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学晴成立済。
学園長視点
「凛太郎くん!おはよう!」
「朝からご機嫌やな。晴明くん。」
神酒先生はその後付け足すようにおはようと挨拶をした。
満面の笑みの晴明くんと、
その笑みに釣られて顔を緩ませる神酒先生。
「飯綱くんも!おはよう!」
「ああ、おはよ。」
晴明くんが、私以外に振り撒くその笑顔が、
どうしても気に入らない。
憎たらしい。
不愉快だ。
私の事で頭をいっぱいにして欲しい。
何度考えたことか。
……やろうと思っても、
晴明くんが傷付く方法しか思い浮かばなかった。
……それでも、良いか。
晴明くんが私の方を向いてくれるのなら。
学長室。
「ねぇあっちゃーん。今金欠でさー」
さらっと部屋に入って来てる蘭丸は、手を合わせながらそう言った。
『お金はあげませんよ』
「ちぇー、ケチー」
何でだよ。
それでケチって理不尽にも過ぎる。
なんて言葉を一々言っていたら日が暮れるから、 心の中にしまった。
まあ、前みたいに、私が気付かないうちに盗んでるよりかはまだマシなのか?
いや、マシじゃないか。
『ほんと、暇人なんですか、貴方は』
「ひど。あいに来てあげてるんだけど?」
『帰りなさい』
そう言いながら、蘭丸の足をゲシッと軽く蹴る。
「痛っ。相変わらず乱暴。泣いちゃうよ?」
『学習しない貴方が悪い。』
そのやり取りを、少し開いていた扉の隙間から
晴明くんが覗いていた。
「でも、今日は優しいねー?」
『何がです?』
「いつもならもう一発入るのに」
「……人目があるので」
蘭丸にしか聞こえない小さな声で呟いた。
蘭丸はチラリと扉を横目で見て、
納得したようににやりと笑う。
「じゃ、また来るね」
『さっさと帰ってください』
聞こえてない振りをしたのか、何も言わなかった。
蘭丸は扉ではなく、窓から出て行った。
そして────
扉がゆっくりと開く。
顔を覗かせたのは、やはり晴明くんだった。
「学園長、お疲れさまです」
『晴明くん。どうかしました?』
「………よく、来ますね。隊長さん。」
『聞こえていたんですね。』
聞こえるように言っていたんだ。
聞こえていて当たり前。
晴明くんは後ろで手を組み、
目を逸らして言う。
「仲、いいんですか?」
ふふ、気になってる。
可愛い。
嫉妬してくれている。
晴明くんの頭を私でいっぱいにするつもりが、
私の頭が晴明くんでいっぱいになっている。
『さぁ、どうでしょう?』
自分の口が緩んでいないか心配になる。
晴明くんは少し黙り、何も無かったかのように、 本来の目的であろう仕事の話に戻った。
でも、表情はいつも通りではなかった。
夜。
「あっちゃんから呼び出しって珍しいね?」
学園から少し歩いた、灯りの少ない街道。
『不本意ですがね。』
『あなたに、やってもらいたい事があるのですよ。』
「………晴明くん絡み?」
『ええ。』
「やっぱり。」
既に、私の考えていることは筒抜けのようだ。
では、私が今考えていることも……
伝わっているはず。
蘭丸はため息をつき、
口を開いた。
「で、なに?」
「嫉妬させたい…とか?」
やはり、伝わっていたようだ。
『察しが良いですね。』
「性格わっる。」
どうとでも言えばいい。
晴明くんを完全に私のものにするためだ。
周りの声なんて気にしない。
その日から、
蘭丸は頻繁に現れた。
私はその度に蘭丸の隣へ歩み寄った。
以前よりも親しげに対応した。
たまに蘭丸が調子にのって余計なことを言うものだから、
口が滑って焼き鳥にするぞと脅したり、
蹴ったりとかはしてしまうが、
距離は近い。
わざと、蘭丸に笑顔で接する。
わざと、晴明くんの目に入る場所で会話する。
案の定だ。
晴明くんは、私と蘭丸が2人でいる所を見ると、 目を伏せたり。
逆に私が1人でいると、私のことを目で追ったり。
彼の頭の中を覗いてみたい。
一体今は、私がどれぐらいの比率を占めているのか。
「晴明くん、元気ないん?」
「え、なんで?」
「だって最近、笑わないやん」
代償として、
彼の笑顔を減らしてしまったことが
気掛かりだが。
夕方。
外がガヤガヤと帰る生徒の声で賑やかになる。
静かに学長室の扉が開いたと思ったら、
晴明くんが恐る恐る入ってきた。
「学園長」
声が、心なしか震えていた。
『どうしましたか?』
晴明くんは眉をひそめた。
「最近、隊長さんと一緒に居ますよね…」
あぁ、まただ。
また、私のことを考えてくれている。
温い湯船に浸かっているように心地よい。
無意識に体が震えた。
「……楽しいですか」
『………まぁ、どちらかと言ったら。 』
普段ならしり得ない回答をする。
どれもこれも晴明くんのため。
「……そうですか。」
少しの間、沈黙が流れた。
晴明くんは顔を伏せ、
小さな声で言った。
「僕、邪魔…なんですね」
『……は?』
「別れましょっか。」
鮮明に聞こえた一言。
顔を上げ、苦し紛れの笑顔を浮かべている。
驚きのあまり声が出なかった。
喉がヒクヒクと震えるだけ。
晴明くんは、泣きもせずただじっと私の顔を見る。
あぁ、これ。
『分かりました。』
『別れましょう。』
「…………え。」
あぁ、やはり。
晴明くんの顔が壊れた。
驚きと絶望の混じった表情。
今にも目から雫が溢れてきそうだ。
晴明くんのさっきの言葉は本心ではない。
試しているのだ。
私が、引き留めるかどうかを。
もちろん、引き留めたいし今すぐ抱きしめたい。
だが、
私の存在を貴方の脳により一層刻むには、
これが最適解でしょう?
『あなたが望むなら。』
『強要はしませんから。』
「…ぇ……あ……」
晴明くんの顔がみるみる青ざめていく。
「何で……そんな…あっさり………」
か細い声。
私は思わず薄い笑みを浮かべてしまった。
『大人ですから』
その言葉で晴明くんは、
崩れ落ちるように地面に膝を付けた。
晴明くんの目から大粒の涙が溢れ、
顔をどんどん濡らしていった。
ヒュッ…ヒュッ…
と息が浅く、早まっていた。
私はただ、
なんの言葉もかけずに
見下ろすだけだった。
「…やっぱり……なしです……」
泣きながら、ちいさな声で言った。
「別れない………嫌だ……っ…」
顔も上げずに、ただ泣きながら
言う。
「僕、嫌だったんです……」
「学園長が、他の人と楽しそうなの……」
「……置いていかれる気がして……」
がしっと私の脚を掴み、
縋るように言う。
「……別れたいなんて、嘘です」
「……捨てないでください……」
今だ。
間違いない。
今、晴明くんの頭には、私しかいない。
吐息が漏れる。
無意識に上がる口角を、
抑えることは出来なかった。
『……ふふ』
「……?」
晴明くんが、
涙でべしょべしょな顔を上げ私に視線を合わせる。
私はやっと足を曲げ、
晴明くんの顎に指をかける。
『貴方の嫉妬は実に愛らしい』
目を細める。
『ただその顔が見たかったのですよ。』
晴明くんの目元の涙を、
手でそっと拭いとってやる。
「全部……わざとなんですか……」
こくっと静かに頷き、
「…………ひどい」
『ええ、最低でしょう。』
にまっと笑う。
ポケットからハンカチを出し、
晴明くんの顔を丁寧に拭く。
力加減を間違って痛くなることが無いように。
晴明くんが不貞腐れている間も、
私はにやけが止まらなかった。
少しして、晴明くんが口を開いた。
「もう、しませんから。」
晴明くんの私の腕を掴む力が強くなる。
『何をです?』
「別れる、とか……」
『…そうですか』
されては困る。
私は晴明くんを抱き寄せた。
どうか、
晴明くんの頭の中には
私がずっと居ますように。
コメント
3件
え……なんですかこの神作は……… ちょっ…まじ……タヒぬ…_: (´ཀ`」∠) :_

破壊力やばいですね… 最高でした( ´ཫ`)
うっま、白米足りるかこれ、