隣にいるのに、届かない

#11

side　wki

元貴と付き合ってから二週間ちょっと。

名前を呼んだり呼ばれたりでぎこちない日もあったけど、それでも少しずつ、距離が近くなってきてるのを感じてた。

でも＿もっと一緒にいたいって思ってしまう。

放課後や学校だけじゃなくて、休みの日も元貴と過ごしたい。

放課後、帰り道で俺は歩幅を合わせながら切り出した。

wki「なあ、元貴」

omr「……な、何」

下の名前で呼ぶと、やっぱりほんのり耳が赤くなる。

wki「今度の休み、空いてる？」

omr「え、うん……たぶん」

wki「じゃあさ、映画行かない？日曜。観たいのあるんだ」

言った瞬間、元貴は少し驚いた顔をして、足を止めた。

でも、ほんの数秒後、小さくうなずく。

omr「……いいよ」

たったそれだけの言葉なのに、胸が一気に軽くなった。

＿＿＿

日曜日。

待ち合わせ場所に着いた元貴は、いつもより少しラフな私服で、思わず見惚れた。

「おはよ」って言ったときの、照れた笑顔も反則だった。

映画館では、定番のポップコーンを買って並んで座った。

スクリーンの光が元貴の横顔を照らしてて、正直、映画の内容が半分くらい頭に入らなかった。

途中、笑うタイミングやちょっと驚くところが同じで、なんだかそれだけで嬉しかった。

隣に元貴がいて、同じ時間を共有してる。

それがたまらなく心地いい。

＿＿＿

夕方、駅に向かう帰り道。

人通りは多くなくて、少しひんやりした風が頬をかすめた。

歩きながら、ふと元貴の手に視線がいく。

あと少し、腕を伸ばせば届く距離。

頭の中で何度も「どうしよう」って言葉が繰り返される。

＿でも、今だ。

俺は何も言わずに、そっと元貴の手を握った。

一瞬だけ、元貴の足が止まりかけたのがわかった。

omr「……っ」

小さく息を呑む音。

でも、手を振り払われることはなかった。

むしろ、少しだけ指先が俺の方に寄ってくる。

横を見ると、元貴は前を向いたまま、耳まで赤くしていた。

その横顔が可愛すぎて、心臓が爆発しそうだった。

何も言葉は交わさないまま、駅まで手をつないで歩いた。

たったそれだけのことなのに、映画よりもずっと、今日一番のハイライトだった。

俺の手の中には、ちゃんと元貴の温もりがあった。

それが嬉しくて、帰り道の風がやけにやわらかく感じた。

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side wki

次の日の朝、元貴と教室に入った瞬間、なんとなく空気がざわついているのを感じた。

席に向かう途中、何人かがこっちを見てヒソヒソと話している。

mob1「昨日さ……駅で見たんだよ」

mob2「手、つないでたよな？」

mob3「え、マジ？ゲイじゃん」

聞こえないふりをして席につこうとしたけど、その声はやけに大きくなっていく。

しまいにはニヤニヤ顔で近づいてきた奴らが、俺と元貴を交互に見ながら言った。

mob「お前ら、マジで付き合ってんの？笑」

mob1「BLってやつ？笑」

その瞬間、隣の元貴はピタッと動きを止め、下を向いたまま固まった。

頬が少し赤くなってるけど、視線は床に落ちたまま。

俺の中で、何かが切れた。

wki「……そうだけど、それが何？」

一瞬、教室の空気が止まる。

声を張り上げそうだったけれど、それでも俺は冷静に続けた。

wki「付き合ってて何が悪いんだよ。好きなやつと一緒にいて、なんで文句言われなきゃなんねーんだよ」

ニヤついていたやつの顔色が変わる。

でも、もう止まらなかった。

wki「俺は元貴が好きだし、元貴も俺が好きだ。それでいいだろ。お前らにごちゃごちゃ言われる筋合いはねーから」

wki「…行くぞ、元貴」

ざわざわとまた周りが騒ぎ出すけど、俺は俯いたままの元貴の腕を軽く引いて、教室を出た。

背後からの視線も声も、全部無視して廊下を進む。

人気のない階段の踊り場まで来て、やっと手を離した。

元貴はまだ視線を下に落としたまま、少しだけ唇を噛んでいた。

wki「……嫌じゃなかったか？」

俺がそう聞くと、元貴は一瞬だけ驚いた顔をして、すぐに小さく首を振った。

omr「……嫌じゃない。むしろ……はっきり言ってくれて、嬉しかった」

そう言いながら、少しだけ顔を上げて笑った。

でもその笑顔はどこか不安そうで。

omr「でも……若井の友達、いなくなっちゃうんじゃないかって……」

その心配そうな声に、俺は思わず笑ってしまった。

wki「元貴。俺は、元貴と一緒にいられればそれでいいんだよ」

omr「……でも」

wki「でもじゃない。俺は元貴といるのが一番大事なんだ。他のやつがどう思おうが関係ない」

元貴は少し目を丸くして、それからゆっくりと頬を赤くした。

小さく「……ありがと」と呟いたその声が、やけに温かく胸に響いた。

俺はもう一度、元貴の手を取る。

拒まれることなく、その手が俺の指に絡んできた。

＿この手さえ離れなければ、それでいい。

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悪意のあるモブ共は始末しておきます👍