットは2週間。
その2週間の間書かれた住所の部屋を見張るのだ。
造作も無い。
(きっとこれもガセだろうけど…)
今までの経験上、ガセネタを何本も掴まされてきた。
どうせこのネタもガセに決まってる。
そう思い、マンションを張り込み始めて5日間が経ったのだ。
「今日もな〜んにもありゃせんだろうな」
車の中から該当の部屋を見ながらひとりぐちる。
この5日間、大森元貴本人どころか人っ子一人出てこないし、入ってこない部屋。
かろうじて締め切られているカーテンが揺れるくらい。
最初の3日は、なにか見えるかも。と思い期待したが
揺れるカーテンの隙間から何も見えるわけもなく
ただ5日間、ぼ〜っとマンションを見つめているだけの時間を過ごしている。
(引きこもりの部屋なんじゃねーかな)
出てこない。
誰も訪問者もいない。
きっと引きこもりの部屋の住所を遊びで送ったのだろう。
そう思っていると、急に事態は展開を迎えた。
(…あれって)
マンションから出てきたのは背が小さ目で帽子を深くかぶった男性。
俺は、カメラを構えレンズをひねる。
ファインダーが顔を捉えると、男性は大森元、その人であることが確認できた。
「……マジかよ」
シャッターをいくつか切る。
まだ、ネタの真偽はわからないが住所は本物だ。
ここに来て、ネタの信ぴょう性が一気に高まる。
少しすると地下から車が出てくる。
おそらく仕事だろうか…大森元貴が車に乗っていることを確認し、またシャッターを切る。
「こりゃあ、ボスにちゃんと報告しなきゃな」
俺は、編集長にメッセージを送るのだった。
その日の夜、仕事帰りの大森元貴がマンションに戻ってきたのを確認する。
部屋は相変わらずカーテンがぴっちり閉まっており、中を伺うことはできない。
タバコをふかしながら部屋を見ていると、カーテン越しに人影が映っているのが見えた。
「お?人影…?」
人影は人ひとりと言うよりも2人重なっているように見える。
まるで下手な二人羽織。
そんな影がうねうねと動いているのだ。
「何やってんだ?アレ」
カメラを構えてファインダーを覗く。
眼前になった窓は相変わらずカーテン越しの人影しか映らない。
「マジで二人羽織やってんのかね」
その影が少しの間動いていると、俺とその部屋を隔てていたカーテンがシャッと開かれた。
「………スクープじゃねぇかよ。おい」
ファインダーに映ったのは普段の彼からは想像できない加虐的な表情をした大森元貴と、 首輪に繋がれた服を纏っていない男性。
おそらく後ろから突かれているのであろう。
必死に窓に手をついている姿。
…それは、ミセスのメンバーである若井滉斗、その人であった。
車内にシャッターを切る音が響く。
俺は無我夢中で行われている行為を切り取る。
全容は見えないが彼が動くたびに若井滉斗の顔がゆがみ、大森元貴がニヤリと笑う。
はっきりとは見えないが瞳の奥はきっと情欲にまみれた目をしているのだろう。
ひどく色気を感じるその行為は、俺自身も熱くしてしまうほど官能的で思わず喉がゴクリと鳴った。
――瞬間。
「目があった?」
大森元貴がこちらをみて”ニヤリ”と笑った気がした。
本当に一瞬の出来事。
今は若井滉斗の首筋に噛み付いている彼。
まるで、自分の所有物であることを刻み付けるかのように強く、激しく…。
鼓動がはやまる。
バレたのか?
俺は、思わず車のエンジンをかけて走らせる。
写真は充分撮れている。
あとは記事を書いて編集長に見せるだけ。
それでいいのだ。
俺は俺の仕事をするのみだ。
そう言い聞かせ、酷くうるさい鼓動を落ち着かせながら会社に急いで戻るのだった。
コメント
2件
初めから設定など癖にぶっ刺さりです

いとさんが新しいお話をあげてくれて歓喜!! このお話も先が読めない……そんなお話にドキドキワクワクです。