テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
隊晴。
微学晴。
微たか晴。
微神酒晴。
隊長視点
朝。学園を用がないままブラブラ歩く。
まあー、あっちゃんの財布を覗くか。
だなんていかにも盗賊団らしい理由をつけて学長室へ向かおうとした。
その道中。
廊下の向こうで、晴明くんが誰かと話している。
相手は制服を着た男の子。
距離が近い。
顔を向け合って、立ち止まっている。
声は聞こえないけど、
表情だけで、だいたい分かる。
相談。
雑談。
たぶん、そんな感じ。
晴明くんは話を聞くとき、身を乗り出す。
相手の言葉をよく聞けるように。
相手の目をよく見れるように。
……近いな。
でも、なんて事ない。
ただの相談。雑談。
それだけ。
僕は壁にもたれて眺める。
別に。
朝から誰と話してようが、どうだっていい。
誰と一緒に居ようが、どうも思わない。
晴明くんが笑っている。
ただその表情を見つめるだけ。
晴明くんと目が合った。
会話はもう済んだのか、
晴明くんは笑顔でこっちに来た。
「隊長さん!何でここに?」
『んー?』
『あっちゃんの財布覗こうと思って。』
「相変わらずですね…」
晴明くんに呆れた顔をされてしまった。
昼。
僕はずるずるとあっちゃんにお金を請求していた。
だがまあ、折れてくれることはなく。
僕は学長室を出て、窓から外を覗いた。
晴明くんが、明くんと話している。
どちらも楽しそうに笑っている。
そして、晴明くんの手が、明くんの頭へ延びた。
明くんはそれに笑顔で喜んでいた。
もっと撫でてとでも言うように、明くんは晴明くんの胸に頭を埋めていた。
距離が近い。
触れている。
後ろで誰かが言う。
「……盗られちゃうのでは?」
声に驚き振り返ったら、
さっき会ったばっかのあっちゃん。
「あれ、抱きしめてるも同然ですよ。」
僕の顔色を伺うように覗き込んでくる。
言われて、もう一度見てみる。
確かに近い。
確かに触れてる。
でも、変じゃない。
僕の表情は特に崩れることはなかった。
晴明くんは、誰にでもそうだ。
話すときは、ちゃんと向く。
聞くときは、ちゃんと寄る。
ただそれだけ。
僕は外へ出て木陰で背伸びする。
嫉妬。
する理由が、見つからない。
夕方。
晴明くんと一緒に帰ろうと、職員室を訪れてみる。
今度は、酒呑童子くんと並んで書類を見ている。
肩が触れそうな距離。
二人で紙を覗き込んでいる。
「ここ、こうじゃない?」
「……あ、本当やね」
あっちゃんが2人の元へ寄る。
「仲がいいですね。」
「まぁ、特に気にならないようですけど。」
「学園長?なんて言いました?」
「ああ、いえ。こちらの話です。」
あっちゃんがちらっと視線をこちらへ向ける。
晴明くん達よりもいち早く僕の存在に気付いたようだ。
あっちゃんの言う通りだよ。
晴明くんと酒呑童子くんの仲が良くても、
僕は特に気にならないし気にしない。
距離も
声も
表情も。
全部、いつものこと。
晴明くんは、
誰とでも、こう。
特別じゃない。
特別に見えるだけだ。
夜。
僕と晴明くんの2人だけで帰るつもりが、
そこにあっちゃんも混じってしまった。
ちぇ~。2人きりで帰ろうと思ってたんだけどな。
あっちゃんはそれを阻止したかったらしい。
あっちゃんは僕と晴明くんの間。
どんだけ僕と晴明くんがくっつくのが嫌なのさ。
僕を除いた2人で話してる。
大分盛り上がってるみたいで、
2人とも笑ってる。
そんな2人の姿を眺めながら、
とある言葉を思い出す。
──盗られちゃうのでは?
盗られる。
その言葉を反復しながら、少しだけ考える。
盗られる。って。
どこへ。
誰に。
何を。
……よく分からないな。
「さようなら。」
「気を付けてくださいね。晴明くん」
「はい!」
あっちゃんと僕達の帰りの分かれ道。
あっちゃんは惜しそうに晴明くんを見つめた後、
僕達に背を向け自分の部屋へと向かった。
晴明くんは、あっちゃんを見送ると、
こっちを見る。
「隊長さん、帰りましょっか!」
僕に笑みを向ける。
僕の方へ、小走りで来る。
まるでそれが、
至極同然みたいに。
まるでそれが、
いつもの事のように。
その晴明くんの姿を見て、
僕が晴明くんのことを盗られる。
だなんて思わない理由が分かった。
………だってさ。
『晴明くんが、
僕以外のとこ行くわけないじゃん』
つい口に出てしまった。
晴明くんは少し困惑した後、
「そうですね?」
頭を傾げながら言った。
多分、意味あんま理解してないんだろうけど。
僕のこれは、
信頼とも、
安心とも違う。
ただ、そういうものだと、思っている。
誰かと話していても。
誰かに触れていても。
誰かと笑っていても。
行き先は、変わらない。
必ず最後は僕のもとに帰ってくる。
それだけの話。
『じゃ、帰ろっか!』
「はい!隊長さん!」