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――敵前進戦艦・情報解析室。
薄暗い室内に、
一隻の戦艦が映し出されていた。
秘匿戦艦《アマノハシダテ》。
その航路予測ラインが、
ゆっくりと更新されていく。
「進路変更を確認」
「連邦軍第二補給・修復基地方面……」
オペレーターは、
一瞬、言葉を止めた。
「……いえ、直行ではありません」
表示が切り替わる。
都市近郊。
学区表示。
「学校施設が集中する区域です」
室内が、
静まり返る。
⸻
作戦会議室。
円卓を囲む士官たち。
指揮官が、
低い声で言った。
「戦略的価値は、低い」
「だが、
白いガンダムの戦艦は
そのルートを選んだ」
誰かが、
資料を操作する。
「パイロットは、
正規兵ではありません」
「経歴、
年齢、
すべてが曖昧です」
「だが——」
別の士官が続ける。
「異常な性能を示している」
「ただし、
常時ではない」
「制限があると?」
「その可能性が高い」
解除条件も、
代償も。
誰も、知らない。
⸻
「捕虜について報告します」
口を開いたのは、
レイブンだった。
長い髪を束ねた男。
この小隊で、
二番目の立場にある。
「身元は確定」
「学生。
名前は、悠人」
「鑑定結果も一致しています」
指揮官は、
画面に表示された学生証を見た。
血痕が、
まだ残っている。
「……戦艦の寄航地点と、
一致するな」
「はい」
「偶然とは、
考えにくいでしょう」
沈黙。
白いガンダム。
学生。
寄り道をする戦艦。
点が、
静かにつながっていく。
⸻
「結論は一つだ」
指揮官が言う。
「我々は、
まだ核心を知らない」
「白い機体の“力”も」
「それを動かす人間の“理由”も」
「だからこそ——
焦るな」
⸻
独房区画。
悠人は、
天井を見つめていた。
ここが、
どこなのか。
なぜ、
自分が捕まっているのか。
分からない。
ただ——
白いガンダムの姿だけが、
何度も脳裏に浮かぶ。
(……あいつ……
今、どうしてるんだ……)
⸻
その頃。
秘匿戦艦《アマノハシダテ》。
艦は、
ゆっくりと高度を落としていた。
都市の灯りが、
窓の向こうに広がる。
展望デッキ。
朝倉恒一は、
息を止めるようにして、
地上を見つめていた。
見覚えのある街並み。
壊れた建物。
そして——
その先。
(……あそこだ)
家のある方向。
⸻
《短時間の寄航を行う》
《各員、
不要な外出は控えろ》
艦内放送が流れる。
だが——
恒一は、
もう聞いていなかった。
⸻
着艦。
ハッチが開く。
冷たい空気が、
流れ込む。
「……っ」
足が、
勝手に前へ出た。
走り出す。
呼び止める声は、
なかった。
振り返る余裕も、
ない。
(……無事でいてくれ)
(……頼むから……)
瓦礫の街を、
必死に駆ける。
白いガンダムのパイロットではなく。
兵士でもなく。
ただの少年として。
⸻
その背中を、
誰も止めなかった。