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どうしよう。今は困惑か緊張かよく分からない感情に苛まれている。普段、クラスのムードメーカーを担っている紗奈と目が合った。気まずい……。
「あ、今って自習時間だよね?」
突然の会話に頭が真っ白になる。あ、歩み寄ってくれたのかな。
「う、うん。彩乃先生が言ってたから間違いないよ。」
「そうだよねー!」
紗奈はノートに漢字を書き始めた。気にせず自分も漢字を書き進める。
だが、安心したのも束の間自習時間が静かになるわけないのです。先生がいない無法地帯。それは、動物園の檻が取り除かれた感覚だ。次第に、勉強出来る雰囲気ではなくなっていく教室。紗奈は教室から飛び出してしまった。静かに扉を閉めた紗奈を無意識に追いかけてしまった。友達でもなんでもないのに。
紗奈は自習室と書かれた看板が掲げられた教室に入っていった。自分の存在に気づき、手招きしてきた。教室に入ると先程の場所よりも静かで涼し気な空気が流れている。
「真面目で賢い皐月さんが、私に付いてくるんだねー」
「…自分、無意識で…ごめん、なさい。」
謝っても無駄だ。あぁ、大人しく教室で勉強していれば良かった。嫌われた、そうに違いない。
だが、返ってきた言葉は衝撃的なものだった。
「んーん、あのさ一緒に勉強しよ?」
「えっ……?」
そりゃあ、クラスで高嶺の花の存在である紗奈が自分を誘ってきたのだ。戸惑い、その場で固まっていた自分を引っ張り隣の椅子に座らせた。
「いいから、ほら?始めよ?」
積極的な紗奈に頭の中を白黒させる自分に再度驚く。この状態は、まるで友達のようだ。紗奈と自分なんかが友達?いくら考えても簡単な答えは出てこなくて、戸惑いが隠せないのだ。
どれくらい経ったのだろう。紗奈は赤ペンをもってノートに丸つけをしている。ようやく自習時間も佳境、自分も勉強用具を片付けていた。
「お疲れ様ー!皐月さん、一緒に勉強してくれてありがと~!!」
「あ、うん。こちらこそ」
すると、紗奈はスカートのポケットに隠してあったスマートフォンを取り出して
「この際、連絡先交換しよ?LINEがいいかな、インスタとかやってる?」
と、QRコードを表示した。
「ふぇ…?あ、LINEなら…あと、なんで自分と?」
思わず聞くと、
「うーんと……皐月さんと仲良くなりたいから、かな?」
と、返答した紗奈は頬を赤らめていく。
「自分も、紗奈さんと仲良くなりたいですっ!」
本心を伝えた。結局、連絡先も交換してその場を後にした。だが、紗奈は自習室の中に留まっている。もう一度、音を立てず入ると自分のスマートフォンに一通の着信が来た。
「「これから、よろしく!慧ちゃん!」」
こうして、自分と紗奈は学校問わず休日も遊ぶ仲になった。だが最近、紗奈は学校に登校出来ていない。寂しくて死んでしまいそう。休日の紗奈に全く変化は無い。早く元気な紗奈に会いたいと常日頃感じるのだ。